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12人の魔女 vol.3

作者: ロゼッタ

前回の続きです。今回の主役は、10月の君。天才魔女のお話、ご覧ください( ^ω^ )

前々回:https://ncode.syosetu.com/n5095gk/

前回:https://ncode.syosetu.com/n6874gm/

中秋の名月が近くなり、早いものでは金木犀の香りが大気中に漂い始めている。世田谷区代田、その中にある空き家に少女は一人住んでいた。世田谷区には空き家が五万戸以上ある。少女は気に入った空き家があれば、勝手に住み着きくつろいでいるのだ。だが、その少女は今、恐れていた。もうすぐ十月が来る、来てはいけないのだ。十月になると、あれが!あたちの嫌いなあれが!大好きなモフモフ系ヌイグルミを抱き締め、床に膝をつき、震える少女。名を十月の君。眉毛が濃く、くりくりした目。身長136センチの短髪少女。容姿に騙されてはいけない。よわい200を超える恐るべき魔女なのだ。頭を抱えていた見掛け少女は閃いた。


そうら!十月が来なければいいのら!


閃きに満面の笑みを浮かべる少女は、この後、とんでもない行動に移ろうとしていた。


魔方陣、膨大な魔力を伴う魔法を行使する時に使用するもの。少女は、いつの間に着衣したのか、紫色のとんがり帽子に紫色のローブといった出で立ち。着なくとも魔法は行使できるが、魔力の量が違うのだ。自身の手首に傷をつけ、大量の血液をもってフローリングの床に魔方陣を描いていく。円は三重に、円の間にルーン文字をなんの迷いもなく書き込んでいく。仕上げに円内へ五芒星を加え魔方陣ができると、円の中心に捧げ物を供える。少女が選んだ物は、生きたウシガエル10匹、メインに山羊を一頭だ。これらを、何の躊躇もなく手慣れた手つきでさばいていく。床は血まみれになり、山羊が断末魔の痙攣を終える前に少女は呪文を唱え始めた。


デイナコ ツガウジ イガネオ


デイナコ ツガウジ イガネオ


デイナコ ツガウジ イガネオ


詠唱を続けると、紫色の煙りが魔方陣中心から立ち込め、供え物がどろどろと溶けだす。それらが消滅すると、魔方陣は消えていた。


ふぅ、これであちたは来ないのら


少女は不適な笑みを浮かべた。そして、世の中が10月1日を迎えることはなくなったのである。


人の作りし灯りが一つ、また一つ消え行く頃、魔道に身をやつし者の集いあり。その集いをサバトと言う。この世に魔女なんて・・いるんです、ひっそりと。世界中、裏社会・・これでは犯罪になるので裏世界とでもいいましょうか。そこから現世と関わりを持ち彼女達は、生活してるのです。東京にも、勿の論いますとも。世田谷区在住の魔女のサバト、世田谷の人口約94万人に対し、魔女の数は12人。魔女がいない区もあるし、一人のみで、サバトができない区もある。因みに東京都全域では、魔女人口36人。日本全国では88人。そんな中で、世田谷区は、突出していると言えよう。普段、仕事をしている魔女もいる。なのでサバトは、毎夜、22時に始まり、0時に閉会。それが、世田谷区サバトの決まりごと。過半数以上の出席でサバトは成り立つ。強制はしていないが、この世田谷サバト、ほぼ毎日全員が参加している。メンバーは、本名で呼び会うことはしない。リーダーは、一月の君と言う呼称、以降、十二月の君まで、呼称がつく。サバトでは、他愛もない話しから、人生相談、魔術論まで、なんでもありだ。同時に持ち寄りの物で楽しいお茶会も兼ねており、ご自慢の手料理を披露など賑わいを見せている。この世田谷サバト、会合は、リーダーの一月の君宅で行われ、幹事が持ち回りで開催する。幹事はカレンダーの月の君。今、月は九月なので、九月の君が幹事役だ。そ~れでは、み~なさ~ん、サバトを始めましょ~う。黄色のローブを着衣した、少したれめの九月の君の発声でサバトは始まった。


今日は、なんの話にしようかしら、と言いたいところですが・・


純白のローブを身に纏う一月の君。気の優しい白髪のお婆ちゃんといった印象を受ける。巨大な屋久杉を使用したテーブル。そこに魔女達は腰かけおり、ハーブティー、スポンジケーキ、マカロンなどのスィーツも置かれ、香りだけで癒される。


だが、いつもと違う一月の君の雰囲気に場は呑まれる。わたくし、いつもこの台詞を使っております、皆さんご存知でしょう?一月の君が一同を見回す。皆が頷く。ですが、これを言うのはサバトが行われる日、この時間一回のみです。同じ日に何度もではありません。この一月の君の真意を理解している魔女がこの場に2人いる。十月の君と顔に木彫りの道化仮面をつけ、桃色のローブ、四月の君だ。もっとも、四月の君は、食べることに夢中なので、自身に害意がなければ気にならない。動揺しているのは、十月の君だ。膝の上に手を置き、震えている。あら、どうしたのこころちゃん?『んっ!?いつもの返しが来ない。これはおかしい。』九月の君が十月の君に手をかけようとすると、十月の君・・一月の君から刺すように声がかかった。肩がビクッと動く十月の君、明らかに怯えているのが分かる。皆がざわつき始めた。はぁっと一月の君がため息をつく。


時を戻す呪いをかけましたね。


十月の君の肩が激しく動いた。終止うつむいている。一月の君へ視線を向けられない。どういうこと?褐色の肌に巨乳、青のローブ、七月の君が思わず声を上げる。時を戻す呪いと言いました?そんな事ができるのですか、噂には聞いていましたが絵空事かと思ってました。黒のマントに黒のローブ。11月の君が興味津々になる。魔女にはランクがあり、世界196ヵ国中、魔女人口39461人。その中で帝と呼ばれるSSSランクの魔女が3人。極と呼ばれるSSランクの魔女が13人。匠と呼ばれるSランクの魔女が86人。輝と呼ばれるAランクの魔女が264人。雅と呼ばれるBランクの魔女が2457人。彩と呼ばれるCランクの魔女が5519人。慣と呼ばれるDランクの魔女が10327人。凡と呼ばれるEランクの魔女が20792人である。世田谷サバトには、帝が1人、極が3人、匠が5人、輝が3人いる恐るべき集団なのだ。ランクは魔力、技能から判断されており、因みに帝クラスが戦いでもすれば、世界は滅亡する。世田谷サバトは、そんな恐るべき魔女たちが平然とお茶会をしているのだ。帝である一月の君は、時の呪いが発魔した時、直ぐに気づいた。読んでいた魔術書を閉じて呟く。この魔力は・・十月の君ですね。害意は感じられない。どういう真意か、9月30日のサバトをみていたが、十月の君は悪びれた感がない。三度目の9月30日を迎えてのサバト。十月の君に、呪解する気配は、ない。流石に見過ごすことはできないため、十月の君を詰問するに至った。さぁ、正直に答えなさい。でないと、諮問会議に移行しますからね。一月の君が指をパチンと鳴らせば室内の様相が瞬時に変化する。3つの仕様があり、サバトの部屋、詰問部屋、拷問部屋だ。3つの部屋を当事者として経験しているのは、十月の君、だ。時にかかわる魔法は、禁忌として魔法院が定めている。極以上の魔女ならば、呪いが発動したことに気づいているだろう。諮問会議の名前を出され、十月の君は首を左右に激しく振った。以前、諮問会議にかけられ、その後、酷い目に遭っているからだ。つまり前科もちである。十月の君は、観念し、ぼそぼそと呟く。が、全く回りの者には聞こえない。いや、九月の君以外はだ。代弁しようと九月の君が挙手をするが、一月の君がそれを許さない。十月の君は、頬を膨らまし、スネた。俯いて微動だにしない。あ、あああ、い、一月の君?く、九月の君にしゃべって、も、もらって、も、ね・・深紅のローブで薬草マニア、八月の君が極度に緊張しながら何とか言葉にする。ご意見ありがとうございます、八月の君。一月の君は、八月の君に向け一礼した。顔は笑っている、が恐い。再度十月の君に視線を移す。十月の君、これはちゃんと、あなたの口から説明をしていただかないといけません。あれだけの大魔法を使った理由を。六月の君を呼びたくはないのですが、あなた次第では、召還しなくてはなりません。「ヒィッ!」海外で仕事中、クリーム色のローブ、六月の君はしばらくサバトを欠席している。身長191センチもあり、容姿端麗、トップモデルであり、女優でもある。が、実はドSなのだ。以前、十月の君は六月の君に拷問を受けており、トラウマになっている。「あ、・・」十月の君が、始めて皆に聞こえる声を発した。一同、固唾を飲んで十月の君を見つめる。「あ、あたちがやったのら!らって、らって、十月になったら、幹事になるのら!幹事になるのが嫌だったのら!」そう言ってわんわん泣き出した。十月の君は、自分の口調が子どもっぽいのを自覚している。治そうにも、治せないのだ。魔力の強大さに成長要素が奪われているのだろうというのが、魔法院の診断だった。この魔力について、話しておかねばなるまい。十月の君の両親、父親はEランクのソーサラー。母親は、Dランク、慣の魔女である。母親のシズルは、当初Eランクの凡だったが、死に物狂いで修業し、Dランクへと昇格した。そのDとEの間に産まれたのが、十月の君である。通常、ランクの低い者同士から優秀なランクは産まれたためしがないし、それが定説だ。しかし、例外が発生してしまう。シズルは十月の君を産む際に死んだ。娘を見ることなく、魔力を全て娘に吸収され、干からびてだ。それだけでも異例なのに驚愕すべきは魔力である。十月の君、生誕時のランクは、Aの輝。あり得なかった。父親のコザトは、愛する妻を奪った娘が許せるほど感情が割りきれていない。娘を見捨て、行方をくらました。以降、十月の君は、魔法院の保護下におかれ、愛情を知らず、道徳も知らず年を重ねた。魔力は信じられぬほど増強し、ランクはSランクの匠となる。だが、その心と体は成長を知らず、愛を知らず厚顔無恥な魔女に成長した。120年を過ぎた頃、半ば幽閉状態の生活に嫌気が差し、十月の君は外界へと飛び出してしまう。始めて目にする外界。そこには、魔力を感じない人、人、人。魔力のない人がいるなど始めて知った。街中を物珍しく歩いていると、あら、何か田舎臭くない?と声がする。見上げれば、見た目、自分と同等か、少し上の女の子集団がいた。何なのら、田舎臭いとはあたちのことか?始めて会話した時、眼前の女の子たちは自分の口調を笑い、けなした。十月の君は、怒りの感情が制御できず、その場にいた子を全て殺してしまう。始めて羞恥心という自我が芽生えると、自分のしゃべり方が嫌で、人前で声を出すことも、殆んどなくなる。孤独な人生を送ること数十年。荒んだ生活を過ごし、流れに流れて行き着いた日本。東京の世田谷区で十月の君は、一月の君と出会う。始めて敵わない魔女がちっぽけな島国にいた。一月の君に諭され、十月の君は、少しずつ人らしい心に目覚めていき、現在に至る。


まぁ・・終止笑顔、グレーのローブ、十二月の君がもらい泣きをする。「恥ずかしかったのだろうな。」紫色の輝く長髪、切れ長の目、シャープに尖った鼻。男装したら世の女性は一ころという美麗な容姿、茜色のローブ、五月の君が同情する。人目を憚らず号泣する十月の君を九月の君が抱き寄せる。大丈夫、大丈夫よこころちゃん・・十月の君は普段、小学校に通っており、九月の君は、十月の君が在席する三年生クラスの担任なのだ。生徒にはとても好かれている。十月の君の仮初めの名は、薙野こころである。だから、九月の君は、つい名前を言ってしまうのだ。「一月の君、何とかご赦免を!」堅物眼鏡、銀色ローブ、二月の君が懇願する。あ、私も~。四月の君が手を上げた。「私からも是非、お願いしますわ。」黄緑色のローブ、ふくよかな体系、料理大好き、三月の君もだ。皆が十月の君を救おうとしている。一月の君も魔法院への報告義務はあるものの、幸い被害が出ていることではない。禁忌魔法の件については、厳重注意に留めようと思っている。が、十月の君は、日々成長を続けている。魔力がだ。あと50年もすれば、確実にSSS帝ランクになるだろう。そうなった時、上に立つ者が人と話すことができぬようでは、示しがつかない。それまでにこの子を育て上げる。それも自分の使命だと一月の君は思う。たとえ嫌われても、鬼と思われても、だ。皆さん、気持ちは分かりました。が、十月の君が、十月になる度に何かをされては困ります。昨年、何が起こりましたか。げっ、と皆が声を上げる。十月一日、その夜十時、死霊の集団が世田谷サバトを襲った。暴力団の組ひとつ潰して死霊集団をつくり上げた犯人は十月の君。幹事が嫌で騒ぎを起こしたのだ。死霊はその場の魔女たちにより、呆気なく消失し、直ぐに犯人が特定。諮問会議にかけられ、暴力団とはいえ、20人以上の命を私情で死霊にするなど言語道断!十月の君に刑が告げられ、六月の君による拷問が執行された。鋼鉄の処女による串刺し、木馬による股割きである。自己修復能力のある魔女にすれば、死ぬことはないが、激痛は伴う。しかも、そのやり方があまりにエグかったため、十月の君は、六月の君が恐怖対象になっているのだ。で、今年は禁忌魔法です。幹事になれてもらわなければ、毎年災害級の魔法を使われてしまいます。十月の君、幹事をする覚悟を決めるか、それとも・・世田谷サバトを脱退しますか?十月の君が九月の君に抱かれたまま、ぴくっと反応した。少しの沈黙があり、九月の君から体を離す。その顔は紅潮し、涙で目が赤く、鼻水が垂れている。その表情のまま、皆を見回し叫んだ。


あ、あたちは、ここが好きら!たのちいのら!ここ、こころがぼがぼがするのら!もう、もう嫌がっ、嫌がって魔法は使わないのら!だか、だがら!ここにいるのら!


うぇぇぇぇん!絶叫し、号泣した十月の君。世田谷サバトの最大のトラブルメーカー。ただし、十月が来なければ無害なのだが。この日、十月の君は、サバトにいる魔女全てに幹事をこなす、嫌がって悪さをしない誓約を立てた。証の記しに自らに戒めの呪いをかけてみせた。これは、約束をたがえた場合、猛毒が体を蝕み、三日三晩のたうち回るというもので、軽いものでは、ない。呪いのエキスパートが行うものだ。皆に異論はなかった。


では、十月の君につきまして、今回の件は不問と致します。皆さん、異議はありますか?一月の君が裁決をとるが、異議を唱える者はいない。本当に、あなたはもう・・一月の君は、一滴の涙を流した。良かったわね、こころちゃん!九月の君が、十月の君をぎゅうっと抱き締める。い、いたい、いたいのら!牧野!十月の君が、声を出して自分を、ぼそぼそとではなく、しっかりと聞こえる声で始めて自分を呼んでくれた・・九月の君がぽたぽたと涙を流す。ん、んもぅ!せんせえと呼びなさい。九月の君、九月最後の日に、最高のプレゼントを受け取った。


人の作りし灯りが一つ、また一つ消え行く頃、魔道に身をやつし者の集いあり。その集いをサバトと言う。この世に魔女なんて・・いるんです、ひっそりと。世界中、裏社会・・これでは犯罪になるので裏世界とでもいいましょうか。そこから現世と関わりを持ち彼女達は、生活してるのです。東京にも、餅の論いますとも。世田谷区在住の魔女のサバト、世田谷の人口約94万人に対し、魔女の数は12人。魔女がいない区もあるし、一人のみで、サバトができない区もある。因みに東京都全域では、魔女人口36人。日本全国では88人。そんな中で、世田谷区は、突出していると言えよう。普段、仕事をしている魔女もいる。なのでサバトは、毎夜、22時に始まり、0時に閉会。それが、世田谷区サバトの決まりごと。過半数以上の出席でサバトは成り立つ。強制はしていないが、この世田谷サバト、ほぼ毎日全員が参加している。メンバーは、本名で呼び会うことはしない。リーダーは、一月の君と言う呼称、以降、十二月の君まで、呼称がつく。サバトでは、他愛もない話しから、人生相談、魔術論まで、なんでもありだ。同時に持ち寄りの物で楽しいお茶会も兼ねており、ご自慢の手料理を披露など賑わいを見せている。この世田谷サバト、会合は、リーダーの一月の君宅で行われ、幹事が持ち回りで開催する。幹事はカレンダーの月の君。今、月は十月なので、十月の君が幹事役だ。


で、で、で、では!ひゃ、ひゃばほをは、はじめ、始めるのら!


見た目、眉毛の濃いくりくりした目の子どもである。紫色のローブ、身長136センチの短髪の魔女、十月の君の発声でサバトは始まった。


次のサバトでは、どんな会話があるんでしょうねぇ。

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