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男の娘

何故か獣人化という現象を引き起こしたポチ。


 唖然とする俺たちを他所に本人はいたって呑気だ。またもや獣人の姿に戻り、ベッドでゴロゴロしている。


「そもそもだ。ポチって雄だったよな?」


「うん。雄だよ」


「でも、あれどっからどう見ても女の子だろ」


「だよね」


「おい、ポチ、ちょっとこっちこい」


 ぽてぽて近寄ってくるポチのローブを剥ぎ、よくよく観察してみると。


 あ、ちゃんとついてるわ。


 女の子かと思ったら男の子でした。


 随分かわいい顔してるから勘違いしちまった。


 獣人部分のパーツを見ると確かにポチの毛並みだし、面影はある。


「なんで獣人化なんかできるようになったんだろうな」


「んとね、ポチね、みんなとおしゃべりしたかった」


 なんだこいつ。めちゃくちゃかわいいぞ。


 一人称はポチらしい。


 前から魔法が使えそうな雰囲気はあったがまさかこんな魔法が使えるとはな。


 しかしこの見た目5歳くらいの状態だと完全に俺の子供として見られるんじゃないか。結婚もしてないんだが。


「そういえばマリナのことはお姉ちゃんて言ってるが普段からそう言ってるのか?」


「うん。おねえちゃん」


 そう言ってマリナを指さす。


「じゃあ、俺は?」


「ごしゅじんさま」


 俺はご主人様らしい。


 メルトは帰った時に聞いてみよう。


「ちょっと待ってちょっと待て、お兄さんじゃなくてポチさん。ポチの飼い主ってあたしだよね?」


 ん?と小首を傾げる。


「ごしゅじんさま、ごはんくれる。だからごしゅじんさま。おねえちゃんも、ごしゅじんさまにごはんもらってる。ポチといっしょだからおねえちゃん」


 ポチの中では俺がピラミッドの頂点らしい。悪い気はしないが、マリナはすげえ複雑そうな顔をしている。


 しかしこうなると、服もなにか考えないとまずいな。


 首輪はサイズの可変式の奴を作ってもらったが、似たような服は作れるもんだろうか。


 ちょっと、魔道具屋にでも相談してみるか。


「ぴい!」


 すると丁度ピイ助が窓から部屋に入ってくる。


 こいつは一人で何してたんだろうか。


 何の躊躇もなく、ポチの頭の上に陣取る。さすがにモンスター同士判るもんなのか。


「こいつも獣人化したりしないよな?」


「ぴいー」


「ピイ助はまだできないって」


 まだってことはそのうちできるようになるのかよ。というか、ポチが完全に通訳になっている。


「お前もしかして野生のモンスターと会話できたりする?」


「おはなしはできるけど、そとのモンスターはあんまりゆうこときいてくれないよ」


 説得までは難しいってことか。そこまでうまくはいかないか。だが、ピイ助を頭にのせてるあたり筋力は元のままな気がするが。


「ポチ、ちょっと実験だ。ほれ、パンチしてみ」


 俺が手のひらを広げると、うんと頷き構える。


「えい!」


 ドンと衝撃が届く。おお、こいつはすげえ。威力は申し分ない。おそらく、獣人形態と狼状態でステータスは同じと見ていいだろう。これってすごいんじゃないか?


 褒めて頭をなでてやると気持ちよさそうに目を細める。このへんは犬っぽいな。狼だけどな。


 しばらくポチを観察し、現状をまとめておく。


 ・狼から獣人への変化は魔法を使用する。獣人化している状態では魔力を消費する。現在の魔力総量で丸一日持続可能。かなり燃費が良い。


 ・狼と獣人状態でステータスは共通。


 ・獣人状態では会話可能。人型になることで武器が使える。得意かどうかは置いておく。体重はそれぞれの形態に応じて変化する。


 ・味覚、嗅覚は変化する。聴覚、視覚は大きな変化はなし。触角はそもそも手の形状が異なる。


 概ねこんなところだ。


 「あ、かえってきた」


 ポチが鼻をすんすんならしながら、扉の方に向かう。帰ってきたってメルトか?俺たちでは気配も捕まえられなかったが、さすがは狼。鼻が利くんだろう。


 しばらくするとノックとともにメルトが部屋に入ってくる。


「アート様、いらっしゃいま」


「ししょー!」


 がばっとメルトに抱き着くポチ。あ、メルトのことは師匠って呼ぶんだ。


「あら、ポチさんずいぶんかわいくなりましたね」


「なんでメルトはそんなにあっさり受け入れられるんだよ」


「魔力の質が同じなので正体はすぐに分かりますよ。ただ、驚いているのは否定しませんが」


 あんまり驚いてるようには見えないんだが。


 いや、ポチを抱き上げてあっちこっち触ったり匂いを嗅いだり、興味深々だな。


 しばらくはそのままにしおくか。


「よし、マリナ装備とりに行くぞ」


「師匠は、しばらくそのままにしておいた方がよさそうだね」


「だな。メルト、遊び終わったらそいつの服見繕ってやってくれ」


「別に遊んでる訳では。まあ、構いませんが」


 随分楽しそうなメルトとポチを部屋に置いて、俺たちは早速鍛冶屋に向かった。


「あたしの装備が新しくなるんだっけ?」


「ベースは前の奴なんだがな。性能は格段に良くなるはずだ」


「楽しみだねぇー」


 そして、店主が店の奥から物を持ってくる。


 まずは鎧。


 体の急所を守るように配置された女王蜂の外殻。黒い装甲は光を反射し、艶やかに光を放つ。


 腰と肩には従来通りシルバーベアの毛皮を用いたクロークが装備されており、裏地にはレッドスネークの皮が用いられ赤い色彩が目を引く。


 全体的にレッドスネークの素材が主張しているおかげで印象としては赤と黒。差し色に銀といった感じだ。


 そして弓。


 こいつも赤い。剛性を高める為か、リムの部分はかなり太くなっている。マリナの能力も上がっているし丁度いいか。


 これが今回の装備。


「どうだ気に入ったか?」


「うんうん。赤っていうのがいいよね。あたしの炎の魔法にもピッタリだし。これで炎の弓兵 真理奈ってわけです」


「弓も魔法の通りを良くしてあるから、後で試しておいてくれ」


 試し打ちがてら簡単なクエストを受けにギルドに向かう。


 今度はメルトの装備も整えてやった方がいいかもしれんな。修復しながら使っているから結構頑丈なんだがどうにもガタは来てしまうし。


 酒場で騒いでた冒険者は今日はいないようだ。


 ちょうどいいクエストは。


「おじさん、これでどうかな?」


 マリナが差し出してきたのは、シンプルな討伐依頼。

 

 ラージディアの討伐。


 まあ、でかい鹿だな。


 基本的に人間にはそこまで害のあるモンスターでもないのだが、畑に出没し作物を荒らすらしい。


 仕方ないか。


 クエストを受注し、現場へと向かう。


 依頼主である農家の話では、鹿が出るようになったのはここ数週間。


 概ね三日おきに現れては、作物を食って去っていく。最初のうちは夜中にしか現れなかったが、最近では昼夜を問わず現れる。直近では、農作業中に現れて、むしゃむしゃと我が物顔で野菜を食ったらしい。


「完全に自分の縄張りだと思ってるんだな」


「やはりそうなんですかね。我々では退治する力もありませんし、現れても見ているしかできませんから、調子に乗っているのでしょう」


「そのうち被害が出るとは限らないし、被害の芽は未然に摘んでおくとするか」


「冒険者様、ありがとうございます。おそらく本日中には現れるかと思います。お茶くらいしかご用意できませんがしばらくはゆっくりしてくださいませ」


 家に招かれたが、入れ違いになっても仕方ないので、外にテーブルとイスを用意して貰い、マリナと二人でただ、待つ。


「暇、だね」


「ひまだな」


 かれこれ二時間。茶を飲み座ってるだけの時間が流れる。


 確かに茶は美味いんだが。いかんせんやることがない。


 マリナは小手の機構を色々弄くり試していたが、それも遂にネタが尽きた。


 そこら辺の石ころをスリンガーにセットし、ひゅんひゅん飛ばしている。かなりの速度で射出されるがモンスターに効果があるかは微妙なラインだな。投げナイフとか飛ばせば効果あるかもしれんが。


 と、そろそろ腐り始めたころにお目当てのヒュージディアが姿を現した。


 事前に聞いていた通り、我が物顔で畑に侵入してきたそいつは俺たちに一瞥くれると何事もなかったように食事を始めようとする。


「全然ビビりもしねえ。ちょっとお灸をすえに行くか」


「はーい」


 気の抜けた返事を返してくるマリナとともに鹿の前まで移動する。


 10メルくらいの距離まで近づくと、鬱陶しそうに警戒し始める。


 低いうなり声を上げて、前足で地面を蹴る。そのまま突進してくる気か?


 一歩近づくと頭を下げ更に警戒の色を強める。逃げ出すでもなくあくまで俺たちを排除するつもりらしい。


 隣で弓を構えるマリナ。


 それを合図に鹿は突っ込んでくる。


 射線を確保しつつ、突進を受け止めると同時にマリナも矢を放つ。


 炎を纏った矢は、放たれると同時に羽から炎を吹き出し更に加速する。


 赤い軌跡を描き鹿を貫く矢。


 胴体に空いた風穴からは炎が噴き出し、一瞬でその命を刈り取る。


「うわ、思ったよりすごいことになった」


 当の本人が一番驚いているらしい。


 弓の威力は空気抵抗により大きく減衰するが、炎の魔法で無理やり加速させることでその欠点を克服した形になるんだろうか。


 ともあれ、弓の1射がここまでの威力になるとは。


 これは期待できそうだ。


 依頼主にはその場で報告しこのクエストは完了だ。


 ギルドの依頼には2パターンあり、


 1つは前払い。予め依頼と一緒にギルドに報酬を預けておく。


 この場合は依頼者が依頼さえ出せば勝手にクエストが完了するので、依頼側としては楽だ。逆に討伐系の依頼だと、ギルドに報告し証拠を提出する必要があるので冒険者側からすると少しメンドクサイ。


 もう1つは後払い。今回はこのパターンだ。

 

 現地で討伐を行う場合や、採集物の品質などを重視する場合にはこちらが推奨される。ギルドには以来の発行の際に手数料が発生する仕組みになっている。


 そんな感じでギルドの仕組みをマリナに教えつつ、宿に戻ると、丁度メルトとポチが連れ立って戻ってくる。


 メルトと手をつなぐポチにはしっかりと服が着せてある。なぜか女もののワンピースだが。


 本人も満更でもなさそうなので別にいいんだが。


 男の娘。


 そのな言葉がなぜか脳裏に浮かぶ。新しい概念を理解した気がする。


あとがき



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