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ポートレイクの街


ゴブリン、オーガ、精霊といろんなモンスターに出会ったが何とか無事にポートレイクまでたどり着いた。


港町であるポートレイクでは漁業が盛んで、このあたりでとれる魚は鮮度もよく味が良い。


比較的遠洋まで漁に出ても、モンスターに襲われることが少ない地形のためこの大陸でも有数の漁場となっている。


港には無数の船が停泊し、白いレンガ造りの街並みはそれだけで一種の観光地となっている。


おかげで街には活気があふれていつト同時に、様々な商店が軒を連ねている。


「うわぁー、綺麗な町だねー」


「私も人の町に立ち寄ることは少ないのですが、ここは造形が美しい」


どうやらエルフ的にも合格らしい。


「それじゃ、今日は一日ここでゆっくりしていこうじゃないか。俺は少し知り合いに会ってくるからそれぞれ別行動でいいか?」


「ええ、私も気になるお店と鎧の修理をお願いしたいのでその方が有難いですね」


メルトの鎧はオーガとの戦闘でかなりみすぼらしくなっている。新調した方がよさそうだ。


「うーん。あたしは特に用事とかないんだけど、おじさんについて行ってもいい?」


「別に構わんが観光とかしてた方がいいんじゃないか。俺が行くのは協会だしそんなに面白いところじゃないぞ?」


「いいのいいの。一人で放り出されても何したらいいかわかんないし」


そこまで言うなら断る理由もないか。


「それじゃ、晩飯時には宿に集合でいいか。それじゃメルト気を付けてな」


「師匠またねー」


「それでは後程」


こうしてメルトとは別行動に。ちなみにポチは宿で留守番だ。街中はあまり連れ歩かない方がいいらしい。


「それで、おじさんは協会に何の用事があるの?」


「用事っていうか、知り合いに会いに行くんだよ」


「へぇー。どんな人?」


「そうだなお前とは正反対の美人。と言いたいところなんだが、猫被ってるだけで本性は似たようなもんだ」」


「それはあたしが正統派の美人ではないということかな?」


「正統派ではないだろ。メルトならともかく」


「くそぅ、師匠を引き合いに出されると何も言えねぇ」


「マリナさんもしっかりと美人さんですよ。自信をもって!」


ベルは何かとマリナの肩をもつな。あんまり甘やかすのもどうかと思うぞ。


「だよねだよね!やっぱりベルは分ってるー!」


ほら見ろ。すぐ調子に乗るから。


マリナがこっちに来てからしばらくたつが、こいつも結構馴染んできた。しかし実際のところはどうなんだろう。


帰りたい気持ちも多少はあるんだろうが、今の俺たちにはこいつをもとの世界に帰してやる手段がない。


可能性は決してゼロではないがそのためには途方もない準備が必要になる。何年かかることやら。


「協会ってアレのこと?」


そんなこんなで目的に到着した。


町の中心に聳える壮大な協会。各所に施された女神のレリーフと正面の上部に設置されたステンドグラスには勇者の証とも言える


聖剣が描かれている。


ここはこの地方での多数派である正勇教の総本山。


その名の通り、勇者を新興する宗派だ。歴代の勇者を祭る中には勿論ソウイチもその名を連ねる。


正面の扉を開き、中へと進んでいく。


ステンドグラスから色とりどりの光が中に注ぎ込まれている空間は否応なく荘厳な雰囲気を醸し出す。


奥の祭壇には一人の司祭が俺たちを出迎える。


「ようこそいらっしゃいました。本日はどのようなご用向きでしょうか」


「すまない、信者という訳ではないんだが、ミーシャは奥にいるか?」


「ミーシャ様ですか。いらっしゃいますが…」


歯切れが悪いな。まあ、いきなり来て合わせろってのも無茶な話か。仕方ない。


「困らせてすまない。アートが来たと伝えてくれれば、用件は伝わるだろう」


名前を出すと、司祭の顔が驚きに満ちる。


勇者を信奉する協会なんだ、かつての仲間となれば、その対応も変わるだろう。だから嫌なんだけどな。


「大変失礼いたしました。すぐにミーシャ様にお伝えいたします」


「おじさんって有名人?」


「まあな。最近は悪名の方が有名で困ったもんだけどな」


「有名人も大変だね」


「全くだ」


「お待たせいたしました。ミーシャ様がお待ちですので、ご案内いたします」


先ほどの司祭が奥へと案内をしてくれる。


祭壇の裏手に回り、奥の部屋へと通されると、その先には俺の目当ての人物、ミーシャが椅子に座り俺たちを出迎えた。


「久しぶりだなミーシャ」


流れるような青銀の髪と白い肌。そして目には黒い布を巻き付け視線を遮っている。


これは獅子王との戦闘で視力を失った目線を隠すものだ。


「随分とご無沙汰じゃない。久しぶりに声が聞けて嬉しいわ。あら、他にもお客さんがいるのかしら」


「ああ、訳あって俺が面倒を見ているストレンジだ」


「ストレンジね。道理で懐かしい雰囲気を感じた訳ね。一瞬ソウイチかと思ったわよ」


「それ師匠にも言われたね。あたし、サガミマリナって言います」


「マリナちゃんね。私はミーシャ・クレイル。アートとは昔一緒に冒険してたのよ」


「そうなんですね!じゃあ、先輩?」


「うふふ、そうなるわね。かわいい後輩にこのおバカの面倒を見るのは任せるわ」


「任せてください!おじさんはあたしがちゃんと面倒みますから」


「俺がお前の面倒見てんだよ。ったく」


俺が毒づくと二人は楽しそうに笑う。なんで俺がアウェーなんだよ。


「あー、楽しい。こんなに笑ったの久しぶりだわ。協会の中って堅苦しくてやーね」


「そう言うなよ。お前が選んだ道だろ」


「それはそうなんだけどね。後悔をしてる訳じゃないのだけれど、たまには羽目も外したいのよ」


「クエストぐらいなら付き合ってやるが、俺にはそれ以外できねえぞ」


「それも今度お願いしようかしらね。それで、あんたは今日は何しに来たの?」


「近くに寄ったから立ち寄ったってのが七割だが、一応聞いておこうと思ってな」


「もったいぶるわね。早くいいなさいよ」


俺はポーチから例の宝玉を取り出し、事情を伝える。


「これのせいで強力なモンスターが暴れているという訳ね」


「それでこのあたりでそういった目撃情報はないか聞きに来たんだ」


「そうねえ。特別強力なものはないんじゃないかしら。ブルードラゴンの目撃情報はあったけど」


「まて、ドラゴンは十分強力じゃねえか」


「だって、ブルードラゴンていっても、あの子よ?私が呼んだんだし」


「紛らわしい。今はどこにいるんだ?」


「さあ、その辺でも飛んでるんじゃないかしら。呼べば来ると思うけど、久しぶりに合っていく?」


「流石に街に下ろすと騒ぎがでかそうだからやめておく。なんでわざわざ呼びつけたんだ」


「あんたがさっき言ってたじゃない。強力なモンスターが暴れてるって。この町のギルドでも話題になってたから、冒険者の手に


負えなさそうなものは、あの子に頼んで対処してもらったのよ」


「やっぱりこっちでも騒ぎになってるんじゃねえか。すっとぼけやがって」


「違うわよ。こっちは大方片付いたから、わざわざあんたが出張るほどのもんじゃないってこと」


「そりゃお気遣いどーも」


結局ミーシャの方でも得られていた情報は俺たちと同じくらいだった。


吸血鬼に関しては流石に知りえていない情報だったらしくギルドにも呼び掛けてくれるそうだ。


イングラムの方にもこっちのギルドから情報が行くだろうし、今回は報告は任せておくか。


「それじゃあ、俺たちはそろそろ行くか」


少し世間話に花を咲かせたせいもあり、思ったより長居してしまった。


「ええ、それじゃあ。気をつけなさい。私はあまりここから離れられないけれど、陰ながら応援してるわ。はいこれ、お土産」


「こいつは?」


「協会印の聖水よ。私が直々に加護を授けたものだから効果は保証するわ。吸血鬼が出てくるならこれくらいはね」


「そりゃ助かる。使わせてもらう」


「先輩また来ますね!」


「待ってるわ。マリナちゃんにはこれを渡しておくわね」


そういってミーシャが手渡したのは銀の短剣。これはミーシャが冒険者時代にも愛用していたものだ。


「かっこいい!大切にします」


「大切に使ってあげてね。私の相棒みたいなものだから」


「はい!」


その後ぶらぶらと市場を見て周り、魚の串焼きや干物を買いながら時間を潰す。


メルトと合流すると、ちょうど鎧の仕立てが終わったのか新品同様になっていた。


基本的には金属部分を普及品から流用した形らしい。皮や毛皮の部分は自分で手直しできるからいいのだとか。


ちなみに、メルトも俺たちの後にミーシャのところに行ったらしい。


一応俺たち一向に助けられたから恩人枠なんだろう。


そうして宿屋で美味い魚料理を食いながら、夜が更けていった。

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