メルト・リーブル
山狼の群れは特に問題なく片付いた。
流石に数も多いし、あの数の死体をほったらかしておくのも少々問題になりそうだ。
血の匂いで他のモンスターが寄ってきても迷惑だしな。
「よーし、昼飯も食ったし、後片付けしていくか」
「モンスターの死体って自分たちで片付けないとだめなの?」
「大規模なクエストならそういう部隊も追従してくれるんだがな。村のお使い程度だと自分たちで片付けるのが常だ」
今回はもちろん自分たちで片付ける必要がある。
とはいえこの量は少々骨が折れる。
狼の肉は臭みが強く自分たちで食べるのには向いていないし持って帰るほどの価値は正直ない。
仕方ない。
焼くか。
「マリナ、すまない火を頼む。っておい。そいつはなんだ」
俺が薪を集めている間に、自分が始末した分を集めてくると言って、戻ってきたマリナの隣には山狼が一匹隣に並んでいる。
「ポチ」
名前きいてるんじゃねえよ。というか名前を付けていやがる。
「さっき戦った時に一匹身動き取れないようにしてたでしょ。戻ったらお腹すいてそうだったし、試しにご飯あげてみたら
懐かれちゃった」
奴も動物だ。上下関係をはっきりさせているのであれば問題ないか。
「ポチ、お手伝いお願いね」
ワンと一吠えし、仲間の死体を集めてくる。
これは懐いているというよりは、テイムできてるんじゃないか。
後でステータスの確認してみるとしよう。
ポチのおかげもあり、作業は思ったよりも早く進んだ。
猫の手も借りたいなんてよく言うが犬の方がこういう時は役にたつな。
「ポチー、偉いね。お手伝い頑張ったからご褒美だよ」
焼いている狼の肉をいくつかつまみ出し、ポチに与える。
「あれポチ光ってるね」
「山狼は美味くはないが、経験値の代わりにはよかったんだろう。おおかたレベルがあがって魔法が使えるようになったってところじゃないか。」
背中にはシルバーラインが浮かび上がっている。
火球くらいは吐けるだろう。
さて、クエストも達成できたことだし戻るとするか。
俺は馬に乗りマリナはポチの背に乗る。こいつが存外速い。
試しにギャロップで最高速度に持っていくが、それにもしっかり追従してくる。
そんなことをしながら走っているとあっという間にリンネルネに戻ってきた。
「アートさん、マリナさん、お疲れ様です。あら、お仲間さんが増えてますね」
「ポチっていうの。リンちゃんも仲良くしてあげてね」
「ポチさんですか。おいでー」
狼と犬の獣人がじゃれ合っている光景はなんとも微笑ましい。
思わず顔がにやけそうになる。
隣のマリナは、目をかっぴらいて、手の甲で口元からあふれるよだれをぬぐっている。
なんて顔してやがる。欲望が完全にあふれ出している。
「おじさん、なにこれ超エモイんですけど。我慢でききません」
「落ち着け」
今にも飛び掛かりそうなマリナの手をつかんで静止させるが、なんて力だ。
「離せぇぇぇぇぇ、あたしはあのモフモフにうずまって死ぬのだぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「お前猫の方がいいとかなんとか言ってただろうが」
「あえて比べるならの話!犬も好き!」
俺達がギャーギャーやっていると、いつの間にかじゃれ合いの終わった一人と一匹は冷めた目でこちらを見ていた。
恥ずかしい。
「それで、その様子だと山狼の群れは無事に討伐できたんですよね」
「ああ、一匹はこうしてこいつのお供になったけどな。今回の群れは特に変な点も見当たらなかったから季節のものだろうな」
「被害が出る前に解決できて一安心です。それじゃあ、こちらが報酬です」
「サンキュー。あ、そうだ、メルトはどこ行ったんだ?」
「メルトさんならお二人が戻ってくる少し前に加工屋さんに行かれましたよ」
加工屋か。ここで待っていてもいいんだが、ちょうど用事もあるから会いに行くか。
「おやじー、邪魔するぞー」
「らっしゃい。おう、アートか。例の奴もできてんぞ」
カウンターの奥から店主が出てくる。
ドワーフのゲルド。鍛冶が得意なドワーフの例にもれず逞しい肉体に赤い頭髪と長いひげが目印。
「ちょうどよかった。ところでメルトの奴は来てるか?」
「ん?メルトの嬢ちゃんなら店の裏にいるが。呼んできてやろうか」
「いや、おれが直接行くよ。せっかくだ、例の奴先にもらおうか」
「よっしゃ。ちょっと待ってろ」
おやじが奥から引っ張り出してきたのは緑のガントレット。
先日のジャイアントカメルーンの素材を使った装備だ。
「マリナ、こいつはお前用だ。つけてみろ」
「え、前のトカゲじゃん。臭くない?」
「匂いはちゃんと取ってあるぜ。嬢ちゃん弓使うんだろ。しっかり色々仕掛けも入れといたから使ってくれると嬉しいんだが」
「そういうことなら使っちゃいましょう!二人ともありがとね」
そのまま店の裏手に回ると、ちょうど弓の試射を行っているメルトがいる。
「師匠はやっぱり弓上手いねえ」
「あらマリナさん。アート様も。こんなところで奇遇ですね」
いつの間にかマリナはさん付けになっているな。仲良くなってくれたようで何よりだ。
「奇遇というか、メルトに会いに来たんだけどな」
「そうでございましたか。どういったご用件でしょうか」
「さっき山狼の群れを討伐してきたんだが、一匹懐いてきてな。たぶんマリナがテイム系の隙る獲得したんじゃないかと」
「では見てみましょうか」
サガミ・マリナ
Lv.15
属性 炎 光 ??
筋力 150
魔力 400
器用 250
瞑想 450
パッシブスキル
・レプタイルキラー
・ファーストテイム
モンスターのテイムが可能。
テイムしたモンスターには命令を実行することが可能。
ポチ
Lv.13
筋力 500
魔力 150
器用 100
瞑想 100
パッシブスキル
・魔力開放
魔法の使用が可能となる。
・絆
テイムされたことの証。
経験値を共有できる。
ついでにポチのステータスも見てもらう。
「面白いステータスですね。おそらくマリナさんの比較的高い魔力に触発される形で魔法の能力が開放されたのでしょう」
「あたしのテイムってスキルなんだね」
「スキルとして発動しているということは、ポチさんもしっかり言うことを聞くでしょう。戦闘でも役に立つと思います」
経験値も共有できるのか。
倍の速度で成長できるということでもある。いい収穫だな。
「リンさんから伺いましたが、今日はクエストに行ってらしたんですよね。どうでしたか実戦は」
「しっかり戦えてたよ。メルトの指導のおかげだな。ありがとう」
「お役に立てたなら何よりです。私もマリナさんに後れを取らないようにしっかり稽古しませんと」
先ほどまで稽古していたのだろう。額にはうっすら汗がにじんでいる。
普段のギルドの制服ではなく、動き易さを重視した軽量の鎧を装備しているあたりかなり本格的な調整の様子。
近々村のクエストも手伝ってくれるのかもしれない。
しばらくマリナの弓の調整と試射が続く。
細かい調整は弓の経験が弱い俺とやるよりもメルトと一緒にやった方がいいんだろう。
日も暮れてきたころ、マリナの面倒はメルトに任せてタバコをくゆらせていると
加工屋に再びの来客が来た。
カランコロンとベルを鳴らし、入ってきたのはリンちゃん。
「あれ、リンちゃんどうしたの血相変えて」
「アートさん!まだこちらにいらしたんですね。メルトさんもいらっしゃいますか」
「裏手にいるけど。慌ててる理由はそれかい」
リンちゃんの手にはギルドの紋章が入った封筒が握られている。
時期から察するとおそらく例の宝玉の調査結果だろう。
「そうなんです!早くお知らせした方がいいと思って探しに来たんですよ」
「そいつは助かる。メルト連れてくるからちょっとそこで座っててくれ」
「お前はいつからこの店を仕切るようになったんだ。店は使ってくれて構わんがな」
よこからおっさんの突っ込みが入ってくるが華麗にスルーする。
メルト、マリナ、リンちゃん、俺
四人で机を囲み、書状を読む。
鑑定結果
各地で発見された宝玉について、ギルドではこの宝玉を「隷属球」と呼称することとした。
アメジストに術式を刻み込んでおり、発動している術式は「強制服従」である。
与えられた簡単な命令を遂行させることが可能な術式であり、シンプルな効果であるがゆえに
高レベルのモンスターにも効果があると推定される。
産地に関しては明確な特定には至っていないが、比較的近い特徴を示しているのは大陸西部に位置する
ベルアキム地方の物が最も近く、次いで南西部のポートレイク。
以上のことからベルアキムとポートレイクの間に位置する、ホールイートで産出された可能性が高い。
ホールイート地方の外れには辺境地区も分布するため、ギルドではここを最重要調査地点として指定する。
冒険者アート・ヴィンドラム
サガミ・マリナ
メルト・リーブル
以上の三名に上記地点の調査を命じる。
ギルドマスター イングラム・デクラフト
ホールイートか。確か獣人が多い地域だったような気もするが。
それよりも
「メルトの名前も入っているということはお前も一緒についいてくるのか」
「ええ、私からイングラム様に進言しておいたのです。アート様を調査に向かわせるのであれば、回復魔法が使える者を一人くらいつけても
使えた方がいいのではないかと。そうしましたら、お前が行って来いとなった様子です」
「やった!師匠も一緒に行けるんだね!」
「ええ、道中も弓の訓練は致しましょう。そういう訳ですのでアート様、マリナさん改めてよろしくお願いします」
メルトがついてきてくれるのなら心強い。
「よろしく頼む」
「よろしくお願いします!」
三人で冒険か。楽しくなりそうだ。
メルト・リーブル
Lv.36
属性 回復 鑑定 森
筋力 800
魔力 1100
器用 1200
瞑想 800
パッシブスキル
・森の加護
エルフ族の加護。
周囲の環境に応じてパラメータが変動する
・視覚化
ステータスの数値化を行うことができる。




