第31話
「さてと、それじゃあ早速新しい草を確認してみるか」
大助がいつものように新種の草の確認を始める。栽培画面には2つの草が表示されていた。
・転移草
・自爆草
「……」
(いいね~…また面白くなりそうな草ばかりだな)
大助が2つの草の詳細の確認を始める。
・転移草
設置した2つの転移草の位置に瞬間移動が可能になる草。2つの転移草をリンク状態にした後にキーワードを設定する事で使用が可能。
※要注意事項
・この草は1日に4回だけ使用する事ができる。
・転移中に外的な要因で草が破損した場合、使用者は時空の闇の中に放り出される可能性がある。
「…おいおいおい」
(確かに事故が起きたら大変な事になりそうではあるが…その分だけのリターンは期待出来そうだな)
「こいつは最優先実験対象に指定しておくか。そんで次は…」
・自爆草(低級)
一定以上の衝撃が加わると爆発する草。低級だからと侮ると非常に危険。その威力はドラゴンの鱗すらも貫通する。その特性から加工する事も難しく、害草として扱われている。
「ふむ…」
(草と言うか爆弾じゃねえのかこれ?)
「ああ。当然栽培決定だな」
(この草はクロにでも栽培させるか。あいつなら爆発しても大丈夫だろ。データも取れるしな)
大助が早速アプリからお助けモンスター達への連絡先を開く。
「…ん?」
そこである違和感に大助は気が付いた。連絡先画面に電話のようなマークが表示されていたのだ。
(電話マーク?今まではメッセージしか送れなかったよな?レベルが上がってお助けモンスターと通話が可能になったという事か?……試してみるべきだな)
「…ふむ」
誰に電話を掛けるのかと大助が少しだけ悩む。
「まあ、無難に考えるならあいつだな」
大助が電話マークをタップ。すると数秒ほどでラビが応答した。
「も、もしも~し!その、マスター…ですか?」
(本当に通話出来たな。文字を打つ手間も省けるしこのまま要件を伝えておこう)
「ああ。今色々とアップデートされた機能を確認していてな。この通話機能もその1つだ」
「…なるほど。状況は把握しました」
「今後はそっちの状況に合わせてメッセージや通話を使い分けてくれると助かる。それと確認だがそっちの状況は今どうなってる?」
「はい。今私たちは装備を整えて壁外に向かっている最中です」
「分かった。調査結果については後でまとめて報告してくれ」
「了解しました」
「ああ。そんじゃ切るぞ~」
要件を伝え終えた大助が通話を終了した。
「…さてと」
(とりあえず今後の目標は定まった。転移草と自爆草の検証。いいね。面白くなってきた)
「マスター。調査結果の報告に来ました」
「…ん?」
翌日、のんびりと雑草入りの蕎麦を啜っていた大助の手が止まる。ラビがポンッ!という音と共に目の前に現れたからだ。
「直接来たのか?メールか通話でも俺は構わなかったんだが…」
「はい。その…色々と考えた結果、やっぱり直接伝えるのが一番良いと思いました。……迷惑でしたか?」
「……」
(報告は方便で何か雑談をしたいって感じだな)
大助がジッとラビの表情を観察する。そしていくつかの推論から大助はどう対応するべきかを決める。
「まさか。俺も丁度暇だったんだ。そのまま話し相手にでもなってくれると俺も助かる」
「…っ!?はい!お任せください!」
ラビが素早く大助の隣に座り込む。ほぼゼロ距離でピッタリとだ。
「……」
「…?マスター、どうしました?」
(ラビ~…おまえはパーソナルスペースって言葉を知らないのか?距離感近過ぎて怖ぇよ……)
当然そんな内心を吐露するような事を大助は口にはしない。それが大人の対応というものだからだ。




