少女闘争 その3 7:後始末とやりたかったこと
路地裏でのやり取りの後、康平と悠は遅くまでやっている喫茶店にいた。
「残念だったわね。お兄さん。」
「いえ、なんとなくわかってましたから。」
康平は悲しげにつぶやく。
「半ば、それを確かめるために探してたようなものです。」
悠はぬるくなったコーヒーを一口のみ、思案した。
「殺して欲しかった?あいつ。」
その言葉に康平はしばし黙考すると、
「わかりません。許せませんけど、殺すかどうか、といわれると。それに、そんなことしたら、彼らの組織に報復されるかもですし。なんか相手の親の事とか考えちゃって。その、被害は自分だけじゃない、みたいな。」
「ああ、それなら大丈夫よ。」
「え?」
悠は指を上に向けると言った。
「追跡型の呪いを埋め込んでおいたから。」
「呪い?飯野さんって、魔術師なんですか?」
魔術師とは、人間の中でも特殊な技が使える部類のものたちだ。
血によって受け継がれ、かつては世界で隠れ住んでいた。
しかし、ある時点を境に表に出てきた。
彼らは世界の理を理論、体系化し、術によって操る。
そして、操るためのコードを『呪文』として、使役する。
しかし、
「違うわ。私が使役するのは、そうね、魔法、よ。」
「魔法使い。彼女もまた、生き延びたね。」
シンは薄暗い部屋で呟いた。
「しかし、彼らの組織、100人以上に呪いをかけ、殺すのではなく、記憶操作をやってのけるなんて、聞いたことがない。組織としての記憶のみ除去し、別の辻褄合わせをやってのけ、事実上無かったことにするなんて。そうして組織は壊滅、めでたしめでたし、か。」
彼の見るディスプレイには、飯野悠のプロフィールが映っている。
そこに一言、「経過観察」と付け足す。
「さて、最後の審判は、彼女をどう裁くかね。」
そう、薄く笑った。