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孤独の栽培人~栽培アプリで生活向上~  作者: 骨肉パワー
一章 グリーン・ライフ

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第25話

「よし、こんなところか」


 翌日、大助が自動車に次々と荷物を積んでいく。


(実験に必要なアイテムはほとんどアプリの中だ。荷物が少なくて助かるぜ)


 運転席に乗り込み、ドアを閉め、エンジンキーを回転させる。軽快なエンジン音を発生させた後、車が発進した。


「……」


 車内には極小音のラジオの音だけが響く。世間を震撼させるような凶悪事件の報道。謎の変死事件に関する速報。複数人による強盗事件に関する報道。それらを聞いても大助の表情は変わらない。


「……」


 退屈な情報を聞き流しつつ車を運転する大助。


「…ふむ」


 大助がチラリと腕時計を確認。既に2時間が経過していた。


「そろそろ休憩しておくか」


(長時間連続して運転するのは危険だ。人間の集中力はそう長くは続かない。適度に休憩し体を休める事が長距離ドライブの鉄則だ)


 パーキングエリアに車を駐車し、自動販売機へと向かう大助。


「…ふう」


 購入した缶コーヒーを飲みつつぼんやりと周囲を見回す大助。


「……ん?」


 ポケットに仕舞っていた大助のスマートフォンが振動する。


(この振動感覚はアプリの通知だな。メッセージか?)


 近くに設置されていた木製のベンチに腰を落としスマートフォンに目を落とす大助。そこには予想通りお助けモンスター達からのメッセージが届いていた。


<マスター。こんにちは。今日の天気は晴れです。予定通りに植物の栽培を開始します>


<…暇。構って欲しい>


<魚が食べたい!アイテムボックスに補充してくれマスター>


「ふむ…メッセージって結構個性が出るもんだよな」


 大助が今後の予定を脳内で変更しつつ車へと戻った。



「……ふむ。ここなら問題ないか」


 目的地の海岸に到着した大助がそう呟く。時刻は平日の昼間。人気もない。


(こういう場所なら万が一「問題」が発生しても対処しやすい。実験にはベストな場所だ)


 車で侵入できるギリギリの場所まで向かい、その場所に車を停車する。


「……」


 目の前には海、そして地面には砂が広がっていた。


「さてと…」


 大助がスマホを操作し、1体のお助けモンスターをタッチし「呼び出し」ボタンを表示させる。


(クロの件で偶発的に判明した事ではあるが、お助けモンスターは任意のタイミングで現実世界に呼び出すことが可能だ)


(呼び出すことに関しては特にコストはない。だが「クールタイム」が設定されている。1度呼び出すと最低でも5分間は帰還させることが出来ない)


 ポン!という音と共に、煙の中からクラリアが姿を現した。


「…マスター。久しぶり」


 トトトッと近づき、ごく自然に大助の首元に近づくクラリア。


「……はああああ。…いただきま~……」


「おう。久しぶりだな」


 それを見透かしていた大助が素手でクラリアの頭部を鷲掴みの状態で固定。ガチガチと噛み合わす音に眉をひそめつつグググとクラリアを後方へと押し返していく。


「…マスター。…私と1つになろう?」


「そういうセリフはもっとロマンチックな場面で聞きたかったなぁ~…」


 暴走するクラリアをやんわりと引き剝がす大助。


「おまえ、もしかしてあれか?好意を持った相手を丸ごと食べる事で身も心も全て自分の物になるとかヤバい事を考えてるんじゃないだろうな?」


「…マスター。…食欲とは愛だと思う」


「上手い事を言いやがって。100点満点と言いたいところだが、俺はそんな愛は御免だね」


 クラリアが落ち着いた事を確認し、じっとその様子を観察する大助。


「ん…?クラリア、お前また進化したのか?」


「…ん。…大正解」


 服装や雰囲気が以前と変わっている事に大助は気が付いていた。緑を基調とした学生服のような服装の上に白いケープを羽織っている。背中には兎のようなデザインをした灰色のリュックを背負っていた。


(近代的な服装に変化しているな。これなら普通に街を歩いていても怪しまれる事はない。それだけ人間への理解が進んでいるという事か)


 大助の持つスマートフォンには現在のクラリアの詳細な情報が表示されていた。


・食虫植物(低級)ラビットタイプ

・喰らうモノ


 未知の生命体の末裔。彼女たちはその星に生息する動植物に擬態し情報を収集する。この生物が人類にとっての希望になるか絶望になるかはパートナーに選んだ生物次第。


「……」


「…ん?」


(怖っ…こいつ植物どころか未知の生命体になってるじゃねえか。進化というか突然変異ってやつだろこれ)


「…ん。…マスター。…私は再び進化した。……褒めて欲しい」


「そ、そうだな。…偉いぞ?よく頑張ったなぁ~?」


「…んふふ」


(まあ、別にこの星がどうなっても俺に実害が及ばなければどうでもいいか)


「…ん。…マスターにはいつか最高の「世界」をプレゼントする。…だけど「浄化」活動にもう少し時間が必要。…今年中には何とかなると思う。…期待して待っていて欲しい」


「……」


 目の前で無邪気に喜ぶクラリアの姿を観察しながら、大助はそんな事を考えていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] うちの近くのサービスエリアにもうどんが有名なところあるから分かりみが深い 眷属達がどんどん強くなるの良いぞ~
[気になる点] パーキングエリアの蕎麦屋が前々から気になって いたって変じゃないですか?
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