犬の少女
犬成分多め。
昨日の疲れもあり、爆睡。
気づいたら普通に翌朝になっていた。
起きるとなぜかポチがベッドに潜り込んでいる。
ダイアウルフに進化してから毛並みが更によくなり、モフモフ度が上昇している。
仮にステータスにモフモフ度が存在するとしたら、出会った当初が100、進化前が200、進化後は350といった感じだ。
非常に柔らかい。
「お前は布団としても生きていけそうだな」
「わふー」
満更でもないらしい。
しばらく撫でていると、部屋の扉がノックされる。
「おじさん、起きてるー?ポチお部屋にいないかな?」
「おう、気づいたらこっちのベッドに潜り込んでたぞ」
「やっぱりそっち行ってたか。いるならいいんだけどね。先にご飯食べてるね」
「あいよー」
というかなんでこいつは俺のところに来てるんだ?
「もしかして、マリナって寝相悪いのか?」
「わふ」
この反応はYESということか。
そうか、一緒に寝てたら蹴られると。
そいつはご愁傷様だ。
「まあ、俺のところでよかったらいつでもきていいぞ」
「わふ!」
尻尾をぶんぶん振る。そんなにうれしいのか。というかマリナと寝たくないのか。どんだけ寝相悪いんだ。
とはいえ腹は減ってるらしくそのままマリナがいる階下の方へと降りていく。現金な奴だな。
久々の休日を満喫するべく、街をプラプラしているといろいろ珍しいものが目に付く。
中でも目を引かれたのは、鉄でできた小さなゴーレム。
店先で接客をしている様子はなかなか不思議だな。
「イラッシャイマセ、オサガシノモノハゴザイマスカ」
「いや、冷やかしだ。気にしないでくれ」
「ソウデスカ、アタタメタラナニカカッテイキマスカ?」
そう言って、口からボウっと火を噴く。
意外とおっかない。
温められたくはないので、消耗品を少し購入しておく。
ゴーレム自体は生物ではないので、モンスターという括りではない。
ダンジョンの奥地にいる個体に関しては自然の魔力が悪さした関係で、人を襲うようになったものの存在するため一概にはモンスターでは無いとも言えないのが難しいところではある。
鉄鉱石の産出が多いこの地域ならではのアイアンゴーレムではあるが、家に一体くらいあっても便利かもしれん。
ちなみに値段を聞いたらぶったまげる値段を言われた。
自分で作れでもしない限り、家に置いておくのは不可能か。
残念だ。
後は使えそうなものとしては、ボウガンくらいか。
弓ではなく弩という括りになるが、材料の強度を確保するためにある程度金属は必須らしい。ちなみにマリナの腕甲には追加機能としてこれに似た機構のスリンガーを追加しておいた。
まあ、要するにパチンコなんだが。ワイヤーと組み合わせると立体軌道もできるようになるらしいが、なかなか練度は必要そうだ。メルトにでも訓練してもらうのが良いだろう。
一個ぐらい馬車に入れといてもいいかもしれん。マリナとメルトは使わないだろうがベルなら使い道もあるんじゃないか。
とりあえず購入。
それから坑道に入ることになるからツルハシをいくつか仕入れておく。
買い物はこんなもんでいいだろう。
仕入れもそこそこに街をぶらついていると、ドンっと何かがぶつかってくる。
「うおっ」「きゃっ」
そこにいたのは獣人の少女。
犬科の耳と尻尾。狼かもしれないけど。判別はできない。
恰好はお世辞にも綺麗とは言えない。どちらかと言うとみすぼらしい方だ。
「悪いな、怪我ないか?」
「うん」
「どうしたんだ、そんなに慌てて」
「たすけ…て」
少女はそんな言葉を絞りだし気を失ってしまう。
なんでまたこんなことになるんだ。
放っておく訳にも行かないしとりあえず宿に運ぶしかないか。
小さな体を抱き上げる。軽い。
あんまりちゃんと飯食えてないのか?とりあえず食いものと風呂くらいは用意しておいてから話を聞くとしようか。
しかし、これはヘタすると奴隷商に目を付けられないとも限らないか。
奴隷制度はこの地域ではかなり一般的なようだ。寄り付きこそしなかったが、奴隷市も普通にあるらしい。
奴隷自体が悪い制度という訳でもないんだが、この子みたいに健康状態の悪い子は商品価値が低くあまり良い扱いはされない。それは不幸なことだ。
宿に戻りしばらく様子を見ていると、少女が目を覚ます。
「お、目が覚めたか。大丈夫か自分のこと分るか?」
コクリと少女が頷く。
「よし、それじゃあ話を聞く前に飯でも食おう。お腹すいてるだろ」
俺がプレートに乗ったランチを差し出すと、おずおずとそれを受け取るが食べようとはせずに、俺とプレートとを交互に見る。
頷いてやると、パッと顔を輝かせ掻き込み初めた。フォークでがつがつ食っていくが、手づかみではないだけ少しは躾ができているらしい。
ものの数分で飯を平らげる。
やっぱり腹は減ってたんだな。
「美味かったか?」
「うん。こんなにおいしいのは初めて。ありがとうございます」
「どういたしまして。それより、まずは風呂に入ってこい。一人で入れるか?」
「入れる」
「じゃあ、そこに風呂あるから入ってこい」
俺が風呂場を指さすと、服をポンポンと脱ぎ捨て、風呂場へとかけていく。服といってもほとんどボロのローブしか身に着けてなかったが。なぜか首輪はそのままで行ってしまう。
恥じらいなんいう年齢でもないんだろうが、あまりにも気にしなさすぎではないだろうか。俺もいい大人だし、少女相手に欲情する訳でもないから問題ないといえば問題ないが。
こんなところマリナにでも見られたらどんな誤解をされるか。
あいつ結構思い込み激しいし。
「おじさんいるー??」
そんなことを考えていたら早速現れた。タイミングがいいのか悪いのか。居留守してみるか。
息を殺して待っていると。
「あれ?かえって来たと思ってたんだけどなぁ。気のせいかな」
お、案外簡単に諦めてくれた。
マリナが立ち去ると同時に少女が風呂から出てくる。こっちはこっちで案の定びしょ濡れのまま上がってくるが。
「ほれ、体拭いてやるからこっちこい」
俺がタオルを構えると飛び込んでくる。なんかこの感じポチに似てるな。
耳と尻尾を見る限り、犬か狼の獣人みたいだしそんなに間違ってはないんだろうが。
さすがに服を着せない訳にもいかないが、この子が来てたのはちょっとぼろいしな。とりあえずローブのあまりはあるから着せておくとしようか。
「なーんてね!いるのは分ってるんだ……よ?」
その瞬間に扉が開け放たれた。
マリナの視線に移るのは俺が裸の幼女にローブを着せようと滲みよる光景。
うん。これはまずいな。
わなわなと震えるマリナの拳。
俺が言い訳の言葉をひり出そうとした瞬間、少女がマリナに抱き着く。
「おねえちゃん」
は?
「うん?お姉ちゃん?」
当のマリナもきょとんとしている。
「え、お前の妹なの?」
もちろんお俺もきょとんとしてる。
「え、ち、違うよ?私は妹居ないし」
困惑する俺たちを他所に少女はマリナに頬ずりを続ける。
さてこの状況どうしたもんか。
まずは話を聞かないと始まらないか。
「お嬢ちゃん、まずはこっち来て話をしよう」
「うん」
とりあえず、マリナと少女を部屋に招き入れる。あんまり廊下で騒ぐと他のお客さんにも迷惑になりそうだしな。
「じゃあ、まずは名前教えてくれるかな?」
マリナが優しく問いかけると、少女は一言。
「ポチ」
ポチか。うちのペットにも同じ名前のがいるが変な偶然だな。
「ポチちゃんかー。いい名前だね。あたしの相棒もポチっていう狼なんだよ?」
「うん。知ってるよ」
おおかた、俺たちが街でポチを連れてるのを見たってところか。
だからお姉ちゃんなのか?
「それで、ポチちゃんはどうして街で慌てて走ってたんだ?」
「おねえちゃんとはぐれてちゃって、探してたの」
ああ、それで似てるマリナを見つけて飛びついたのか。ってことは迷子か。奴隷じゃなくて一安心だ。
「よし、それじゃあ、本当のお姉ちゃんを一緒に探そうか」
しかし、少女は首を横に振る。
「どうした、喧嘩でもしたのか?」
首を振る。
「お姉ちゃんに会いたいんだろ?」
今度は縦に振る。
「じゃあ、探さないとダメだろ?」
今度は横に振る。
会いたいけど、探したくはない。でも喧嘩したわけでもない。どういうことだ?
「だって、おねえちゃんここにいるもん」
そう言ってマリナを指さす。
そんなにマリナに似てるのか?
「あたしはポチちゃんのお姉ちゃんじゃないよ?そんなに似てるのかな?」
「違うの。おねえちゃんは本当のおねえちゃんじゃないけど、おねえちゃんなの」
おーっと、哲学。
困惑する俺たちの様子を確認すると、ポチちゃんはポンと手を打ち。魔力を練る。
この年で魔法使えるのか。すごいな。でも何する気だろう。
ポンっと音を立て、その体が煙に包まれる。
そして、煙が晴れたところには、ポチが突っ立っている。
あれ?
なんだこれ。
「なあ、ポチ君よ。念のために聞いておくが、さっきのポチちゃんてお前じゃないよな?」
首を横に振るポチ。
お前かよ。
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