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精霊-2

さて突っ込みたいことはたくさんあるが、まずは状況の確認が先決だ。


とりあえず、マリナが吹っ飛ばしたおかげで紫の玉は粉々に砕け散り、精霊の暴走は解除されている。


同時に取り込まれていた妖精たちもその辺に投げ出された状態で精霊ともども気を失っているようだ。


というこは今回の精霊の暴走に関してはひとまず解決ということでいいんだろう。



「で、さっきの出鱈目な威力の魔法はなんなんだ」


「魔法っていうかかめはめ波?」


全く答えになっていない。


「俺にも分るように説明してくれ」


思わずため息が出る。


「仕方ないなぁ。まあ、こっちの世界にはアニメもないし。さっきのはあたしがちっさい頃に見ていたアニメの必殺技。


魔法使えるようになってから使えるかなって思ってこっそり練習してたんだけど、その辺に漂ってる魔力じゃ量が少なくて


ちょっと光るくらいだったんだよね」


その辺の魔力って言ったか今、俺が口を挟もうとしたらそのまま説明を続けていく。


「それでね、さっきの空間は魔力がいっぱいだって言ってたから試してみたの」


こいつサラっとすごいことを言ってるぞ。ほれみろ、メルトも口あんぐり開けてるぞ。


「てことはお前はさっきの空間の魔力を使ってさっきの魔法?を使ったってことか」


「んー、そうなるのかな。手のひらにこうやって魔法をためておくと周りから魔力が集まるから、どんどんそれを集める感じかな」


理論的には可能だが、それができるかどうかは別の話だ。


「それともう一つ。あれって光の魔法だろ。ただ光るだけの魔法がなんであんな威力になるんだ」


「だって、太陽の光でも虫眼鏡で集めたら紙くらい燃やせるでしょ?いっぱい集めたら強いでしょ!」


そう来たか。メルトが俺の肩をトントンと叩き耳打ちしてくる。


「アート様、先ほどからマリナさんの魔法の説明を聞いていたのですが、私たちの常識が通じてないのですが」


「俺のそう思ってた。これは教えた方がいいのか」


「いえ、アート様も度々仰いますが、魔法はイメージの力。マリナさんができると信じているのであれば泳がせておくのが正解かと」


俺たちがひそひそやっていると、傍らではマリナがきょとんとしている。


一般的に魔法とは自身の体内を流れる魔力を表出させ使用するものだ。だからこそ、魔力の総量によって魔法に威力や規模が変化する。


基本的にそこら辺に漂う魔力は人体の魔力量よりも少ない。俺たちが魔法を使うとき体内の魔力は空気中に拡散されていく。


熱や空気と同じように多いところから少ないところに流れていくのは魔力も一緒だ。


で、魔法を使っている以上は魔力の流れは体内から外への流れになっているはずだ。マリナが言っている外から魔力を補給するというのは


なかなかに難しい。もちろんできなくはないが。


光の魔法には一つ特性がある。魔力の燃費が良いという点。


光を発するというシンプルなものであるから、魔力から魔法への変換の効率が良い。


マリナの話をまとめると、手のひらに光の魔法の塊を生じさせた時点で、ごく少量の魔力でもってこれを制御する。


すると、周囲の魔力よりも光の塊の方が魔力の密度が少なくなる。ここに外から魔力が流れ込んでくる訳だ。


流れ込んできた魔力を片っ端から光に変換してどんどんためていくと、さっきの魔法が完成するという理屈になるんだろう。


理論上では。前提として、


1、魔力から魔法への変換を限りなくロスがなく行えること


2、対外の魔力を直接魔法に変換する能力


3、光には破壊力があるという怪しい認識


この三つがないと成り立たない。1と2は俺の変な魔法の教え方のせいで会得したこともあるだろうから、責任の一端は俺にある。


3は俺には無関係のところで醸成された認識だ。どうしようもない。


バカと天才は紙一重とはよく言ったもんだ。


とまあ、マリナの出鱈目な魔法の理屈を地面に絵を描きながら整理していると、ちょうど精霊が目を覚ました。


「そこのお三方。先ほどは私を呪縛から解き放って頂きありがとうございます」


先ほどまでのよくわからん魔力の塊ではなく、ちゃんと人の形にはなっている。長い髪を揺らし、おっとりした目元が優しそうな印象だ。


少し透けてるけど。


「あ、気が付いたんだね。思いっきり吹っ飛ばしちゃったんだけど大丈夫だった?」


「おかげさまで。宝玉の支配下にあった際にも自我はあったのですが、体が思い通りに動かずでして。ご迷惑をおかけしたようですみません」


「それで、あんたは一体何の精霊なんだ?」


「説明が難しいのですが、私はまだ精霊ではないのです。現状だと、魔力に塊に意識がある状態といいますか」


「なるほど、まだ司るものが決まっていないのか」


「話が早くて助かります。自我を手に入れてすぐにこれからどうしよかを考えていたところで、あの宝玉に体を支配されてしまったのです」


「その宝玉のことについていくつか伺いたいのですが、何か覚えていることはありませんか」


メルトの質問に対して、少し思案してから精霊は話を続ける。


「宝玉を埋め込まれた前後の記憶ははっきりとはしていませんが、一つ覚えているのは私に宝玉を埋め込んだのはヴァンパイアでした」


ヴァンパイア、またの名を吸血鬼。始祖と呼ばれる一人のヴァンパイアから血を分け与えられたことで発生した種族。


人間をはるかに上回る強大な身体能力と膨大な魔力を得る代わりに、日の光が弱点となる。


この騒動の裏には奴らが絡んでいるということか。


「ヴァンパイアですか。厄介な相手ですね。その者の特徴などはございますか?」


「身体的な特徴で言うと長い銀髪に深紅の瞳、装飾品の類で言うと獅子の紋章の入ったネックレスでしょうか」


俺には思いつく当てもない。その点はメルトも同様のようだ。地道に探すしかないか。


「まあ、宝玉のヒントが手に入ったのは収穫だし良しとするか」


「そういえば、精霊さんは名前はなんていうの?」


「私はまだ精霊ではないのでまだ名前はないのです」


「じゃあ、あたしが名前つけてあげよっか」


「待て、マリナ。精霊の名づけは気軽に行うべきじゃないぞ。良くも悪くも名は体を表すことになるからな。そいつの可能生を狭めてしまう


ことにもつながる。しっかりとそいつの資質を見抜くことができずに、適当な名前を付けると後で困ることになるぞ」


「そうなんだね。それじゃあ余計な事しない方がいいのかな」


「いえ、私を助けて頂いたのは他でもないマリナさんです。貴女がいなければ私はこうして話をすることもままなりませんでした。


是非名前を付けていただきたいです」


ちらっとこちらを伺うマリナ。子供じゃないんだからそれくらい自分で決めろとも思ったが、よく考えたらガキだった。


「まあ、本人がそう言うならいいんじゃないか。精霊の名付けなんてめったにできる経験でもないしな」


「分った!じゃあ、何がいいかな。精霊といえば…、ティンク、じゃないなぁ。あ、そうだ。ベル!ベルにしよう。


あなたの名前はベルだよっ」


「ベルですか。いい名前ですね。ありがとうございます。マリナさん」


「うんうん。気に入ってくれて嬉しいよ。これからよろしくねベル」


「はい!こちらこそよろしくお願いします」


そうして二人は仲良く握手を交わす。


「「あっ」」


仲良く握手を交わす。つまり、精霊との契約条件を完全に満たしているわけだ。


一瞬遅れた俺とメルトを他所に二人の契約はすぐに完了してしまう。


さっきまで透けていたベルの体が実体を得ると同時にマリナの腕には白銀のブレスレットが装備される。


精霊との契約の証は個体によって紋章だったり、アクセサリーだったりいろいろ変わるらしいが今回はブレスレットの様子。


「あれ、これってどうなってるの?」


「私も肉体がありますね」


状況が飲み込めていないマリナとベル。


「お前ら、気づかないうちに契約完了しちまってるんだよ」


「成程。そういうことでしたか。では、私はマリナさんと今後も一緒にいられるということですね」


「え、そうなの!?やったー!」


のんきな奴らだ。


「一つ忠告だ。ベルは今実体があるが、その分魔力の消費も大きいだろう。その状態は長いこと維持していられるもんでもないだろうから


基本的にはマリナのブレスレットの中にいる方がいいと思うぞ」


「確かに仰る通りですね。この状態だと持って五分といったところでしょうか」


「まあ、それもベルの訓練とマリナの魔力次第でどうにでもなる気もするがな」


「それでは基本的には私はブレスレットの中に入っていますね」


そういって、すっと体が透き通り、粒子となってブレスレットに吸い込まれていく。


「じゃあベルとはあんまりお話できないのかな」


「いえ、このままでも思念での通話はできるみたいですよ」


うわ、頭の中に直接語り掛けてきやがった。慣れるまではびっくりしそうだな。


「よーし、それじゃ仲間も増えたことだし次の目的地にしゅっぱーつ」


最近マリナが徐々に仕切り出して来た気もするんだが気のせいか?

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