第22話
「さあさあ!どうなるよ!!」
30万コインが投入され、10連ガチャが回り出す。金貨を口にくわえた兎が走り出す奇抜な演出の後、ポンッ!という音と共に赤色のカプセルが次々と排出される。最後に銀色のカプセルが排出された後、ガチャが終了した。
「うわ…なんか見るからにダメそうな感じだな……」
倉庫に追加された10個のカプセルを調べ始める大助。赤色のカプセルを開けてみると、その中には豆腐が入っていた。
「…はぁ?」
(え?豆腐…?意味わからねえんだけど……)
他の赤のカプセルを次々と開ける大助。だが中身は全て豆腐だった。
「1個3万の豆腐だと…?嬉しくて涙が出そうになるぜ」
「……ん?」
(なんか色が違うやつがあるな)
赤色の豆腐もあれば緑色の豆腐もある。気になった大助がスマートフォンに表示された豆腐の詳細を調べ始める。
・力の豆腐
食べると力が1上がる凄い豆腐。
「……」
(えっと、つまり何だ?この色取り取りな豆腐には摩訶不思議な力が宿ってるとかそういう事か?…後で要検証だな)
「ふむ……」
怪訝そうな表情を浮かべつつも大助のガチャを回す手は止まらない。
(別に破産しても構わない。どうせならSSRとやらを見てみたいからな)
3回。5回。10回。と10連ガチャを回し続ける大助。所持しているコインは残り1回の十連分を残しスッカラカンの状態だ。
「これがラストチャンスだ。さて、幸運の女神が振り向くかどうか…」
そして最後のコインが投入される。その瞬間、ガチャ画面が虹色に輝き出した。
「おお…」
9個の赤色のカプセルの排出後、最後に金色のカプセルが画面にデカデカと表示された。
「これは……」
詳細を確認した大助の口から驚きの声が上がる。
・ブラックドラゴン
絶大な力を持つ黒龍。プライドが非常に高く育成は困難を極める。マスターとしての技量が強く問われるモンスター。
「お助けモンスターってことか…?」
「……」
(まさかこんな方法で入手できるとはな)
画面には2つの選択肢が表示されていた。
・倉庫に収納
・呼び出す
「ふむ…」
大助が悩むことなく「呼び出し」ボタンをタップする。
「さあ、どうなるよ?」
ポンッという音と共に、大助の目の前に黒い和服を着た少女が現れた。
「ほう…」
赤く鋭い瞳、奇妙に捻じれた2つの角、濡羽色の長髪、腰元からは長い尻尾がユラユラと揺れている。
「ふん。人間如きがこの私を使役するつもりか?」
「…あん?」
大助がその少女の瞳をゆっくりと観察する。目は口ほどにものを言う。少女の目は反逆する気100%の危険な目をしていた。
「あ~…一応言っておくがな、日本語は理解出来てるよな?だったらまず話を…」
「試してやる。覚悟しろ人間!!」
「……」
轟音と共に少女が音速を超えて大助へと襲い掛かる。
「…いいだろう。そっちがその気なら、俺もそれ相応の対応をしてやる」
「なに!?…ふぎゃっ!?」
物理法則を無視した速度で繰り出された拳での攻撃、それよりも早く大助は動いていた。体を軽く傾け首を左側へと傾ける。その最小限の動きで大助は少女の攻撃を完全に躱していた。
「む…?な、なんだ…?視界が……」
「……」
大助が行った行動は回避だけではない。少女が襲い掛かるよりも早く背面に隠していた右の拳を少女の視覚外から左頬を狙い擦るように打ち付けていたのだ。少女は理解できていない。自身の脳に異常が起きているという事を。
(脳震盪ってのは器質的な損傷は残さないが、一過性の意識障害や記憶障害を即座に引き起こす。知っていなければ対処が難しい状態異常の1つだ)
「人間と同じ身体構造を模倣したのが運の尽きだったな」
「…ぐぅ…なんだ?は、吐き気がするぅうう!?この私がぁああ…?」
ふらふらと左右に揺れる少女を冷徹な瞳でジッと観察し続ける大助。
「ぐうう…!!…褒めてやる人間!!私にこの技を使わせるとはな!!」
「ごああああああああ……!!」
少女の口が大きく裂け巨大な牙が剥き出しになる。その状態のまま少女は口内でエネルギーのチャージを始めた。それを見た大助の表情が驚愕の表情へと変わる。
「…え?…おいおいおい。まさかお前部屋の中でブレスを……」
「___‘滅黒閃……‘」
「阿呆かお前は!?近所迷惑だろうが!!」
「ごあっ…!?」
驚異的な速度で少女へと近づいた大助が、コンパクトに折りたたんだ肘打ちで少女の首元を打ち抜き無理やり頭部を窓の方向へと向けさせる。その直後、黒い閃光が空中へと放たれた。




