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孤独の栽培人~栽培アプリで生活向上~  作者: 骨肉パワー
一章 グリーン・ライフ

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第28話

「追い詰めました!クラリア追撃してください!!」


「…抜けられた。…クロ、遠距離から弾幕貼って」


「うははは!絶対に逃がさないぞ~!!」


 少女達の楽しそうな声が部屋に反響する。


「ぬうううう…。中々やるじゃないかおまえたち……」


(こいつら単体じゃ俺に勝てないからって同盟を組みやがった。息がピッタリじゃねえか。いつの間にこんな仲良くなったんだぁ?)


 大型の液晶テレビの画面内。そこには3人の少女に包囲されボコボコにされている大助のキャラクターが表示されていた。大助がチョイスしたゲームは4人で同時に対戦する事ができるパーティーゲーム。操作もシンプルで大人から子供まで大人気。定番中の定番とも言うべき乱闘ゲームだ。


「見事だ。このゲームの本質を理解した事は褒めてやる。だがな、正攻法だけでは勝てないという事をこの俺が教えてやろう!」


 魔王のようなセリフを吐きながら大人げなく本気で少女達のキャラを排除し始める大助。最初の2戦こそ大人の接待プレイを続けていた大助だが、予想以上の学習能力を発揮するお助けモンスター相手に大助も次第にダーティーな戦術を解禁。反則ギリギリの技も使い少女達を追い詰めていく。


「ああ!?ズルイですよマスター!?見方を盾にするなんて!」


「…やられた。…後はクロだけ。…絶対無理」


「むむむ!後は私に任せて…あれ!?もう死んでるだが!?」


 ワイワイガヤガヤとした時間が流れていく。気が付けば時計の針は午後5時頃を指していた。


(よし。息抜きとしてはこんなんで良いだろう。頃合いだな)


 タイミングを計って大助はゲームを終了させた。


「自分の無力さを再認識しました…。私はまだまだダメダメです……」


「…今度は負けない」


「なあマスター。全力で壁をブン殴りたいんだけどいいだろうか?」


(その敗北感を噛み締めるといい。そういう経験が人を成長させるんだからな)


 とはいえグズる少女達をこのままにするわけにはいかない。大助は次の一手を考え始めた。


「……」


(なんで俺がこんな保育士みたいな事を考えなきゃいけないんだ?…やめだやめ。子供なんてなんか甘い物でも食わしとけばいいだろ)


「よし。最後にもう1つゲームと行こうか」


 大助が冷蔵庫に保管していたホールケーキをテーブルの上に乗せ、お助けモンスター達に小皿とフォークを手渡していく。


「普通の大人ならこう言うだろう。「皆平等に食べましょう」とな。だが俺は平等という言葉は好きじゃない。何故ならば人生は自らの力で切り開いていくものだからだ」


「奪わなければ奪われる。このホールケーキというやつはそんな世界の縮図だと思っていいだろう。…さあ聞かせてくれ。お前たちは何個食べたい?」


「「「……」」」


 お助けモンスター達が互いに視線で牽制を始める。


(あ~…これ放置したらまた俺の部屋がヤバい事になるな…)


 大助が即座に場の空気を換えるべく思考を回す。


「冗談だ。俺達人間…?には言語という素晴らしい機能が備わっている。そいつを有効活用しようじゃないか」


「「「…??」」」


 大助がテーブルの中央にホールケーキを設置する。


「今からおまえ達にいくつか質問をする。これが今日おまえ…いや、おまえ達を呼んだ理由だ。その答えが分かるやつは手を上げてくれ。そしたらそいつには先にケーキを切る権利を与える」


「というわけでまず1つ目だ。…この豆腐を知ってるやつは居るか?」


 大助が豆腐を次々と取り出しテーブルに置く。その瞬間にラビがビシッ!と手を上げた。


「はい!それは「魔豆腐」です。食べると「パワー」や「スピード」が上がります!」


「……えぇと…」


 ふんっ!とあまりにも堂々としたラビの返答に何も言えなくなる大助。


(俺とこのお助けモンスター達の持つ知識には致命的なズレがある。これに関してはゆっくりと擦り合わせをしていく必要があるな)


「ありがとう。よく分かったよラビ。という事でおまえには最初にケーキを切る権利を与えよう」


「やりました!」


「「……」」


 ラビがルンルンとした気持ちのままケーキを切り始める。その姿を獣のような表情で監視するクラリアとクロ。三者三様のその様子を大助は楽しそうに眺めていた。


「いいね~…」


 少女たちは目の前の「褒美」に夢中で気がつかない。自分たちの主人が、実験動物を観察する目をしていた事を。


(いつ以来だろうな?こういう興味深い「誰か」とケーキを食べたのは)


「……」


(面白いものは直ぐに壊れてしまう。だから大切に育てるんだ。植物も人間もそこは変わらない)


「マスター?どうしました?」


「……ん?」


 気が付けば、大助の目の前には心配そうな表情が浮かべたお助けモンスター達の姿があった。


「マスター。このケーキとっても美味しいですよ!」


「…うまうま」


「早く食べないと全部私が食べてしまうぞマスター!」


「……」


 その飾り気のない表情を向けられた大助が思わず少しだけ顔を逸らす。


(眩しいな。…本当に眩しい)


「いや、色々と今後の事を考えていてな…よし!残りは全部俺が貰うぞ!!」


 務めて明るい声を出し、大助がケーキパーティーへと加わる。


(…だから、もっともっと俺を楽しませてくれ。収穫するのが勿体ないと感じさせる程に。俺に見せてくれ。おまえ達の「魂」の輝きを)


 大切で貴重なオモチャ達を労わりながら、金本大助はそう切に願っていた。

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[一言] 流石うさぎさん、通年発情期!
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