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孤独の栽培人~栽培アプリで生活向上~  作者: 骨肉パワー
二章 ブラッド・バケーション

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39/50

第39話

 時刻は午後19:55分。温泉で疲れを癒し豪華な食事を楽しんだ大助とクロが夜のサンビーチをのんびりと歩く。


「おお~なんか水面がピカピカしてるな」


「そうだな~…」


 昼間この場所は南国のような雰囲気だが、夜になるとライトアップされ雰囲気が一変する。その海面は今や幻想的に光輝いていた。


(さてさて、あの女は…やはり来ていたか。気配を感じるな)


 大助の意識はほぼクロには向けられていなかった。周囲の雑音に耳を傾けつつ、約束されたその瞬間を待ち続ける。


(俺なら間違いなくこのタイミングで仕掛ける。あんたもきっとそうなんだろ?)


 思わぬ幸福の到来に胸を弾ませる大助。


(何で来る?銃か?それとも鈍器か?できれば素手だと嬉しいんだが)


「おおお!」


「…始まったな」


 ドン!という音と共に夜空に赤い花が咲き始める。今夜のメインイベント。真夏の花火大会がついに開幕したのだ。


「ピカピカしてて綺麗だな~♪」


「ああ。一瞬の輝きに全てを注ぎ込んだ結晶だ。儚くも美しい終わりの美学。実に素晴らしい」


「なあ?あんたはどう思うよ?」


「……」


 大助は振り返らず、背後を取っていた女の返答を楽し気に待つ。


「___‘結界形成‘<制約>対象を金本大助1人に限定。それ以外はどうでもいい」


 女の体から赤いエネルギーが放出される。そして一瞬の内に市街地全域に「金本大助」だけを対象にした「結界」が展開された。


「つれないね~。こういう場面でのウェットに富んだ返しを俺は期待していたんだが…」


「結界魔法っ!?マスターどうする!?挟撃して殺るのか!?」


 クロが臨戦態勢に入ろうと両拳を構える。だがそれを遮るように大助がその肩に軽く手を置いた。


「いや、おまえは何もしなくてもいい。そのままだクロ。その位置が良いんだ」


「…マスター?」


「じゃないと、盾にならないだろ?」


 普段の声とはまったく違う無機質で乾いた声。そのまま軽くクロの襟もとを掴み自身の頭部を庇うように大助は持ち上げた。そしてクロの首が微かな風音と共に切断される。


「あ…」


 コロコロと人形のように首だけが大助の足元まで転がってくる。その姿を無言で観察する大助。


(やっぱり初見殺しで強力な技を出してきたな。一撃でクロの首を落とせるレベルの「能力」それとあの動作と音。能力の系統は「風」ってところか。手を使う事が発動条件?…保留。情報不足だ。あともう一撃撃たせる必要がある)


「おお怖い怖い。優秀な「盾」があって助かったよ」


(さあ見せてくれ。この行動にあんたはどう反応する?)


 他者を物として扱う大助の態度。仲間の死に何の反応も見せないその極悪非道な姿に思わず女の口から言葉が漏れる。


「…お前…頭おかしいんじゃないか?」


「そりゃあんたにだけは言われたくねえな。こんな危険な「能力」を躊躇いなく人間にぶっ放せる狂った倫理観。100点満点をプレゼントしたいくらいだ」


「…ふざけるな。これはあくまで仕事だ。お前のような狂人と一緒にされたくはない」


「いや、それはそれで十分ヤバいと思うんだが」


(この女、ある程度の犠牲は許容するビジネスタイプの殺し屋だな。だが冷静さを装ってるが怒りの感情も顔から読み取れる。俺の言葉にもわざわざ返答してることから考えると律儀で義理堅い感じがするな。言葉での揺さぶりは有効。精神攻撃を主軸にするべきだな)


 大助の脳内プロファイリングが進んでいく。


「「制約」の内容は聞こえただろ?市街地全域に結界を貼った。逃げられるなんて思うなよ狂人」


「逃げる?とんでもない。……大歓迎だよ」


 両者の言葉の応戦が続く。両者共に動かないのではなく動けないのだ。初撃を外した女からすればこれ以上手の内をみせたくはない。そしてクロを1度だけ使える即席の盾として使った大助からすればもう少しこの女の情報が欲しい。互いに相手の一手を待つ状態だ。

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