Sorcery
次の日。
「プロジェクトは一時中断になった。アクシデントが多すぎたからな。上からの命令だ。」
俺たちは親会社に集められて、緊急会議を行うことになった。
・・・一ノ瀬以外。
ちなみに、神崎は普通に会議に来ていたので、昨日居なかったのは気のせいだったらしい。
「そりゃそうでしょ。こんな状況で仕事とかやってる場合じゃない、こっちは死にかけてんの。」
そう言ったのは早瀬。あいつ半泣きだったんだよな。言わないけど。
「というか、おかしくないですか?二回もテロ起こされるなんて!何か事情があるんじゃないですか?知っていることがあるなら教えてください!」
黒沼が声を荒げる。
「・・・。」
ノアは岩谷さんをじっと見つめている。ノアも何か思う所があるのだろうか。
「ちょっといいか。それよりも、一ノ瀬だ。一ノ瀬はどうなったんです?岩谷さん。」
俺は問いただす。
「・・・一ノ瀬は・・・今も仮想空間に意識がある。こっちにあるサーバーから確認できた。」
意識がある・・・ということはまだ生きているということだ。
そのことにひとまず安堵する。
「既に管理者権限は凍結してあるから、あっちからアクセスして一ノ瀬を起こすことはできない。」
「ちょ、ちょっと待ってください!結局、殺されたら仮想も何もないじゃないですか!」
黒沼が再び声を荒げる。
「それは違うよ、黒沼君。」
声を上げたのは神崎だった。
「私たちが使ってたマシンには、仮想世界に居る間は特別なプロテクトが掛かって、外部からの衝撃を完全にシャットダウンするの。さらに、それはマシンとは別になってるからマシンを壊すこともできない。」
・・・そんなこと出来るのか?
「・・・神崎、流石に隠し通すのは無理だ。話すしかない。」
「・・・はぁー・・・わかったわよ・・・そうね、簡単に少し説明しようかしら。」
俺は状況がつかめないまま、話が進む。
「皆は、魔法って見たことある?あれ、実在するのよ・・・厳密には、異世界で。」
全く理解できなかったがもう少し話を聞こう。
「私は異世界から来た・・・正しく言うと転生してきたの。魔力を持ってね。私、異世界では追われる身で、そのせいでこっちでも追われる羽目になってるの。あいつら・・・『ミューラ』って言うんだけど。異世界まで私を追ってきてるわけ。だから、従来の世界とは仕組みが異なる仮想世界を作ってそこに避難するつもりだったのよ。そのために、この会社は全面協力してくれてて、あいつらは私に仮想空間に逃げ込まれないようにしたいってこと。」
???
「ん・・・理解。つまり、有珠は・・・異世界の、人間で・・・追われてる。だから・・・逃げる為に・・・仮想空間、を・・・作った。」
「そんなすんなり納得できる話だったかな!?」
ノアは理解できたようだが、早瀬も理解できていないらしい。俺もわからん。
「えっと・・・?その話が一ノ瀬の安全にどう繋がるんです?」
黒沼もよくわかっていないらしく、聞き返している。俺もわからん。
「あのマシンには魔法によるプロテクトが掛かってて、人を殺すような衝撃は勿論、怪我一つしないシェルターみたいになってるの。ただ・・・このまま放置していて良いわけじゃなくてね?餓死しちゃうから。すぐに救出しないといけないの。」
「どうやって?敵陣に乗り込むとでも?」
俺は疑問を呈す。
「魔法だ。異世界に行けるぐらいだ。転移の魔法を使えば、救出できるかもしれない。」
そう言ったのは、岩谷さんだった。




