第21話
翌日、昼間からのんびりとソファーで寛ぐ大助。
「……」
(退屈だ…)
定期的に足を組み替えてはアプリの通知をチェックし再びだらりとソファーで寛ぐ。そんな怠惰な生活に早くも大助は飽きを感じていた。
「…ふむ。金に余裕があっても使い道がないんだよな……」
むしゃむしゃと今日の昼飯であるたんぽぽと解毒草のバター醤油炒めを食べながら大助はそんな事を考えていた。
(食事は基本的にバランス良く取るのが一番だ。高額な物を食べれば正解というわけではない。主食、主菜、副菜をしっかりと摂取すること。その繰り返しが強靭な肉体を形成する)
「ふむ……」
何か用事はなかったかと大助は再び思考を回す。
(そうだな。後回しにしてた魔法系の草の検証とかするか?)
「よし。そうしよう。…とは言ってもなぁ……」
当たり前の話ではあるが、ドラゴン草や火炎草などの危険な草を自宅やその周辺でテストする事は不可能だ。
(海か山にでも行くか)
「実験は明日に決定。今直ぐにできる事は……」
大助が脳内で即座に実行可能な面白そうな用事をリストアップする。
「…そういえば追加されたガチャの機能とかもまだ試してないんだったな」
(ガチャに関しては今からやってみるのもアリだな)
「よし。やってみるか」
大助が早速アプリを起動。メニュー画面から「ガチャモード」を開いた。そしてその瞬間、強制的にチュートリアルと共に音声が再生された。
「…悪いことは言わない…引き返した方がいい…ここから先は地獄」
「ちょ、…ちょっとちょっとちょっと!?何ふざけた事言ってるんですか!?そんなこと言って「運命」が変わったりしたらどうするんですか※※※※!?」
「…でも、…これは酷い…SSRの確率が0.1%とか…私だったら絶対に回さない」
「簡単に最高レアのアイテムが出たりしたらビジネスとして成立しないじゃないですか。こういうのは出ないように設定するのが定石なんですよ!」
「…特定の人物にだけ排出確率を100%に設定するのはルール違……」
「違いますよ。気のせいじゃないですか?数値の設定ミスというのは往々にしてあることですよ?」
「…」
「……」
「……今度美味しい料理を奢ります。私が何を言いたいのかは分かりますよね?」
「…分かった」
ゆっくとドアが閉じるような音が響き、ようやくガチャの解説が始まる。
「んごほんっ!…今のは彼女なりのジョークなので気にしないでくだ…じゃなかった。気にしないでね」
「というわけで、ついにお待ちかねのガチャが解禁されたわ。はいパチパチパチ!」
「時間も限られてるし手短に説明するわ。ガチャは1回3万コイン。10回連続で30万コインという設定よ」
「ふふふ。金額変わらねぇのに連続で回す意味あるのかよ?って思ったでしょ?安心しなさい。そこは当然配慮してあるわ」
「10回連続30万コインで引けば、SR以上の「何か」が確定で排出されるように設定したわ。…ぶっちゃけた話、こういう特典でも付けないとまとまった金額は搾り取れないのよねぇ…。最近だと単発引きは効率が悪いなんて話まで出回って……」
「…んごほんっ!ごめんなさい。悪い点よりも良い点を紹介するべきよね」
「ともかく、このガチャに外れアイテムなんてものは存在しないわ。あなたの冒険に役立つアイテムが必ず出るようになってる。上手く使いこなしてみせなさい。というわけで今回はここまで。…また会える事を楽しみにしているわよ」
チュートリアル音声が終わり、画面に豪華な外見をしたガチャが表示された。
「……ふむ」
(1回引くだけで3万って考えると結構ヤベエな…)
予想外の強気な金額設定に大助は悩む。
ラビやクラリアがせっせと働き、大助自身も定期的に植物を栽培しコインに換金している。それでも3万コインという金額は大きい。簡単にほいほいと出せるような金額ではないのだ。
「リアルマネーが使えれば話はもっと簡単になるんだけどな…」
そう愚痴を溢しつつも大助の指はノータイムで10連ボタンへと伸びていた。
(こんな面白そうなイベント、スルーできるわけねえだろ?)
「試してみようじゃないか。俺の「運」ってやつをよ……」




