絶滅危惧妖精の二匹
妖精は美しく、愛らしい。
それがその世界の人々の共通認識である。
しかも希少であるため、幸運の象徴とも呼ばれていた。
そのため、物好きに高値で売りつけようとする者達が、妖精を捕まえてしまうことがある。
そのせいで、ただでさえ少なかった妖精が、どんどん数をへらしてしまった。
だから、その世界の妖精は絶滅してしまう一歩手間の状態だった。
その貴族の屋敷でも、そんな妖精が捕まえられてきたところだった。
それは、子供の誕生日プレゼントに親が与えたものだった。
「さぁ、これが妖精だよ。いつも図鑑でみていただろう?」
しかし、子供の様子は浮かばない。
ペットとして飼い始めた存在、その妖精と友達になった子供は、真実を知ってしまったからだ。
「絶滅しそうになってるのに、捕まえたりするのはかわいそうだ」
妖精は人の世界では長く生きられない。
自然で生きるのが良い事だった。
だから、子供は妖精をポケットに忍ばせて外に逃がす事にした。
夜の時間にこっそりでかけて、近くの森へ放つ。
自由になった妖精は嬉しがって、お礼のキスを頬にのこして去っていった。
少年は寂しかったが、これで良かったと思った。
しかし、妖精が逃げ出したと勘違いした親が、再び妖精を捕まえてきて子供に与えた。
今度は二匹の妖精だった。
子供は無力さを味わった。
世の中には、たった一人が頑張っても、どうにもならない事があるのだと。
それどころか中途半端な善意は、余計な被害を生み出しかねないのだと。




