オニスズメ
「俺言ったよな。なんかあったら起こせって」
説教タイムだ。
「ごめんなざい」
泣くなよ。やりづれえな。
「アートさん、マリナさんも反省していますしそのあたりで…」
「分ってるよ。ほれ、顔上げろ。説教はここまでだ。お前が無事ならそれでいいんだ」
「うん。ありがとう。できるだけ心配かけないようにするよ」
「よーし、仕切り直して飯にするか。で、こいつを料理すればいいのか?」
「ぴぃ!?」
そう、マリナの説教は済んだが、もう一つの厄介ごとはこいつだ。マリナのおかげで助かったらしいオニスズメ。テイムの条件はよくわからんがこの懐き具合から察するにおそらくテイム済みだろう。
「ぴい助食べちゃだめだよ!?」
「早速名前つけてんじゃねえ」
さっきまで泣いていたかと思ば、今度はオニスズメを庇うようにひしっと抱き着く。そのまま頬摺りを始める。あれはただ抱き着いてるだけじゃないのか?
「なあ、マリナそれ気持いいのか?」
「うん。羽がフカフカなんだよ。しかも暖かいし」
「どれどれ」
俺が手を伸ばし触ろうとすると、スズメいや、ぴい助が怯えたように一鳴きする。
「大丈夫だ。食わねえからさ」
そういうと安心したのか、頭を差し出してくる。おお、これは布団に匹敵する気持ちよさ。癖になりそう。
しばらくモフモフの触感を堪能したところで当初の目的を思い出す。
飯の準備をするんだった。
「やっぱりついてくるんだな。」
飯も食い終わり再び馬車で移動すると、その上をぴい助が飛んで追従してくる。
「これってポチと同じでテイムできたってことなんだよねぇ。仲間が増えたね!」
「でもぴい助ってオニスズメだろ。戦力にはならないぞ」
「いいじゃん。かわいいし。それにピイ助の上に乗って飛べるよ?」
弓を使うマリナには相性がいいのかもしれんが。こいつそのうちモンスター牧場でも開くつもりじゃないだろうな。
森を駆けるにはポチ。空を飛ぶのはぴい助。次は水かな。って俺まで何考えてんだ。
この調子なら後数時間もすればホールイートに到着できそうだが、ぴい助はこのサイズだと街に入れられないぞ。
「なあ、ぴい助。お前小さくなれないかのか」
「ピイー……」
どうやら無理らしい。
「そうなるとお前を一緒には連れていけないなぁ。やっぱり食うしかないか」
「ぴい!?!?!?!」
その瞬間、ピイ助が必死に魔力を練り、魔法を発動させると体積がみるみる萎んでいき、普通の鳥サイズになる。
その変化に一番驚いているのは本人らしく、辺りをきょろきょろし、自分の体をまじまじと見て、こちらを見る。
「お前すごいな。マジでできるとは思ってなかったぞ」
「ぴい!」
生物は生命の危機に瀕すると何かしら力を発揮することがあるが、そういうことなのか?
「あれ、ぴい助がちっちゃくなってる!」
荷台から顔を出したマリナがその変化に気づいた。
「なんかこいつ魔法使えるみたいだぞ」
「おおー、さすがあたしが見込んだだけのことはあるねぇ。こっちおいでー。って重!もしかして重さはそのままなのかな」
「変化するのは体積だけか。元が鳥だからそこまでの重さはないだろうからなんとかなるんじゃないか」
「そうだね、持てなくはないけど20キロくらいかな?ポチの上に乗っておいてもらう方がいいかな」
「ワン」「ぴい」
ペット連中は声を合わせ、しばらく定位置を探す。お互いにああでもない、こうでもないと微調整を繰り返したところで良いところが見つかったらしい。
丁度ポチの耳と耳の間に収まる形でぴい助が乗っかる。
満足そうな顔の二匹。それでいいのか。
「かわいい!狼とスズメのコラボ。斬新だね」
二匹まとめてポチ助だな。
ここに新モンスターが誕生した。
そんなアホなことを繰り返しながら平和な旅路が続き、ようやく目的地のホールイートに到着した。
「ここも結構おっきい街だね。しかもなんかゴツイ」
「いままで見たところは結構、石が主体だったからな。ここは近くで鉄の産出量が多いからその分たくさん使ってるんだろう」
鉄鋼街とも称される鋼の街。一説にはドラゴンに襲われても耐えることができるとか。
黒鉄の壮大な門を潜ると、街並みにも結構な量の鉄が使われている。建物の表面を覆うように各所に装備される鉄の補強材や手すりやベンチにも色々使われている。
「若干懐かしいような?」
「ニホンに似てるってことか?」
「うーんデザインはもちろん違うんだけど、材料が似てるのかな」
「随分豊かなんだな。ソウイチも言ってたが電気ってのがあるんだろ?」
「そういえば、こっちに来てからは見たことないなあ。魔力が使えるから電気要らないんだろうね」
「大体のことは何とかなるしな。その点では魔力も電気の使う力が違うだけで発想は一緒か」
ちなみに、街に来る前に判明したがぴい助の魔法はポチにも有効らしい。今は完全に大型の犬サイズになっている。
これならモンスターが駄目な街や村でも普通に連れ歩ける。
宿の準備だけしておき早速情報収集にギルドへ向かう道すがら気になる店を見つけた。
「いらっしゃいませ。おや、冒険者の方ですかな」
「ああ、商人じゃなくてすまんな。ここは宝石を扱っているのか」
「ええ。御覧の通り。なにかお探しで?」
恰幅の良い店主に迎えられる。巻きひげのいかにも金持ってますという風情。顔に張り付いた商売笑顔。やり手ではあるだろうが、そこまで悪人という風ではない。
「どうやらこのあたりで産出されているらしいんでが、こういう石は心当たりがあるか?」
「おや、これはアメジストですね。少し失礼」
俺が宝玉の欠片を手渡すとモノクルで鑑定を始める。
「なかなか上室な品ですな。しかし、今まで見たことのある石とは少し特徴が異なりますな。旦那、これはどちらで?」
「いや、俺もたまたま手に入れてな。訳あってそいつの産地を調べてるんだが」
「お隠しになるのであればあえて事情は聞きますまい。そういえば」
そして店の奥から木箱を取り出してくる。
「ん?そいつは」
「これは先日、冒険者から買い取った原石ですな。どうにも組成が似ているような気がしましたので」
木箱から取り出されたのは、少し青みの強いアメジストだ。一見するとそこまで似ているようには思えないが。
「さて、少し実験をしましょうか。旦那、失礼ですが手持ちに余裕はありますかな?」
「多少はあるが。その石ころを買えっていうのか」
「ご明察。おそらくこの原石に魔力を込めると、お手持ちの宝石と同じ性質になると思います。あくまで実験ですがね。無理にとは言いませんが、悪いようには致しませんよ」
ニヤっと笑う店主。足元を見てくる訳ではないんだが、向こうにすれば不良在庫を適当にうっぱらえるいい機会ってことか。
「いいだろう。買い取ってやる。その代わり、その石に関する情報は持ってるだけ渡してもらうぞ」
「よろしい。商談成立ですな」
店主が原石に紋様を刻む。宝石に魔力を通すにはこれが手っ取り早い。刻まれた紋様に俺が魔力を注ぎ込むと、その色が赤みを帯びていき例の宝玉と同じ輝きを放つ。
「実験成功。というところですな。この原石は冒険者の方が持ち込んだものですので、詳細までは不明ですがここから北西に進んだ古い鉱山で見つけたそうです」
地図に場所を記してもらう。
「しかし、ここは既に採掘は行っていないだろう?」
「山ごもりもとい、鉱山籠りでレベル上げを行っていた際に見つけたようですよ。わざわざあんな危険なところに宝石を掘りに行くのもバカらしいので放置されていますがね」
採算が合わないってところか。
「それと、その原石には簡単な紋様を記しましたのでアクセサリーにでも加工しましょうか。おまけですな」
「随分太っ腹じゃないか」
「はっはっは、これくらいしておきませんと後ろのお嬢さんに恨まれそうですからな」
あ、マリナのことすっかり忘れてた。
「そ、それじゃあ、こいつはマリナにプレゼントしてやるから、好きなデザインを選んでいいぞ」
「ほんと?!じゃあ、どれにしようかなぁ」
プレゼントに食いついたことで、とりあえず難は逃れたようだ。よかった単純で。
更にその奥にいるポチ助が「僕らのは?」という視線を向けてきている。お前らアクセサリーほしいのか?
いや、まてよ。
魔法石で作ったアクセサリーなら戦闘にも役立つぞ。
「こいつらにも何か役に立ちそうなものを見繕ってやりたいんだが。よさそうなものあるか」
「おや、こちらのモンスターはよく見ると、山狼とオニスズメですか。ずいぶんと小さいですが」
「魔法で小さくなれるんだ。出来ればそれに対応できるようなもんだとありがたいんだが」
「なるほど。山狼は既に首輪をされていますからそちらに紋様と宝石をつけましょうか。オニスズメは足首に輪ですかな」
「だってよ。よかったな」
「わん!」「ぴい!」
とりあえず宝玉の手掛かりはあっさり手に入った。
しかし、意外と金がかかった。
マリナはこの店で一番高い土台を選びやがったし、ポチ助の分はそこそこ上等な宝石を嵌め込んだので値が張る。
金策も必要かもな。
せっかくだしギルドで依頼でも受けていくべきか。
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