表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女闘争  作者: からし
17/19

少女闘争 その5 列日の破戒者 怪物達の余興

「超人、いや怪物ね。」

「やめてよ、なんか可愛くない・・・」

悠の悪態に紗季は項垂れる。

兵隊たちの防衛を突破し、無人となった戦場を二人は歩む。

そうして辿り着いたのは、テレビや映画で見たことがあるような基地であった。

「っ!」

不意に紗季がよろめく。

「!」

悠の体の周辺が球状に光った。

遅れて銃声が耳に入る。

顔を上げた紗季は右斜め前方を見やる。

「狙撃ってやつかしら。」

悠は呆れたようにつぶやく。

どうやら紗季は頭部に銃弾を受け、悠は常時展開していた防御魔術が銃弾を弾いたようだった。(ただ、紗季はまったくの無傷であったが。)

「面倒ね。」

そうして右手を向けた。

「牽制のために、ちょっと派手にいくわね。」

「え、牽制なんてできたの?悠ちゃん」

「はっ倒すわよ、失礼ね。」

悠の周辺が淡く光る。

ついで、腕の周りに魔法陣が幾重にも展開されていく。

「光よ、大気よ、震えよ、讃えよ、この力に。」

「す、すごい、なんかわかんないけどすごい」

紗季が目を輝かせる。

「見せかけのやつよ。光や音を展開する魔術を編み込んでるの。無い方がコスト無いんだけどね。何回も打つより、」

少女の前に直径1メートル余りの大きな光の球が出現する。

「一回の抑止力ある一撃よ。」

その光球が辺りを昼間のように照らす。

熱量の塊は、一瞬の間を置いて悠の視線の先に伸び、駆けていく。

着弾した一撃は、轟音と閃光を撒き散らしながら、攻撃の元となった場所を徹底的に破壊したのだった。

火の手によって照らしだされた悠は、放った一撃とは対照的につまらなさそうな表情をしていた。

「どうしたの?悠ちゃん」

紗季が気になって訪ねる。

「紗季はさ、疑問に思ったことない?私たちの、この行動の意味を。」

軽薄な金髪男によって告げられた、今回のこの依頼。

悠には疑問が残ることがあった。

「悪いこと企んでいる人たちを、やっつけるんでしょ?」

相変わらず紗季はシンプルにしか考えていないらしい。

「あんたさ、世の中は正しいと、間違っているの二つだけじゃないの。それが斑に混ざって構成されている。だからある側面から見た物事は、別の視点から見ると違った面がある。」

「悠ちゃんて、難しく考えるんだね・・・。けど、なんというか、世界って自分の主観だから、別の視点なんてなくないかなー?」

むずかしい、と頭を抱えるそぶりを見せる紗季。

だが悠は少し疑問を感じている。

自分達の力が突出したものであることは、おそらく違いない。

しかしそれゆえに、それによって世界は塗りつぶされてしまう。

一方の視点に。

「決めたはずなのにな。わかったはずなんだけど。」

そう言った直後、またも悠の周辺が光る。

狙撃だ。

「まったく。仕方ないわね。」

悠は魔法を構成していく。

術によって、整理された摂理ではなく、乱暴な奔流。

それを流し込み、副次的な事象として彼女の周辺を淡い光で照らす。

「私、そっちの方が好きだな。」

紗季は半ばうっとりとした笑顔で言う。

それに対して悠は、視線を射線の向こう側へ向ける。

先ほどのような魔法陣も、精錬された呪文も、大いなる空気もなく。

ただただ力が錬成されていく。

最高に嗜虐的な笑みを浮かべ、一言。

彼女はトリガーとなる言葉を。

「▪️」

ただ、発した。


司令部である一室は騒然としていた。

狙撃で仕留める案を立案し、対象に攻撃を当てたまではよかった。

さらに狙撃元が破壊されても第二、第三の狙撃手が現れることで、侵入者の神経やら何やらを削る寸法であった。

そのはずであった。

「全域が破壊されました」

オペレーターの絶望的な声。

区域とかコードネームとか。

部分を表す表現があるはずだったが、現況を適切に報告するためにはその言葉が適切であった。

「正体不明、おそらく魔術系の攻撃で、ラインすべてが沈黙です。。。」

「ふざけるなっ!」

ついに基地の責任者がキレた。

「あんな出鱈目なやつがあるか!ふざけるなーっ!あーーー!!」

頭を掻きむしり、幽鬼のような視線を切り札に向ける。

「頼んだぞ。。。」

それを受けて、女は深く頷いたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ