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実験ー進化



 無事に鷹の素質を獲得したピイ助の索敵能力は目を見張るものがある。


 元から鳥系のモンスターなので目は良かったのだが、それがさらに強化されている。


 先日見事に罠にかかったアリジゴクも事前に察知することが可能になっただけでなく、敢えて罠を発動させ狩ることもできるようになった。


 風の素質も含まれているので、魔法の使い方は俺が指導している。


 ピイ助は攻撃系の使い方よりは、移動補助の使い方の方が得意らしい。


 俺が習得するまで結構時間のかかった疾風もすぐに使いこなせるようになった。お陰で移動速度はかなり向上した。


 逆に攻撃系の魔法については初歩的なものを練習中。


 ウィンドカッターと呼ばれる、風の刃を飛ばす魔法なら何とか使えるという感じだ。


 それでも初めて素質を得てから使うのであれば十分な進歩なんだが。


 そしてピイ助と最も相性が良いのが直感。


 もともと野生のモンスターなので危機察知能力は高いのだが、それがさらに先鋭化した。


 そして極限られた条件下ではあるが、自身以外にも共有ができる。


 ピイ助自身の魔力の消費が激しく多用できるものではないが、これに関しては本人の努力次第でもっと伸びるはずだ。


 今後に期待。


 そして、目的のダンジョンに突入する前に、道中にある小規模なダンジョンで肩慣らしをしていくことにする。


 このダンジョンに関しては既に踏破されているダンジョンで階層は三階層。


 三層目は完全にボス部屋になっている。


 そこまで美味いダンジョンでもないので人気もないらしく他の冒険者もあまりいないらしい。


 練習には丁度いい。


 一度踏破されたダンジョンでもものによっては冒険者は頻繁に訪れる。


 内部に発生するモンスターの素材はもちろん、強化された武具が手に入ることも多いからだ。


 ダンジョンの探索で命を落とした冒険者の装備や、攻略の途中で破棄されたアイテム。そういったものはダンジョン内部の魔物によって徐々に深部へと運ばれて行き、強い魔力に晒されることでその性質を変化させる。


 踏破したダンジョンで良い装備が見つかり、自分の装備を更新する場合は敢えて現行の装備を最深部に残していくという冒険者もいる。


 そうすることで、後進の冒険者を育てるという目的もあるらしいが、どちらかというと自己顕示欲を満たすためとい方が大きい気がする。


「とまあ、ダンジョンってのはこういうもんなんだが質問あるか」


「はーい。罠とか注意事項とかの説明が全然ありません。ダンジョンて結構怖いとこだと思うんですけど」


「罠はダンジョンごとに結構違います。前にも説明しましたが、制作者によってダンジョンの性質が異なります。同じ作者のダンジョンに挑むなら情報収集は可能ですが今回の目的地は残念ながら制作者不明です」


「えー、じゃあぶっつ本番てこと?」


「質問は手を挙げてお願いします」


「はい、じゃあぶっつけ本番ですか?」


「いい質問ですね。とはいえ、予備知識は必要なのでダンジョンに共通する罠については一通り教えます。各罠の対処法とダンジョン内での注意事項を伝えます。マリナ君とピイ助君はしっかり覚えるように」


「「はーい」」


 伊達メガネをくいっと上げると、胡乱な目でこちらを見るメルトと目があった。


 あれ、偵察に行っていないはずなのに。


「アート様、何を?」


「いや、マリナとピイ助にダンジョンの説明をしていたんだが」


「えーっと、その衣装は?」


「雰囲気づくりみたいな」


 あ、メルトが呆れてる。これは悲しい。


「違うんだよ師匠。あたしたちが分かりやすいようにやってくれただけで、ふざけてるわけじゃないと思うよ。たぶん」


 フォローするならちゃんとしてほしい。ちなみにけっこうふざけてました。ごめんなさい。


「そういうことなら構いませんがポチさんは借りていきますね。少し遠出いたしますので」


「いいよー、のる?」


「そうして頂けると嬉しいです」


 結局ポチを連れていくためだけに戻ってきたメルトがそそくさと行ってしまう。


 俺が恥ずかしい思いをしただけじゃないか。


「見られて恥ずかしいなら最初からやらなきゃいいじゃん」


「仕方ないだろ、この魔道具ってそういうもんなんだから」


 町で仕入れた面白道具の一つ、教師の眼鏡。


 この眼鏡をかけることで移動式の黒板を召喚できるというそこそこ便利な魔道具。なぜか、教師っぽくなるという軽い呪い付き。実害はないからと使ってみたんだが、しっかりと被害を被った。


 とはいえこの黒板はかなり便利なのでトレードオフだな。


 今更恥など気にする歳でもないし。


 ダンジョンに存在する罠について。


 まずは足元に存在する重量感知式のトラップ。作動する罠の種類は、仕込み矢、天井トラップ、落とし穴など様々。


 続いて魔力感知型のトラップ。特定の魔力を感知することで発動するもの。例えば、氷の壁が設置されているところに炎の魔法をぶち込むと発動するといった具合だ。非常にいやらしい。


 さらに入れば問答無用で発動するモンスターハウス。記憶に新しい、アキムとの戦いでマリナとメルトが閉じ込められた部屋もモンスターハウスと言える。


 マイナーなもので言うと、転移トラップなども存在する。ダンジョンのどこかにランダムで転移させられるという非常に厄介な存在だ。


 トラップはこんなところかな。


 後は実際に入って空気感なんかを体験した方がいいだろう。


 メルトは水の補給に向かっているので戻り次第ダンジョンに向かうとしよう。


 眼鏡を外すと、黒板は虚空へとその姿を消す。


 いったいどこに消えたのか。細かいことは気にしない。魔法なんてそんなもんだ。


「どうだ、ピイ助。罠は大体理解できたか?」


「うん。知識としては大丈夫だと思う。あとは実際に見て、どういう風に見えるか見てみないとわかんないけど」


「ちなみに、アリジゴクの時はどんな感じに見えるんだ」


「アリジゴクだと、魔法で隠されてる罠全体が赤く見えるよ」


「アリジゴクの本体は変わるのか?」


「うーん、真っ赤になるかな。でも土の中に入ってるとあんまりわかんない」


 危険度に応じて色が変わるのか。


「それじゃあ、ダンジョンの中では少しでも赤くなったら教えてくれ、どこがどんな風に赤いのか。どれくらい赤いのか。初めのうちはそれで罠をしっかり分析しながら進んでいこう」


「うん。わかった」


「最近あたしの出番が少ない気がするんだけど、気のせい?」


「何言ってるんだ、ダンジョンではお前の魔法が頼りなんだぞ」


「え、マジで。なになに、あたし頑張るよ」


「そう言ってくれると思ってたよ。なんてたってダンジョンの中って暗いしジメジメしてるからな。お前の光の魔法があるのとないのとじゃ大違いだ」


「任せなさい。ってか、結局ライトあつかいじゃん!」


「そうは言っても便利なんだから仕方ないだろ。それにアンデット系のモンスターもいる可能性は高いから、それこそ太陽の魔法の出番だぞ」


「それならギリ許すけど。そういえばあたしの進化の魔法ってどうやって使うんだろう?」


「ぶっちゃけ俺も素質を持ってる奴に会ったことないから分らんが、ポチやピイ助が進化してるしそれが効果な気もするんだがな」


「それだと何かほかの魔法と少し違う感じだよね」


「何が違うんだ?」


「他の魔法だと何かしようって時に魔力を使って魔法を発動させるでしょ。でも、進化の魔法って結果としては進化してるけど、あたしが進化させようって何かしてるわけじゃないし、魔力を使ってもないんだよね」


 そういえばそうか。


 魔力の消費については日常的に流入するということも考えられるんだが、魔法の発動に関してはどうだろうか。


 無意識下で発動させている。ってところは考えられなくもないが。


 自分で魔力を使わないことに関しては、俺が疾風を付与した際にはコントロール権を譲ることもできるから、進化自体は対象が自分の魔力で行うことができても不思議ではない。


 そうなると、マリナが対象に対して意識的に発動させる事例が皆無になる。


「ならいっちょ実験してみるか」


 ポーチから二本のポーションを取り出す。


 一本はごくごくありふれた回復用のポーション。


 もう一本はポーションを精製し、効果を増したハイポーション。


 ハイポーションは結構な値段がするがその分効果はお墨付き。


「ポーションとハイポーション?」


「そうだ。お世話にもなったこともあるし馴染み深いもんだ。ところでこれの作り方って知ってるか?」


「薬草を煮詰めて作るって聞いたことはあるけど」


「正解。ポーションは煮詰めて作るだけだから結構シンプルだ。ハイポーションの方は、ポーションを煮詰めつつ、回復の魔法を付与していくんだ」


「へぇ。じゃあ、ハイポーションてポーションと魔法を一緒に使うことになるの?」


「半分正解ってところかな。回復の魔法はあくまでポーション本来が持っている回復能力を向上させるために作用しているだけなんだよ」


「ん?じゃあ、回復魔法じゃなくてもハイポーションは作れるってこと?」


「お、正解だ。俺の魔法はあくまで身体強化っていう限定的な強化だけどな、上位の素質だと強化ってのがある。そいつの魔法だと回復魔法を付与するのと同じ効果が得られるわけだ」


「なるほど?じゃあ、進化の魔法でも似たようなことができるかもってことかな」


「やってみて損はないだろうな。ただ、進化ってところに言及するのであれば、もう少し考えてみようぜ」


 ポーチからもう一本のポーションを取り出す。


「あ、苦いやつだ」


 そう、どっちかというと使用頻度の高いマジックポーション。


「作り方はポーションと同じだ。原料が違うだけ。効果は知っての通り、魔力の回復だな」


「でも、これって回復ポーションとは別なんだよね?」


「そうだな。で、ようやく本題なんだが」


 最後にもう一本とっておきのを取り出す。


 透き通る青いポーション。馬車の肥やしにしても仕方ないのでポーチに放り込んでおいたものだ。


「こいつはエリクサーっていってな。体の傷と魔力の回復を同時に行える霊薬だ。あまり市場にも出回ってないレアものだ」


「あんまり売ってないって高いの?」


「いや、品質を安定させるのが難しくてな量産できないらしいぞ。作り方自体はハイポーションとマジックポーションを混ぜて魔法で処理するらしい」


「なるほど。こうやって並べてみると面白いね」


「で、実験はこのエリクサーを作ってみることだ」


 その後しばらく組合せや分量を調整して試してみると、無事にエリクサーの精製に成功した。


 興味深いのは、マリナが込める魔力の量によって材料の調整が雑でも問題ないという点。


 試しにダンジョン攻略に支障がない程度に多めに魔力を込めてみるとただのポーションを素材にしても精製できた。


 エリクサーがあまり市場に出回っていないのは、ハイポーションとマジックポーションを両方使えば事足りるからあまり需要がないというのはあるのだが、ここは黙っておく。


 得意げなマリナの気分を害する必要もないだろう。

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