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怒涛の一日

シルバーベアは血抜きをして持ち帰ることにしたので、近場の川で処理を行う。


心臓付近に穴を開け、そのまま川に晒しておこう。


モンスターの血液はものによっては高く売れるのだが、こいつの場合は二束三文だ。そのまま、川に流すこととする。


マリナには刺激が強かったらしく、ムリぃと呟いたにそっぽを向いてしまった。


強力なモンスターの肉は栄養価が高いだけでなく、魔力の上昇にも役立つ優れものだ。このクラスのモンスターなら、売れば結構な金額になる。


まぁ、街に持って行くのも手間なのでうちでそのまま頂いちまうこととするが。


何よりシルバーベアの肉は臭みさえしっかり取ればかなりの美味だ。


今日の晩飯はシチューにでもするか。


一通り処理も終わったので川辺で休憩しているマリナのところに戻る。


「さっきのグロいのもう終わった?血はギリいけるけど、内臓はキモいから無理だよ」


「そうは言っても、これから冒険者やるんだからあんなの序の口だぞ。

ゾンビとかアンデットのモンスターなんか腐って肉くっつけたまま襲ってくるし」


「ムリムリ。それ系はまじでムリ。ウプっ。想像したら吐きそう」


口元を抑えながら涙目のマリナ。


まあ俺もアンデット系は得意じゃないから自分から近づくことはないが。


「そういえばさ、あたしってこっちの世界に召喚されたんだよね。身分とかってどうなるの」


「その辺りは法律も整備されてるから問題ないだろう。俺のツテも使えるしな」


「意外と召喚される人って多いの?私みたいに」


「数年に一回はあるな。空から降ってくるのは初めて見たが」


召喚は基本的に大規模な魔法を使い呼び出すものだ。その場合、召喚を行った者をマスター、召喚された者をサーヴァントと呼び、契約に縛られた明確な関係性を持つ。しかし、今回のマリナのように、召喚を行ったものが不明な召喚も稀にある。その場合は召喚されたものはストレンジと呼ばれる。


「誰が呼び出したか分かんないから、私はストレンジってことか」


「そういうことだ。当面の住む場所はなんとかしてやるが、まずはこの世界に慣れるところから始めないとな」


「なるほど。ちなみに私って日本に帰れるの?」


「なんとも言えん。さっきも言ったが、召喚時の契約次第ってところだな。それが分からんとどうしようもないな」


「うーん、思い出せないいいいい」


「おいおい思い出していけばいいさ。さて、血抜きもそろそろ終わった頃だ。家に戻るとするか」


「はーい」


基本的には素直な性格なんだろう。変な輩についていかないように見張っておくか。



「ただいま」

「お邪魔します」


家に着いたが、リックの返事がない。

机に置き手紙が置いてある。

「集会に出てくるですよ。夜には戻るので、窓だけ開けておいて欲しいですよ」


そうか、今日は集会の日だったか。


じゃあ、サクッと熊を料理しちまうか。


皮は使えそうだな。剥いで、街に出るときに持って行くか。


「今からこいつの解体するが、見学しておくか?動物の身体の仕組みを勉強しておくのは大事だぜ」


「そう言うなら、見に行くけど....大丈夫かなぁ」


「無理そうなら途中で抜けな。血は抜いてあるから大丈夫だと思うが」


庭に備え付けた、解体用の吊るしに熊を引っ掛け、一気に皮を剥ぐ。


マリナがヒっと声をあげるが、そのまま続けて行く。多少の同様はあるがしっかりと見ている。


意外と勉強熱心だな。


筋肉の可動域、骨の位置、心臓の位置、

基本的なことを伝えていく。


解体はその動物の身体を知る絶好の機会だ。構造を知ることで、弱点やその動物の苦手なことを見抜くことにも繋がる。


若干辛そうにしながらも、しっかりと目は逸らさない。


肉の解体と皮の剥ぎ取りが終わった。

肉はこのまま、地下の氷室に寝かせておくか。半分くらいはジャーキーにして保存食。


皮は油だけ取って鞣す。

シルバーベアの皮は魔法耐性がそこそこあり、耐寒性が高い。

冬の山を歩くにはうってつけだ。



「良く耐えたな。皮剥ぐのなんかは初めて見たら結構キツイもんだが」


「ラクショーだし。でも当分は見たくない」


なぜか強がるマリナ。それだけの余裕があるのは良いことだ。




仕上げた料理が食卓に並ぶ。


我ながらいい出来だ。


「「いただきます」」


声をそろえ、食事にありつく。


「美味しい!おじさん料理上手なんだね」


言いながらもスプーンの運びは止まらない。緊張も解けて腹が減ったか。言い食いっぷりだ。


「冒険者やってるとこれくらいはできなきゃ生きていけないからな。お前にもそのうち教えてやるよ」


「料理かぁ。お菓子だったら作れるよ?」


「そのうち作ってもらうか」


「うん。こん、どね。ふぁあ」


軽口を叩きながら、欠伸を一つ。


「腹いっぱいになったら眠くなったか?今日は色々あったから無理もない。風呂沸かしてやるよ」


「うん。ありがとう」


果物を切り分け、食卓に並べる。


「これでも食って待ってろ」


「ふぁい」


目が座ってきたマリナ。風呂で溺れないだろうな。


そういえば着せてやる服がないな。寝巻ぐらいは何とかなるが、今着ている服以外は持ってないだろうしな。


リックに頼んで仕立ててもらうしかないか。


そんなことを考えていると、風呂の準備が整う。


「マリナー。風呂沸いたぞ」


返事がないな。寝ちまったか。


居間に様子を見に行くと、案の定ソファーの上で丸くなっている。


仕方ない。今日はこのまま寝かせておいてやろう。明日からまた忙しくなるしな。


眠ったままのマリナを抱きかかえ、寝室に運ぶ。


服を着せかえるのは流石にまずいよな。そのままにしておくか。


「ありが   とう」


寝言だよな。器用な奴だ。


「今日はそのまま休んどけ。お休み」




寝室から戻るとちょうどリックが窓から帰ってきたところだった。


「おう、リックお帰り」


「ただいまですよー。今日の夕食はシチューですよ?」


早速匂いを嗅ぎつけたリックが台所に向かう。


「シルバーベアの肉だから今日のはなかなかいい味だぞ」


「むしろこんな人里にそこそこ強力なモンスターが出たことの方が驚きですよ。怪我はないですよ?」


俺の心配をしつつ、器用に皿に自分の分を盛り付けていく。


離れて見ると、お玉が浮いているように見える。知らない奴が見たら驚きそうな光景だ。


「それはそうと、お客さん来てるですよ?」


テーブルに放置されていた二人分の食器を指さしながらリックが訪ねる。


そうだった。忘れていた。


今日の経緯を説明したところでリックが大きなため息を一つ。


「はあー。なんで畑仕事に行っただけで、そんな面倒ごとに巻き込まれるですよ」


「呪いのせいだ。俺だって好き好んで巻き込まれてるわけじゃないさ」


バツが悪く頭をかいていると、それはそうと、とリックが続ける。


「今日は畑仕事に行って、なんの種をまいてきたですよ?おイモ。ニンジン。楽しみですよ」


ニコニコ笑顔のリックを見て、ようやく今日の目的を思い出す。


種植えるまで終わらせようと思っていたはず。


しかし、思い返すと、耕し終えたら、マリナが降ってきて、シルバーベアと戦って。


うん。種、蒔いてないな。


俺はリックの正面に回り込むと、サッと


土下座を慣行した。

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