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孤独の栽培人~栽培アプリで生活向上~  作者: 骨肉パワー
二章 ブラッド・バケーション

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第42話

「…なんだよ?ひょっとして今ので死んじまったのか?」


 テンションが上がっていく大助。だがそれとは裏腹に中々女はホテル内部から姿を現さない。


「勘弁してくれよ~…こんなんじゃ前菜にもならねぇよ?」


 退屈そうに十手をクルクルと回し始める大助。


「……」


(まあ今がチャンスではあるか)


 言葉とは裏腹に冷静かつ迅速に大助がスマートフォンを取り出す。そしてアプリの連絡先一覧からクロの名前をタップする。


「もしもしクロか~?」


「マスターか!?大丈夫なのか!?」


「ああ。問題無しだ。いいかクロ、今から作戦について説明をする。時間が無いから一方的に話すぞ。よく聞けよ」


 大助が要点だけを最短でクロに伝えていく。


「分かった。加減が上手くできずに死ぬかもしれないが構わないんだなマスター!?」


「ああ。死んだらそこまでの奴だったってだけだ。だが俺の予想ではおそらく……」


 そこまで話した段階でようやく待ち望んでいた好敵手の姿を大助が視認する。サングラスを外し、腕まくりをしたその姿から大助は確かな「覚悟」を感じ取っていた。


「…そんな簡単に死ぬような女じゃないって話だ。…切るぞクロ」


 大助が女から視線を外さずにクロとの通話を打ち切る。


(足が完治してるな。腹部の骨折も治ってるように見える。ポーションみたいな「何か」を使ったな)


「…正直舐めてたよ。このレベルの能力者がまだ存在していたなんてな」


「目は覚めたかい?」


「ああ。おかげ様でな。最後の仕事だからと手緩く終わらせようとした私が馬鹿だった……」


「いや、退職前に人殺しとか普通に頭イカレてんだろあんた」


「ふん。…まったく、さくっとターゲットを始末してバカンスを楽しもうとしたらこれだ。よりにもよってなんで最後にこんな化け物の相手をしなきゃならないんだ?」


「そりゃ運がなかったな」


 互いに不毛な会話が続く。この会話に意味などない。これは女にとって覚悟を決めるための儀式のようなものだ。


「伝わるかどうか分からないが…格闘ゲームとかで夜眠る前、どうしても一回だけ勝ちたいって時あるだろ?それなのに連続連敗で発狂寸前。今の私はそんな気持ちなんだ。___だからテメエだけは、絶対にブチ殺す」


「最高だよ、あんた」


 大助と女が同時にファイティングポーズを構える。


「___能力解放<風魔の大鎌>」


「…っ!?」


 濃密な赤色のエネルギーが女の掌で圧縮されていく。次第にそれは形を変えていった。半透明なワインレッドの大鎌。それが女の手に握られる。


「ふん。これでお前は終わりだ」


「……」


(能力で作った武器?それにしては妙な感じがするが……)


「行くぞ?」


 その言葉と同時に女の姿が掻き消える。


「ぬっ…!?」


 大助の予想を超えた速さの攻撃。豪速で迫る大鎌に合わせて大助は反射的に十手を振っていた。


「やはりカウンターで振ってきたなこの馬鹿が!!」


 強力な魔力を纏った十手。それがまるで豆腐のように切断され大助の右腕ごと刈り取る。


「なにっ…!?」


(防御不能の攻撃!?そりゃ反則だぜ……)


「……」


 何気なく視線を後方に向ける大助。斬撃は大助の腕だけでは収まらず熱海市街地の建物を次々と倒壊させていた。建物や地が文字通り真っ二つに割れる。紛うことなき大惨事だ。


「あ~あ~…俺をブチ殺すために一線を越えちまったなぁ?どんな気分だい?一般人をミンチに変えた感想は!?」


「ガタガタと抜かすな!この…サイコパス野郎があああああ!!」


「ぐっ!?」


 女の抉るような左フックが大助の腹部に直撃。その体を建物の下方向に吹き飛ばす。


(いいね。ほんの僅かな罪悪感を感じつつも全てを後回しにして目の前の問題に対処できる強靭な精神力。本当に素晴らしい)


 視界と体がぐるぐると回転し三半規管が異常を訴えて来る。それでも意識を手放すわけにはいかない。頭を振りかぶり思考を回転させる大助。


(ふう。楽し過ぎてイッちまうところだった。…もっともっと楽しまないと。こんな面白い奴はそうそう居ないぞ……)

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