第17話
<新しい仕事仲間をそっちの世界に送ったから教育を頼む>
「よし。これでOKだ」
(後は任せたぞラビ。頭のネジがぶっ飛んだ奴のコントロールは容易な事じゃないが…お前なら出来ると俺は信じているぞ…)
面倒な案件を全て部下に押し付ける。ブラック企業も真っ青な極悪非道な行為。だがこれも必要な経験だろうと大助が1人納得していると、スマートフォンの画面に突然見慣れないメッセージが表示された。
「…ん?」
<お助けモンスター同士の決闘が要請されました。許可しますか?>
「…あっちゃ~……まあこうなるよな」
アプリの画面上ではラビとクラリアが一触即発の状態に突入していた。ラビが剣を抜きクラリアに突きつけている。
(ラビ~…そりゃダメだ。刃物は脅しや交渉の道具じゃない。それを抜くって事はつまり、「これからあなたをブチ殺しますよ~♡」と言っているようなものだ)
それを見たクラリアの体が人型からおぞましい「何か」へと変化を始める。その段階で大助は決闘許可のボタンをタップしアプリを落とす。
「いいねいいね~…ま、どちらかが死んでもそのときはそのときだ」
大助にとって重要なのは1つだけ。それが面白いかどうかだけだ。
「さてさて、どうなることやら……」
大助はスマートフォンの画面を静かに落とした。
翌日。仕事終わりの大助が自宅へと帰宅する。
「…ふむ」
(なんか最近、体の状態が異常に良いんだよな~常に最高の状態というか何と言うか。…逆に怖くなってきたぜ」
「エネルギーが有り余ってる感じだ。これが「魔力」ってやつの影響なのかもしれんな」
「……」
大助がその場でファイティングポーズを構える。
「…ふっ!…ふっ!!」
ステップと共に軽くジャブを放つ。ジャブ。ジャブ。ストレート。その全てに意識して「力」を込める。すると、大助の拳全体に青色のオーラのようなものがパンチンググローブのように纏わり始めた。
(明らかに普通ではない現象。まあ、それを考えたら今更だろ?って話ではあるが)
「…ふっ!…ふっ!…ふっ!!……うっし。まあこんなところだろう」
一通りの型の練習の後、体のストレッチ。食事へと大助は移行する。
(今日の昼飯はラーメンと決めてたんだ。例え魔力が使えるようになったとしてもこれだけは絶対に譲れない)
冷蔵庫からこの日の為に購入しておいた冷凍ラーメン。それとラルメン王国の雑草を取り出す。
「この雑草は苦いんだが、意外とこの苦さがラーメンに合うんだよなぁ……」
カチコチに固まった麺と具を電子レンジにぶち込み、温める。その間にフライパンを加熱。手早くバターと醤油を使いラルメン王国の雑草を炒める。
「…ふふ。完成だ。名付けるならそう!「雑草のバター炒め」ってとこかなぁ!?……なんか自分で言ってて悲しくなってきた」
テーブルの上に完成したラーメンと雑草バター炒めを置く大助。
「それと、飲み物にはこれだ」
ニクク王国の雑草から抽出したお茶をグラスに注ぎ始める大助。
「このお茶も苦い。だがそれが良い」
「…よし。完成だ」
目の前の珍妙な料理を前に大助が無言で手を合わせる。
「いただきます」
ズルズルと麺を啜り、適度なタイミングで雑草バター炒めを食べ合わせる。
「やっぱ半生タイプの麺は美味いなぁ~…今度は雑草餃子でも作ってみるか?」
そのままモグモグと料理を食べていると、大助のスマートフォンに通知が届いた。




