表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/49

吸血鬼 アキム―4


 復活したマリナを見ていると、さっき心配してたのはなんだったんだろうと思う。


 急に元気になったかと思えば、吸血鬼を一匹素手で消滅させてた。


 いや、素手じゃなくて魔法なんだが、傍目には殴り飛ばして、蹴り砕いたようにしか見えない。服に付いた灰を手で払いながら、アキムに対峙するマリナ。


 俺も戦わないとな。


 しかし、さっきマリナに魔力流しすぎたせいで魔力の残量が心許無い。


 ポーションも使い切っちまったしな。


 継戦を重視するなら疾風は使えない。身体強化だけで乗り切るしかないか。


「貴様、その魔法は太陽か」


「せーいかーい!吸血鬼には太陽。これはもう常識っしょ」


 ふふん。と胸を張るマリナ。こいつが頼もしく思える日が来るとは予想外だが。それにしてもさっきからアキムが随分と大人しいな。仲間が一人やられたにしては余裕が過ぎる。


「クッフッフッフ。そうか。太陽か。よもや貴様のような者がその力を使えるとは思わなかった。ゲルト!いつまで遊んでいる」


 その声が届いたゲルトはポチを弾き飛ばし、即座にアキムの元に現れる。


「ポチ、大丈夫か」


「わふ」


 かなり体力を消耗している様子だ。全身に細かい傷はあるが流血というほどのものは無い。


 なりたてとはいえ吸血鬼相手に一人でここまで善戦できたか。立派になったな。


「こいつら倒したら美味い飯たらふく食わせてやるからな」


「わん!」


 尻尾を振るポチ。まだ余裕ありそうだな。


 人数的には四対二。とはいえあんまり消耗してなさそうなアキムと少し手負いのゲルトに対して、満身創痍のメルト、魔力切れ寸前の俺、疲れ気味のポチ、復活して元気なマリナ。


 戦力的にはトントンか。


 武器を構え、臨戦態勢を整える。そんな中マリナが俺の武器に触れる。


「シャインエンチャント」


 マリナが魔法を使うと斧槍が眩いは光を放ち始める。魔法の名前から察すると武器に属性を付与したってことだろうが。これ吸血鬼にとっては致命傷になるんじゃないか。


 前言撤回だ。これなら負ける気がしない。


 メルトは援護に回り、三人で突撃する。


 俺がアキムを抑え、マリナとポチがゲルトの撃破。その後アキムを挟撃するという作戦だ。


「武器が多少光ったところで!」


「ならさっきみたいに一発喰らってみろ!」


 アキムも魔法の本質には気づいているのだろう。刃には決して触れようとはしない。攻めやすくはなったが決定打に欠けるのは相変わらずだ。


 しかし俺の目的はあくまで時間稼ぎだ。問題ない。


「貴様、何か勘違いをしていないか」


「何のことだ」


「我が、己の弱点を克服しないとでも思ったか」


 魔力を練り上げるアキム。


 弱点対策。

 

 何をする気かは知らんが、やらせん!


 魔力を集中させようとする両腕に狙いを絞り、攻撃を繰り出していく。


「小癪な!」


「なんとでも言え!」


 俺の刃がアキムの腕を捉えた。イケル!


 刃が腕に達する瞬間。


「ルインダークネス」


 アキムの腕が闇に包まれ、刃を受け止める。同時に、刃に纏った光が闇と相殺される。


 闇の魔法。


 光の魔法に並ぶマイナー魔法。ちなみに太陽なんて素質はほぼ伝説の存在と言っていい。どんどんレアキャラに片足を突っ込んでいくマリナ。


 魔法は相反する属性は互いに打ち消し合う。


 しかし、自分で発生させることのできるマリナはともかく、使い切りの俺では相性が悪すぎる。


 ここは疾風を使って押し切りたいところだが、もって3分。仕留めきれる保証がない以上迂闊には出せない。


 丁度戦局が動く。


 ポチとの連携で的確にゲルトを削り、大きく態勢を崩させた。


 ポチを足にして跳躍。


 魔法を発動させた両腕でゲルトの頭部を掴むとともに、勢いを乗せた膝蹴りを叩き込む。


「シャイニングウィザード!」


 許容量を超えた太陽の光によりゲルトの体は灰燼に帰す。


 閃光の如き、鮮やかな膝蹴り。


 魔法使いは絶対に膝蹴りで勝負を決めないと思うが、突っ込んだら負けなんだろうか。


 あいつは魔法使いじゃなくて格闘家の方が向いてると思う。


 とはいえこれで三体一。


「さあ、アキム。そろそろ年貢の納め時だ」


「ローナに続きゲルトまで屠られたか。貴様らには驚かされるばかりだな」


「あんたのせいでこの世界に来てから散々苦労したんだからしっかり仕返しさせてもらうからね」


 マリナの言葉でアキムの雰囲気が一変する。


「貴様、異世界からの来訪者か」


「そうだけど」


「クッフッフッフ。そうか、貴様か。貴様がそうだったのか。まさかとは思ったが、漸く見つけたぞ」


「見つけただ?何のことだ」


「知れたことよ。その娘の召喚を行ったのは我らヴァンパイア一族ということだ」


 こんなところで衝撃の事実を発表しやがった。

 

「貴様が持つその太陽の素質。それこそ我らが悲願を達成するために不可欠なもの。世界中から探すのは骨が折れるのでな。召喚させてもらった」


 そんな下らない理由でマリナをこの世界に召喚したって言うのか。


 自分たちの願望のためだけに。


 許せん。


「あれもこれも全部あんたのせいってことか!」


 当の本人も切れた。


「貴様らは皆殺しにするつもりだったが、予定変更だ。貴様だけは生かしておく。感謝するんだな」


「うっさい!」

 

 両腕に光を宿しアキムに殴り掛かるマリナ。


「落ち着きやがれ!そいつはさっきまでの相手とは次元が違う!」


 俺の忠告など聞こえんとばかりに、狂犬のように攻撃を繰り出していく。


 完全に頭に血が登ってる。


 だが、それを止める権利は俺にはない。むしろ気持ちは同じだ。あいつは許さねえ。


 とはいえ今のマリナではアキムと身体能力での差が大きすぎる。必殺の一撃も当たらなければ意味がない。


 暴れるマリナを引きはがし、一旦距離をとる。


「手間かけさせやがて」


「離してよ!」


 話を全く聞こうとしないマリナ。

 

 正面から目を見据え、一旦視界を遮り意識を俺に集中させる。

 

 顔赤くして照れるんじゃねえ。こっちも恥ずかしいわ。


「いいか、今から強化魔法かけてやる。その代わり俺はほとんど戦えない。お前が一人でやらなきゃならない。できるか」


「うん。大丈夫」


「それが聞ければ上等だ。身体強化、疾風」


 最後に残ったなけなしの魔力を使ってマリナを無理くり強化する。おかげで俺は自分に疾風はもう掛けられない。せいぜい足止めくらいしかできないが、それで十分だろう。


「よし、行くぞ!」


「うん!」


 高速で駆ける俺とマリナ。こいつも随分慣れてきたんじゃないか。最初のころは身体強化での普段とのギャップに対処できてなかったが、今ではしっかり対応できている。


 しかもここに来て、疾風を纏ってもちゃんと追従できているんだからすごいもんだ。


 俺たち二人の攻撃にはアキムも手を焼くらしく、致命傷となるマリナの攻撃は的確に相殺していくが、徐々に俺の攻撃が通り始める。


 毛先を削ぐ程度だった攻撃が皮膚を傷つけるようになる。


 傷つけた傍から回復していくが、その速度を攻撃が上回っていく。


「シャインエンチャント!」

 

 絶妙なタイミングで俺の槍に光が灯り、アキムの左腕を切り落とす。


 ようやくまともな一撃が入った。


 続くマリナの蹴りと俺の斬撃で両脚を失ったアキム。

 

 地を這うことしかできない状態。


「それじゃ、なんであたしをこの世界に召喚したのかそこんとこしっかり説明してもらうかんね」


 荒い息を繰り返すアキム。


「断る。我はこのまま滅びる身。わざわざ貴様らに教える道理はないであろう」


「なら選択肢をやる。このまま一撃で殺すのと、苦痛を味わいながら生きていたことを後悔しながら死ぬのどっちがいい」


「好きにするがいい。何をされようとも我は何も答えん」


 …そうか。


「確実に後悔するがいいんだな」


「ふん。くどい」


 忠告はしたからな。


 封印の魔法陣をアキムに刻み、その能力を封じる。これで逃げることはできない。


 拷問は俺の趣味じゃない。


 俺の趣味ではない。


 だが、世間は広い。拷問が趣味の奴も存在する。


 専門家に任せるとしよう。


「ならお前は教会に引き渡すとしよう。俺の知り合いのプリーストを紹介してやるからせいぜい懺悔するんだな」


 アキムが顔を青くするが、もう遅い。


 ミーシャは神に仇名す存在が死ぬほど嫌いだからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ