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0話 第1話 『魔法少女、はじめます!』

初投稿となります。

完結できるよう頑張りますのでどうぞよろしくお願いします。

 第1話 『魔法少女、はじめます!』


 少女は走っていた。

 空は薄曇り、不気味に翳り、まるで日蝕でも起きはじめているかのようだった。


『あそこ! あそこだよ!』


 耳元で聞こえたどこか幼い声に少女がそちらに顔を向けると、見えてくるのは公園。

 走ってきたから、それだけではない、何か、どこか、落ち着かない胸騒ぎ。

 何かがいる。そこで何かが起こっている。

 どくどくと鳴る心臓の音は耳元で聞こえているみたいだ。

 少しの恐怖と、少しの好奇心と、そして今はまだ小さな正義の心をその胸に宿しながら、少女は子供の頃から知っているその公園に走り込んだ。


「なに…、これ…?」


 公園はおかしなことになっていた。遊具はへしゃげ、地面は抉れ隆起し、あちらこちらに大穴が空いて、そこから大木の根のようなものが見えていた。

 花壇の草花は枯れ、周囲に植えられた木立からは枯れた葉がはらはらと止まることなく舞い落ちてきている。

 そして、公園の中心に植えられているシンボルツリーは、捩れ、うねり、ギシギシと音を立てながら今まさに驚異的なスピードで枝葉を伸ばし成長していた。

 その幹にぽっかりと空いた洞はまるで人の顔のようで、ザワザワと蠢く様子は禍々しい生き物のようにも見える。

 正に「異常事態」、としか言いようが無い。


『ひどいっ!! これは【ハービーサイド】の仕業だよ!! このままじゃ、このあたりの植物が全部枯れて、酷いことになっちゃう!!』


『ポンっ』と音を立て、ハーフアップにした少女の髪留めから、小さな生き物が現れた。猫のような、小さなライオンのような、綿で膨らんだぬいぐるみのようなそれは、少女の顔の近くにふわふわと浮かびながら、抗議するようにわたわたとその短い手足を振り回した。

 やさしい樹木を、こんな風に恐ろしいものに変えてしまった世界の敵【ハービーサイド】が憎かった。そしてそれよりも何よりも、苦しんでいる植物たちのために何も出来ない、力の無い自分が悔しくて仕方が無かった。

 でも、けれども今は――


「タイムこれがそうなの? これを何とかすればいいんだね!」


 少女がその生き物―花の世界からやってきた精霊、タイムに振り返り、尋ねた。

 タイムは涙目になりながら、少女に応える。


「お願い桃香(ももか)ちゃん! 変身してあの木を助けてあげて! 桃香ちゃんにしか出来ないんだ!」


 今、タイムの傍には選ばれた少女―魔法の戦士がいる。

 彼女ならば、苦しんでいる植物たちを悪者たちの手から救うことが出来る。


「わかった、やってみる!」


 少女―桃香は力強くタイムに頷き返した。その瞳には、確かな決意が宿っていた。

 …とは言ったものの、まず何から何をどうすればいいのかが分からない。「……えぇっと…」と、桃香がそわそわと辺りを見回したとき、―気付いた。


 ―その『人』は、空中に浮かんでいた。

 ファンタジーのお話の中に出てくるような鎧とマントを身に纏った銀色の髪の男が、腕組みをしながら静かにこちらを見下ろしていた。普通の人では、ない。


「あなた、誰?」


 おそらく、『それ』が、『その人』がそうなのだろうという予感がしながらも、桃香は尋ねた。その応えは彼からではなく、隣にいたタイムから発せられる。


『お前は!!  【ハービーサイド】!!??』


 タイムの、驚きと、怒りと、憎しみの混ざった声に、男の顔は、ニィと笑ったように見えた。


「あなたがこんなことをしたのね…!?」


 その間にもシンボルツリーはうなり声を上げながら暴れるように成長を続けていた。地面は力を失っていくように乾き、色あせ、痛々しくひび割れていく。


「絶対に許さないんだから!!」


 彼女の怒りに、決意に応えるように、髪留めが光を放ち、その光が桃香を包み込んでいく。


『桃香ちゃん、変身だ!!』


「『フラワリングッ…、デコレーション!!』」


 聖なる力、清らかなる光の一滴が今、ここに開花した…!



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