戦闘実習①
早見咲は専門分野は魔法銃工学と実戦だ。魔法高等学校の銃学科では理論を教えつつ、戦闘実習という授業で、より実戦で使える人間にするというカルキュラムになっている。
「今からバルーンを出します。的確にバルーンに当ててください」
早見は一気に放出されたバルーンを、一瞬のうちに全部撃つ。あまりにも速さに、バルーンの破裂する音が重なって、爆発したような音となっていた。
「先生。あまりの速さに見えなかったです。銃の展開も見えなかったし、魔法とどのようにシンクロしたのかもわかりませんでした」
クラスの三島陽子が早見に話す。三島はCクラス中でも優等生のようなタイプの人間で、ショートヘアの似合う女の子だ。
銃の展開とは、魔法の銃弾を魔法銃に装填することで、初心者はここにつまづくことが多い。魔法とのシンクロは、自身の魔法を発砲の際に使用することで、魔法の効力を銃に込めることができる。桜子と湊がこの前やっていたのは、真似事であり、魔法力でカバーしていた面が大きかった。
「三島さん、実際にやって見てください。私が隣で教えてあげますから。皆さんもよく見ておいてくださいね」
「あの、えっと」
三島は恥ずかしそうに、自身のデバイスを手に持ち、みんなの前に立つ。
「それでは構えてください。防音用魔法を自身にかけるのを忘れないでくださいね。」
「サイレント」
魔法で銃による特定の音を遮断するが、戦闘では使用されないことが多い。あくまでも、実戦や対人訓練の時であった。三島は、両手で小型銃デバイスを構える。
「それでは、試しに撃ってください」
三島は戸惑いながらも、銃弾を装填する。
「ウィニング」
風魔法を付与した銃弾が、浮き上がったバルーンの一個にあたるが、他の9個バルーンは天井までいってしまう。早見は一連の動作を鋭い目で見ていたため、三島は失敗したのかと思い、萎縮してしまう。
「ごめんない。先生」
「いいえ、気にしないでください」
早見はあまりにも、淡々と話すため、やはり感情の伴っていないようにも見える。
「そうですね。他の方々の見ていても、魔法銃を魔法の延長線上と考えていると思いませんか?」
「そう思っています」
神崎駿は、はっきり答える。神崎はこの前の魔法力のテストでクラスで3番を取った男だ。筋肉で引き締まっていて、肉体美を追い求めている。
「それじゃあ、魔法力が強ければ強いだけ、魔法銃に戦闘でも強いと思いますか?」
「そうだと思います。魔法力があれば、銃の付与できる魔法も強くなれると思いますし。戦闘の場合でも有利になると思います」
「それは間違ってますね。私の魔法力はCクラスの中で比べても、一番低いですが、誰にも負けない自信があります」
「先生は、戦闘経験が豊富だから、負けないんですよ。そんなの当たり前ではないですか」
神崎の自信は魔法力だ。魔法力が関係ないと言われれば、若い神崎が抵抗するのは目に見えていたのかもしれない。早見が少し嘲笑するように、含み笑いをする。
「なにがおかしいんですか。先生」
「いえいえ、ごめんなさい。あまりにも無知で日本の魔法銃学は進んでいないんだなと思って」
初めて笑う早見は綺麗なお姉さんのようだった。しかし、神崎は怒りが抑えられなかった。
「もう我慢できません。俺と勝負してください」
神崎はクラスの前に立って宣言する。
「おい、神崎、先生に対して失礼でしょ
平松が神崎を止めようとするが血気盛んな神崎は聞く耳を持たない。
「面白いですね。私闘は禁止されてますが、私が神崎くんに身をもって教えて差し上げましょう。銃弾は1発で、相手を戦闘不能にさせたら、負けです」
早見はにこやかな表情で話す。
「先生も、神崎の挑発に乗らないでくださいよ」
平松は先生に考え直してくださいとすかさず言う。
神崎と同じに先生自身も聞く耳を持たない。
「ね、こよリン」
「何、桜子ちゃん?」
平松と桜子は内緒話をはじめる。
「早見先生って意外と、勝負事が好きなんじゃない?」
桜子は率直な感想を述べた。
「そ、そうかも・・・」
それが意外とあたっているようで、バトルフィールドに立つ早見はいつもよりも楽しげに見えた。
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