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孤独の栽培人~栽培アプリで生活向上~  作者: 骨肉パワー
二章 ブラッド・バケーション

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第30話

 金本大助がお助けモンスター達と出会ってから早4か月。季節は8月を迎えていた。世間は夏真っ盛り。だがそんな事など気にせずに大助は広い「自宅」でのんびりと寛いでいた。


「ふむ。古風の一軒家も中々悪くは無いな」


 目の前に広がる広めのリビングを目の前にして大助はそう呟く。


(あいつらが好き勝手にこの世界に来るようになってからというもの、あのワンルームじゃあまりにも狭すぎたからなぁ…)


 大助は今後の事も見据え一軒家を購入していた。


「やっぱ郊外の中古物件を購入して正解だったな。周りに家もないから静かでいい」


 大助が購入した物件は評価額600万の一軒家だ。やや古めの家ではあるがそれでも複数人の人間が快適に住める程の広さはある。


「それにしても今時珍しいレベルの古風な庭だな…」


 自宅の庭先に出た大助から出た感想がそれだ。


「まあそこが気に入った理由の1つではある」


(小さい池に謎の小屋。灯篭に祠まである。前に住んでいたやつは何か儀式でもやってたのか?)


 大きめの庭にはあまりにも現代には不釣り合いな残置物が数多く残されていた。


(それとあの不動産業者の態度。何か匂うんだよな~…)


「……」


(まあ、それは今後の楽しみにしておこう)


 満足気に頷き窓を閉める大助。


「さてと、とりあえず日課の栽培作業を進めるとしよう」


 何者にも邪魔されず、ただひたすらにスマートフォンの画面をタップしつづける大助。そしてついに大助のスマートフォンに待望のメッセージが表示される。


<おめでとうございます。栽培レベルが上がりました>


「お…?なんか久しぶりな気がするな」


(必要な経験値がまた上がってきたって感じだな。まあそれはそれでやりがいがあるってもんだが)


<栽培可能なリストが追加されました>


「いいね~今回はどういうタイプの草が追加されるんだ?」


<フリーマーケットモードが解放されました>


「…?」


(何だ?フリーマーケットだ?ショップとは違うのか?)


「……」


<クラウドファンディング機能が解放されました>


「ああん?クラウドファンディングだぁ…?そんな事して俺に何のメリットが……」


(いや待て。そう判断するのは早計だ。何か特典のようなものがあるかもしれない)


<一定条件を満たしたため、世界レベルが2に上昇しました。詳細はチュートリアルを確認してください>


「……」


(何はともあれ情報が足りない。ここは素直にチュートリアルを聞くべきだな)


 画面右上で激しく自己主張するhelpボタンを大助はタップする。


「世界レベルが2になったみたいね。おめでとう。ここまで辿り着けた事は称賛に値するわ」


「過ぎた力は身を亡ぼす。……ぶっちゃけると、大体のプレイヤーは第二段階に到達する前に何かしらやらかして死んでしまうのよ」


「…んごほん!早速本題に入りましょうか。時間も残り少ないし手早く説明していくからそのつもりでね」


「まずはフリーマーケットモードについて。これはアプリを通じて個人間でアイテムの取引が出来る機能よ。場所も時間も時空も次元も超えて、文字通り全世界のアイテムが流通する凄い機能なのよ」


「便利な機能なんだけど1つだけ注意点を伝えておくわ。この機能に関して私達「運営側」はシステムの維持以外一切干渉しない。つまり何が起きても「自己責任」でお願いと言う事よ」


(完全に闇市じゃねえか…)


「次にクラウドファンディング機能について。これはアイデアはあるけど資金が無いという野心溢れるチャレンジャー達に資金提供ができる機能よ」


「イメージとしては資金を提供する代わりに試作品を受け取れるという感じね」


「計画が頓挫したり開発に失敗する可能性もあるわけだから、リターンで利益を得る投資みたいな考え方は止めた方がいいとだけ言っておくわ」


「最後に世界レベルについてね。…ごめんなさい。これに関してはどの言葉がネタバレになるのか判断出来ないの。だからあなたの「目」で直接確認して判断して」


「…はい。というわけで今回はここまで。……また会える事を楽しみしてるわよ」


 チュートリアルが終了し、スマートフォンの画面が元に戻った。


「ふむ…」


 早速更新された機能の確認を始める大助。説明の内容に相違なく、画面の中の世界は激変していた。


(おお…。世界が広くなってるな)


 アプリの中の世界は空も地面もある。だがある一定の場所まで進むと半透明の壁に阻まれて進めない。その事を大助はお助けモンスター達から聞いていた。


(画面に表示されていた半透明な壁が大きく広がっている。行動可能範囲が広がったという事は何か新しい発見がある可能性もある)


「ふむ。あいつらに頼んでその辺の調査をして貰うか」


 大助がお助けモンスター達にメッセージを送信する。


<壁の向こう側を調査してくれ>


「よし。こんな感じで良いだろう」


「……」


 ソファーへともたれかかっていた大助が思考の沼へと沈んでいく。


(結局、このアプリて何なんだろうな?)


 誰が何の目的で作ったのか。そして何故自身のスマートフォンに送信されてきたのか。その答えを大助は掴めずにいた。


「まあ、どうでもいいかそんな事は」


 その考えの全てを、大助は放棄する。


「今が楽しければそれでいい」


(答えが出ない問題に時間を使う必要はない)


 人生は常に選択肢の連続だ。だからこそ、大助は自身が一番楽しめると確信した道を突き進む。

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