エロワード ~意味はしっかり調べよう~
勢いで書いた短編です。
気楽に読んで「おバカだなあw」と笑って頂ければ幸いです。
長らく群雄割拠で戦乱の時代となっていた大陸は、その日ついに一国によって統一されることとなった。争いから解き放たれることとなった人々は大いに喜び、各地で連日の祭りが開催されていた。
民衆が浮かれる中、ある街の城の一室に大陸統一を成し遂げた立役者たちが集まっていた。
「皆、この度はよく頑張ってくれた。これでようやくこの世界にも真の平和が訪れることだろう!」
奥まった場所に置かれた一際豪華な椅子に座った『主』が集まっていた者たちを褒め称えると、感謝に返礼そして主を称える言葉が飛び交うことになるのだった。
仰々しい態度でそれを治めると、さらに続ける
「そこで、これを機に国や我が名を改めるつもりである」
「我が主、その仰り様から察しまするに、既に案がお在りのようですな」
「その通りじゃ。我らが願いを叶え、覇道を推し進める力となったこの異世界の書物から選び出すつもりである!」
てってれー♪という効果音が付きそうな調子で主が取り出したのは、ボロボロになった一冊の本だった。
一口に本と言ってもただの本ではない。彼らが見知った動物の皮を用いた物と比べればはるかに薄い。もっとも、その分耐久性は低かったようで、表紙などは手垢などで薄汚れているばかりか所々破けかけてしまっている。
「おお!救国の、いえ、『覇道の書』ではありませんか!」
「もしや、解読ができるようになったのですか!?」
しかしその効果は絶大で、それを見た重臣たちの声が再び興奮したものへと変化し始める。その騒ぎを片手を挙げることで制すると、主はニヤリと笑い告げた。
「研究班からの報告によれば解読は順調に進んでおるそうじゃ。国などに用いるにふさわしい言葉をも見つかっておる」
おおー!という歓声に部屋の中は三度沸き立った。それもそのはずで、誰かが覇道の書と言った通り、彼らの大陸制覇の陰には、主が手にしていた古びた書物が大きく貢献していたからである。自分たちを栄光へと導いた不思議な書物、そこから国の名を得ようというのであるから、場が興奮で沸き立つのも当然のことだった。
さて、この謎の書物であるが……。実は召喚という秘技を用いて異世界から呼び寄せたこの世界の外の代物である。しかも召喚者の腕が良かったのか、はたまた単に運が良かっただけなのかは不明であるが、特殊能力を持った者たち同士の戦いを題材にした漫画をノベライズ化したものだった。つまり文字ばかりではなく、挿絵の数が非常に豊富だったのである。
加えて言えば、ここはいわゆる剣と魔法の世界。挿絵に描かれた技を再現できる下地が整っていた。もちろんここにいる者たちを始めとして多くの人々の努力やたゆみない研鑽があってのものであることは忘れてはいけないことであろう。
そうして新たな戦法や技を習得することで、この国はついに大陸統一という偉業までも成し遂げてしまったのだった。
このように、覇道の書は彼らにとっては導きとも言えるものであったのだが……。一つだけ。誰にも知られていない問題があった。
「皆に告げる。これよりこの国は『エロエロ帝国』とし、我は『エロワード』と改名、王の座を『ドスケベ大魔王』と呼ぶこととする!」
……実は原作の漫画は派手な異能バトルシーンと共に、時折描かれるお色気シーンによって人気を博していたのだ。もっとも、女性キャラたちの水浴びシーンを覗こうとして逆に返り討ちにされるという、ある意味定番なギャグ展開ばかりではあったのだが。
「主、いえ、ドスケベ大魔王!それらはどのような意味があるので?」
「うむ。『大魔王』には偉大な国の最上位者、『エンパイア』には強国という意味があるそうじゃ。そして『ドスケベ』と『エロエロ』はそれぞれを称える修辞語、というのが研究班からの回答である」
「ほほう。確かに『ドスケベ』には力強い響きを感じますなあ」
「それを言うならば『エロワード』や『エロエロ』にはどこか雅やかなものがあるように思えるぞ」
お色気シーンは当然ノベライズ版でもある覇道の書にも同様に掲載されていたのだが、何故だかそのイラストページだけは紛失していた。そのため、それらの言葉が余りよろしくない不名誉な物であることに誰一人として気が付くことはなかったのだった。
余談だが、『エロワード』は主人公のエドワードをもじったもので、『ドスケベ大魔王』は懲りずに女性キャラの艶姿を覗こうとしていた主人公を返り討ちにしたヒロインが言い放った言葉、そして『エロエロ帝国』は彼に唆された男性陣に向かって、女性陣が冷ややかな視線と共に言い放つ台詞である。
その後も『ムッツリ宰相』や『イヤラシ元帥』といった役職名から、果ては貴族位を『変態紳士』とするなど、言葉の意味を知っている者からすれば頭を抱えたくなるような命名が続いていくことになるのだった。
千数百年後、様々な要因から大帝国は衰退し、大陸には魔物がはびこる暗黒の時代が訪れていた。
故事にでもあやかろうとしたのか、はたまたそれ以外の手がすべてなくなってしまったのか。とある小国が召喚の儀式を復活させて、異世界より勇者を呼び出してしまう。
そんな彼らが古代に栄えた国や王の名を聞き、盛大に吹き出すことになるのだが……。それはまた別の話である。
(作者にとっての)息抜き作品その一でした。
連載中の作品の方もできるだけ早く書き溜めることができるように頑張りますので、できればお付き合いください。