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温泉とケルフェアの実

「はぁ~、いい湯だな~」


久しぶりの温泉はめちゃくちゃ気持い。


というかこの世界に来てから始めての温泉だけど、日本とそんなに変わらない。


あたしのほかにもこっちの世界に来た人も多い見たいだし、誰かが広めたのかも?


それにしても、師匠はすごい綺麗な体。


肌も白くて、スタイルもいいし、足も長いし、モデルさんみたいな体。


人間と違うところといえば、耳がとがってるくらいかな。髪も金髪なんだよね。あたしと違って天然で青い瞳もすごい綺麗。


「マリナさん?さっきから心の声が駄々洩れなんですが。恥ずかしいです」


「はれ、どの辺から漏れてたんだろう」


「それにしても、師匠は辺りからですかね」


それはもはや初めからでは?


「あはは。全部きこえちゃってるじゃん。それじゃ、師匠そのきれいなお体拝見させて頂きますね」


「はあ。見られるのは別に構いませんが。マリナさんから邪な気を感じるのは気のせいでしょうか」


「気のせい。気のせい。くるしゅうない。近う寄れ-」


おお、お肌もぴちぴち~。


肌の張りならあたしも負けてないけどね!


「触り方がやらしいですね」


「そんなことないでおじゃる」


「おじゃる?ちょっと、マリナさん?そこは、ダメです!ひゃっ」


いい声頂きました!


------------------------------------------------------------------


そのころ男湯。


全くあいつらは何やってんだか。


俺はポチと二人で入浴中。マリナ曰くポチは雄だから男湯でとのこと。


散々毎日ポチと一緒にふろに入っていた気もするが。


「それにしてもお前は、風呂嫌がらないのな。変わった狼だ」


「わふぅ」


湯舟を気持ちよさそうに泳ぐポチ。


「まあ、いい湯なのは否定しないがな」


ソウイチも温泉好きだったな。


リンネルネには温泉なんてなかったし、せいぜいシャワーで済ませるくらいのものだったんだが、俺もあいつに付き合ううちにすっかり長風呂になっちまった。


温泉につかりながら月見酒なんてのも乙なもんだが、今日はそれよりもアレだな。


「ポチ、俺はそろそろ上がるぞ。一緒に出るか?」


「わん」


ポチを連れ立って脱衣所に向かう。


タオルで自分の体を拭きながら、風の魔法でポチの体毛を乾かす。


最近はこの使い方にポチも慣れてきたのか、体をぶるぶるさせながら、適度に体を移動させまんべんなく乾かしていく。


マリナ曰く魔法ドライヤーとのこと。なんのことやら。


「さて、風呂の後といえばやっぱりこれだよな」


売店で牛乳を二本買い、一本はポチにくれてやる。木皿をもらい、移し替えてやると美味そうに飲む。


それじゃ俺も。


一口飲むと火照った体に、冷たい牛乳が染み渡る。


「やっぱ温泉上がりにはこれだな」


女子どもはもう少しかかりそうだし、先に宿に戻って、明日の支度をしておくか。


その前に村のギルドに顔を出しておくか。


さっきのゴブリン関連の依頼でもあれば状況くらいは説明しておいた方がいい。


がやがやと騒がしい酒場を抜けると目当てのカウンター。


ここの職員は普通の人間らしい。


「いらっしゃいませ。あら、見ない顔ですが、旅の方ですか?」


「ああ、リンネルネからな。ところで最近ゴブリン関係の依頼は出ているか?」


「ゴブリンですか。この村の周辺は生息数も多いので、比較的ずっと出ていますが。何か変わったことでもありましたか?」


「ここに来る途中、廃坑でゴブリンの巣穴を見つけてな。勝手に討伐してきたんだが、依頼でも出てたら悪いと思ってな」


「そういうことでしたか。しかし、巣穴ということは」


そこで職員の顔が若干曇る。


巣穴があるということは、そこはゴブリンの生産工場があることを意味する。


「察しの通りだ。俺の見た範囲では、女性が三人。連れ去られてから数か月ってところだろう」


「数か月ですと行方不明の方の捜索依頼が、丁度三件。そうですか、ゴブリンの巣穴に…」


「あの廃坑はここからだと結構な距離になるだろう。捜索隊もそこまで足を広げられなかったか」


「仰る通りです。そちらは後日、こちらのギルドで調査をさせていただきますので、後はお任せください」


「よろしく頼む。それとは別なんだが、このあたりで強力なモンスターの討伐依頼は出ているか?」


「そうですね、強力というと少し異なりますが、精霊の目撃例が最近増えています。大体この辺が多いですね」


職員が地図を広げ、場所を教えてくれる。


丁度ポートレイクに向かう途中の地点だな。一応見ておくか。


「ありがとう。参考になったよ」


精霊の活性化か。


精霊の活動周期は割と明確になっており、その地域に根付くものであれば、その時期に合わせて祭りなりを執り行うのが常だ。


口ぶりから察するに、どうにもイレギュラーなものらしい。


活動周期が極端に長いせいで認識されていないか、他の土地から流れ着いたか。


他の土地から流れ着いた精霊ね。


どうにも紫の玉がちらつく案件だが、調べてみないとどうにもならないか。


情報収集はこれくらいでいいか。


見たところ村は通常営業といった雰囲気だし。モンスターに襲撃されて困窮しているという風でもないからな。


この村は温泉もあり観光名所とまではいかないが旅の冒険者にはうれしいスポットの一つだ。装備を見た感じから冒険者を除くと、


人と亜人の割合は七対三といったところか。


見たところ亜人が迫害されているといこともないから、戦後亜人が移り住んで定着したといった感じなのだろう。


亜人は人間と比べるとやはりとがった能力があるから村に数人いてくれるだけでも人間にとっては恩恵は大きい。


迫害されていた歴史から、中には敵対意識を持つものもいるが、共生の関係をうまく築ければ案外うまくいくものらしい。


ちなみにこの村はテイムモンスターを連れ歩いても大丈夫なようで、先ほどからすれ違う子供たちがポチをみて驚いたり撫でたりと


色々な反応を見せている。リンネルネも問題ないが、さすがにアランドロンの街中は連れ歩けない。


そこは村や街によって異なる。理由は様々だが、この村では畑を耕すのにモンスターを使っているらしいので抵抗も少ないのだろう


散歩がてら村の様子を見て回っていると、ちょうど宿の方に向かうマリナとメルトの後ろ姿を見つける。


声をかけようとしたところ、何やら他の冒険者に絡まれだした。面白いから少し見ておこう。


「エルフのお姉さんなんて珍しいね。他所から来たの?」


「ええ。今日村に着いたばかりですが」


「そうなの?じゃあ、俺たちがこの村案内してあげるよ。安くてうまい酒場とかもあるし、ね」


「いえ、明日も朝早いので、今日は宿に戻ろうかと…」


「えー、そう言わずに一杯奢らせてよ。ここで出会ったのも何かの縁だしさ」


そこでマリナがメルトに耳打ちをしている。何を吹き込んだんだ?


「なるほど。そういうことでしたらアレが食べてみたいですね」


そういってメルトが指さしたのは、亜人の行きつけであろう酒場。


店先で売られているのは、明らかにゲテモノ。昆虫の串焼き。


味は悪くはないんだが、見た目がどうにも人間には厳しい。絡んできた冒険者も苦そうな顔をしている。


「お姉さん、アレ食べたいの?」


「せっかく来たのですから珍しいものも食べてみたいかなあと思いまして。何か問題でも?」


「いやいや、どうせならもっといいもの食べようよ。ほ、ほらあそことかどう」


そういって冒険者が指さしたのはいたって普通の店だ。チョイスとしては無難だろう。


しかし、マリナに何やら悪知恵を吹き込まれたメルトはさらに謎の選択を行う。


続いて指定したのは、謎の果実。めちゃくちゃ禍々しい見た目をしているが食えるのかアレ。


そうして、目につくゲテモノを指定しまくった結果、冒険者は徐々に元気をなくしていき、トボトボと帰ってしまった。


なんとも気の毒な奴らだ。


「お前らやりすぎだ」


「あ、おじさん。いたなら助けてよー」


そういう割にはニコニコしているマリナと微妙な表情のメルト。


「お手並み拝見といったところだよ。それにしてもメルトあれはどういう基準で選んだんだ」


「なるべく人間の方が食べたくなさそうなものを選べとマリナさんがおっしゃるので、私なりに選んでみたのですが」


どんな指示だよ。


「確かにどれも食いたくはないが。まあ、無事でよかったよ」


「やはりどれもダメですか」


なぜ残念そうなんだ。


「もしかして、あの中に食いたいものでもあったのか」


「い、いえ、あの果物は故郷でもよく食べておりましたので。人間の方が食べているとことは見たことがなかったのでもしやと思いましたが」


あ、食えるんだ。


「買ってやろうか?」


「折角ですから一つ頂きたいです」


「あいよ。おっちゃん。それ一つ売ってくれ」


「おや、あんた人間なのにこれ食うのかい。珍しいな」


「俺が食うんじゃないさ。連れがな」


「あそこのエルフのお嬢さんかい。なら納得だ。せっかくだ、この小さいのもおまけしてやっから気が向いたら食ってみな。


案外味はいいぜ」


獣人のおっさんが二つの果実を手渡してくる。紫のとげとげした果物。


名前はケルフェアの実というらしい。


「ほれ、メルト。おまけ貰ったからマリナにもやるよ」


「ありがとうございます」


「あ、ありがとう。これ食べても平気?」


「意外と美味いらしいぞ」


「うーん。まあ、映えるっちゃ映えるかな?いいや、いただきまーす」


割と躊躇なく食うなこいつ。


「美味っ!おじさん、これ意外とイケるよ」


マジかよ。隣ではメルトがむしゃむしゃと美味そうに頬張っている。


「一口食べてみる?はい」


そういって食いかけのケルフェアの実を俺に差し出してくる。


ゴクリと生唾を飲み込み。やはりこれを食うには覚悟がいるな。


「どうしたのおじさん、食べないの?あ、もしかして照れてる?間接キスになっちゃうもんねぇ」


「アホか。食うのに覚悟がいるムグゥ?!」


「アホって言うなー。ずべこべ言わずに食べればいいでしょ」


口にねじ込まれたのを仕方なしに食ってみると、これはなかなか美味いな。


しかも、魔力が心なしか回復している。


買い占めておくのもいいかもしれない。



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