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砂漠を超えて

これより第二部開始です。


第二部のタイトルが未定ですが。

「暑い。」


 ラクダの上でマリナがぼやく。


「そりゃそうだろ。砂漠なんだし」


 同じく俺もラクダの上だ。


「マリナさん、暑いのはみんな一緒です。こういうときは関係ないことを考えましょう。例えばアイスとか。ああ、アイスが食べたいです」


 一番厳しそうなのはメルト。エルフって暑さには弱いのな。


 ペット連中は既に伸びている。やはり毛皮と羽毛は厳しいか。ポチは獣人になった方が幾分かましな気もするが。


「ねえ、おじさんなんで砂漠突っ切るの?」


「言ったろ、用事があるのは砂漠の中のオアシスにある町だって」


「他に行く方法ないの?」


「ないから諦めろ」


「そんなぁー」


 俺たちが目指すのはオアシスに栄える、ザーハの町。


 交易の拠点、砂漠を渡る中継地点として様々な地域の物品と情報が集まる町だ。


 わざわざこんなところまで足を運んだのは、ギルドからの依頼だ。


 各地で吸血鬼に関する情報をギルド主導で集めてはいる中、この地域で活動していた諜報員が有益な手がかりを見つけたとの連絡を最後に音信不通に。その後幾度か調査隊を派遣したが、後続も同じく音信不通に。


 そこで現地調査を依頼されたということだ。


 最後の報告内容に関しては、吸血鬼の足取りを追う中で未探索の遺跡を発見し、そこに出入りする集団を発見。


 裏を取るべく追跡を開始した。


 というところで報告が途切れた。


 遺跡の場所、集団の特徴などはギルドに報告が上がっているもののそれ以上の手掛かりはない。


 現地に行って確かめるしかない。


 かれこれ4時間ほど砂漠の中を縦断している。


 さすがに暑い。


 幸いこの辺りはモンスターの数が少なく戦闘になることが少ないのが唯一の救いだ。


 主に生息するモンスターとしてはサソリとトカゲ。


 大きく発達した尻尾に強力な毒液を含むポイズンスコーピオン。


 ただただでかいオオトカゲ。


 トカゲは出てきた瞬間にマリナに引き裂かれたので、ほとんど脅威ではない。


 サソリは硬いし、そこそこ早いしで面倒くさい。


 上手い事甲殻の間に刃を通す必要がある。


「おじさんあとどれくらい?」


「今日は野宿して、日が登る前に移動すればめちゃくちゃ暑くなる前には町に到着できるはずだ。もうすぐ日も落ちるし野宿できそうな場所探すぞ」


「ぴい?」


 少しだけ元気になったぴい助が行ってこようかと声を上げる。


「そいつは助かる。ちょっと周辺お願いできるか?」


「ぴい!」


 沈みゆく太陽を背に青く輝く月に向かいピイ助が飛び立つ。


 砂漠の夜は冷える。灼熱の昼間とは真逆の顔を見せるその環境は旅人を苦しめる。


 星は綺麗なんだがな。


 ピイ助が丁度いい洞窟を発見したらしいので、そこにキャンプを設置する。


 ようやく元気になったらしいポチが見張りをすると張り切っているので、大人しく任せることにするか。


 晩飯はマリナが仕留めたオオトカゲ。


 味はまあ、可もなく不可もなく。ぱさぱさした鳥肉みたいな味だ。


 爬虫類って大体味一緒なんだよな。


 マリナは食べるのは問題ないらしい。


 メルトも少しマシにはなったようで飯は何とか食えている。


「熱の対策はしてきたのですが、甘く見てましたね」


「いや、それ以上の対策は出来んだろ」


 全身を真っ白い布で包み、ラクダの上には巨大な葉っぱで日よけまで装備していた。


 ひと眠りしたら日が昇る前に出発するとしよう。


 眠っていると、毎度のことで既に慣れたがポチが寄り添ってくる。


 布団には潜り込んでくるが、寝袋ではそうはいかないらしく、狼状態で枕元で丸くなっている。


 見張りはどうしたと思えばピイ助が代わりに行ってる。


 まあいいか。温いし。


 

「あ、おじさんおはよう」


 俺が起きると、既にマリナは飯の用意を済ませている。


 そんなに長いこと寝てたか?


「随分早いな」


「うん。師匠とちょっとトレーニングしてきたの」


「ああ、メルトは寝て復活したのか」


「うん。昼間動けないから今動くんだってすごい張り切ってた。おかげでサソリが大量だったよ」


「そんなに食えねえだろ」


「ピイ助が気に入ったみたいだから余ったら頂戴って」


 サソリの死体をじーっと見つめるピイ助。あ、よだれ垂れた。


「余ったらっていうか、俺たちの分は一匹分あれば十分だろ。ほかのは食っていいんじゃないか」


「それもそっか。ピイ助、それ食べていいって」


「ぴいいいいいいいいい!」


 よっぽどうれしいのかがつがつ食っていくピイ助。


 甲殻から中身だけを器用に引きはがして食っていく。


 あの甲殻は使い道ないもんかね。


 毎度のことだが愉快な珍道中を繰り広げ、無事にザーハの町に到着する。


 レンガ造りの建物が立ち並ぶ街並み。


 軒先や広場では交易をおこなう商人たちが活気良く商売を行っている。


 町の中心にはオアシスがあり、街の象徴だ。


 今まで見たことのある街並みとはかなり趣が異なり、なかなか見応えがある。


 暑さで伸びそうなメルト、ポチ、ピイ助は宿に放り込んでおき俺とマリナでギルドに向かうことにする。


 丸い屋根が特徴的なギルドの支部。


 職員に書状を見せると、資料の写しを持ってきてくれた。


「あれ、エルフの方が文官として同行していると伺っていたのですが?」


「暑さで伸びてるんだ、すまない」


「いえ、誤っていただく必要はないですが。よろしければこれを」

 

 そう言って、塗り薬のようなものを手渡してくる。


「これは?」


「この地方の特産品と言いますか。体感温度を下げてくれる塗り薬です。シンプルな魔法薬ですがこれがなかなか侮れないものでして」


「そんな便利なものがあるのか」


 砂漠に入る前に仕入れておけばよかった。


「長いこと冒険者やってるんだが、こんなの初めて見たぞ」


「これが開発されたのは随分最近のことでして。流通もまだあまりしてないんですよ」


 そうなのか。隣ではマリナが早速腕に塗り付けて、すごい。マジヒンヤリ。などとやっている。効果は確からしい。


「誰が作ったんだ?」


「それが分からないんですよね。昨年くらいに旅人の方がふらっと訪れて、作り方だけ伝授していったそうなんですよ。眉唾だったんですけど大した素材が必要なものでもないので作ってみたらこの通りという訳で」


「へえ。不思議な話だ。まあ、便利なものならそれでいいのか」


「重宝しているのは事実なのでそのあたりはみなさんあまり気にしてないですね」


 まあ、冒険者なんてそんなもんだ。


「資料は宿に届けるとしてちょっくら店を見て回るとするか」


「お、ショッピング!いくいく」


「俺と一緒に見て回っても、別にプレゼントはしないからな」


「ええー、いいんじゃん。けちぃー」


 頬を膨らませてぶー垂れるマリナ。誰がけちだ。


「あ、そうだ!」


 何か思いついたらしく少し俺の前に出る。


「ねぇ、おじさん。買ってぇ?」


 振り向きざまにしなを作っておねだり。どこで覚えてきやがった。


「そんなんじゃきかねえけど、ちょっとくらいなら買ってやる」


 あれ、気づいたら折れてる。


「やりぃー!」


 俺はいつからこんなにちょろくなったんだ。

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