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クエスト2 山狼の掃討

ギルドから鑑定の結果が上がってくるまでの一週間。


せっかくの自由時間を有効活用するべくマリナと特訓に明け暮れていた。



俺は主に魔力の扱いに関しての特訓を担当。


魔力の錬成と戦いにおいて重要な呼吸のリズムなどを徹底的に叩き込む。


まずは一人でも戦闘がこなせるようにしなければ前回のジャイアントカメルーンの時のように危機に陥る可能性が高いからだ。


そこで初歩的な訓練である魔力の常時開放を課した。


言葉にすると簡単な話なのだが要は走っていようが、戦っていようが、寝ていようが、いかなる時も魔力を練るという訓練だ。


こいつがなかなか大変なのだが。


俺は専らマリナの集中を乱すことに専念する。


俺だって本当はこんなことをしたいわけじゃない。


断じて驚いたマリナの反応が面白いとか、驚いた時の声が意外とかわいいとかそんな低俗な目的でやっているわけではない。


断じて。



特訓も六日目。


魔力の扱いもずいぶん慣れてきた様子のマリナ。


朝に軽く驚かせてやろうと部屋の前にでジャイアントカメルーンの着ぐるみを被って待機していたところ


「ひいっ」と声を上げたかと思った瞬間、魔力が爆発的に高まり炎を剣のような形に形成し切りかかってきた。


「トカゲ殺す。絶対に殺す!」


「すまん!冗談だ。俺だっ、アートだ」


着ぐるみの頭部を外した瞬間に首のあった場所を炎の刃が通りすぎた。


今の攻撃、俺じゃなかったらたぶん首吹っ飛んでたぞ。


「なんだおじさんか。朝からびっくりさせないでよ」


「びっくりしたのはこっちの方だ。ずいぶん魔法も上達したんじゃないか」


「毎日大変だけど、おかげさまでね。昨日寝る前に思いついたんだけど、この魔法エモくない?」


そう言ってマリナが窓から外に向けて魔力の塊を放つ。


ヒューという音を立てながら上空に打ち上げられたそれは高く昇っていき


ドーン。


爆発した。


爆発と同時に緑の光が空中にはじける。


「たーまやー!」


「花火は夜に上げろよ。よくそんな使い方思いついたな。それで食っていけるんじゃないか」


「うーん、花火職人マリナもありかな。選択肢には入れておくよ」


そんな軽口をたたきながら食卓に向かうと、リックがいつも通り朝食を用意してくれている。


「アート、お手紙が来てるですよ」


ふよふよ漂ってきたリックが封筒を手渡してくる。


「助かる」


封書にはギルドの紋様。


ってことは依頼かな。


便箋には


「アートさんこんにちは。


出張所からクエストの依頼です。


直接出向くのでも良かったのですが、最近マリナさんと楽しそうなので邪魔するのも野暮かなと思ったので、こちらで。


クエスト 山狼の討伐


内容   森林にて山狼のウルフパックが目撃されています。


幸いまだ人的被害は出ていませんが、すでに家畜の牛が数頭やられています。


近いうちに村にも被害が及ぶと考えられます。


早急にご対応お願いします。


レトラ・パーレイ」



山狼か。マリナの成長度合いを測るには丁度いいか。


今日の予定はこいつで決まりだな。



飯を食い終わり、出張所に出向いたところレイちゃんがせっせと掃除を行っているところに出くわす。


「レイちゃん、おはよう。例のクエストの件なんだが」


「アートさん、マリナさん、おはようございます。お忙しいところ申し訳ないんですがよろしくお願いします」


ペコペコ頭を下げるレイちゃん。その度に犬耳もピコピコ動く。


「おっはよー!今日ももふもふだねぇ、触っていい?」


「いいですよー。どうぞ!」


頭を差し出したレイちゃんに容赦なく飛び掛かり、耳と尻尾を撫でまわす。


「なあ、レイちゃん、なんで俺は触らしてもらえないの」


「アートさんは触り方がやらしいのでイヤです」


以前に一度もふらせてもらったのだがその際の触り方がお気に召さなかったのか、それ以降は一度も触らせてくれない。


手触りが良くて気持ちいいんだけどなぁ。


「山狼ってどんなモンスターなの?」


「基本的にはちょっと大きな狼ですね。魔法を使うほどの魔力は基本的には持ち合わせてませんが、リーダークラスの個体は


火の魔法を使うこともあります。今回の群れの規模は三十程の規模なので一、二匹は混じっているかと思いますので気を付けてくださいね。


あとあと、狼系のモンスター全般に言えることなんですけど、大きな音を発すると興奮して気性が荒くなるので注意してください。


中にはその状態の方が攻撃が読みやすいとかなんとか言って無理やりびっくりさせる人もいますけどね」


なぜか最後に俺の方をジトっとした目でにらんでくる。


昔はそんなことを言っていた気もするが、今ではそんなめんどくさいやり方はしないぞ。


狼程度なら群れの中に乗り込んでひっかきまわしながら暴れた方が手っ取り早いし。


ウルフパックの目撃地点は村からそこまで遠くない地点とのこと。


早速向かうか。


馬を走らせ、森に到着すると痕跡はすぐに見つかる。


流石に数の多い群れだけあって行動も大胆だな。そのまま痕跡を追うと群れはあっさり見つかる。


数は三十二。


群れの中央には一際体格の多い個体が一匹。ほかの個体は茶色の体毛を持っているが、そいつは一部が銀色の体毛。


あれがボスか。


「ボスは俺が受け持つ。あの中に乗り込んでまとめて引き付ける」


「じゃあ、あたしは見てるだけ?」


「いや、群れの隅に数匹離れている奴らが居るだろ。俺が突っ込んだ後もあいつらは様子見をしているはずだ。お前にはそっちを任せる。


俺は反対側に回る。準備ができたら突っ込むぞ」


「おけぇい。ここで待ってるからね」


魔力を体外に漏らさないようにし身体強化を施す。気配を遮断し森を駆ける。


多少は大回りだが見つかるよりはいいだろう。


「さてお仕事の時間だ」


マリナにアイコンタクトを送り、しっかりと返事が返ってくるのを確認。


群れの中心に一気に乗り込む。




さて終わったら昼飯だ。



流石にこの程度の雑魚に遅れをとるほどじゃないからな。




「おーい、マリナー。昼飯にするぞー。」


とりあえず俺のノルマ分の山オオカミを片付けたところで、マリナに声をかける。


「いやいや、私まだまだ戦ってる最中なんですけどぉぉぉぉ」


叫んだせいかあたりを囲んでいたオオカミ達が、遠吠えで返し牙を剥き出しにする。だからあんまり刺激するなって事前にチリンちゃん言ってたろ。


苦戦はするだろうが、ここは様子見だ。


「あたしは犬派じゃなくて、猫派なの!」


訳の分からんことを言い出し、同時に魔力を練り上げる。お前今朝リンちゃん撫でまわしてたろ。


普段のトレーニング時よりも錬成の精度が上がっている。適度に緊張感のある環境の方が力が発揮できるタイプか。


感心して眺めていると、戦況が動く。


痺れを切らしオオカミの一匹がマリナに飛びかかる。


喉元を狙った一直線の突撃。


身のこなしはまだまだ甘いが、すれ違うように前転し、即座に反撃に転じる。


初動をしっかりと見極めている点は評価できる。弓の訓練はメルトに任せていたがなかなかいい動きだ。


矢筒から引き抜いた矢に魔力を注ぎ込む。


鏃が炎を纏い赤熱する。


「フレイムアロー!」


片膝をついた姿勢からの狙撃。



獲物を取り逃がし、隙だらけの背後からマリナの攻撃が突き刺ささり、一気に燃え上がる。まず一匹。


「次!」


間髪入れずに次の標的に対して矢をつがえる。


しかし的は動き回る生物。そう簡単には当たらない。


次々と放たれた三発の矢は、オオカミの脇をかすめ、背後の木に直撃する。


狙って外したにしては妙な軌道の矢がある。何か狙いがあるか。


どうもオオカミの様子がおかしい。


全く動かない。


というよりは動けないのか?


「狙い通り!」


マリナとオオカミの間の空間にキラリと何かかが光る。


矢にワイヤーを繋いでいたのか。


ご丁寧に魔力で補強までしてやがるしな。


あれじゃ動けまい。


そして、オオカミとのタイマン。


仲間二匹が既に役に立たないことは既に理解しているのだろう。


そして目の前の女がそれを行ったことも。


ジリジリと間合い読み合い両者の距離が徐々に縮まる。


マリナのメインアームは弓。


対してオオカミは牙。


近接は明らかにマリナにとっては悪手だが何か策はあるのだろう。その証拠と言わんばかりにその両手には魔力が練り上げられている。


先に動いたのはマリナ。


対峙するオオカミとの距離約五メル。


一足飛びに距離を詰め、手から魔力を放つ。


だが、放たれたのは無詠唱の只の魔力の塊だ。少し炎を帯びてはいるが威力はないだろう。当たったところでオオカミに致命傷は与えられない。


それを見切ったのかオオカミも被弾を無視してそのまま突っ込んでくる。


魔力の塊が直撃した、瞬間、マリナがパチンと指を鳴らす。


「シャインボム!」


その瞬間、オオカミに付着した魔力の塊が閃光を放ち弾け飛ぶ。


圧倒的にな光量で、視界を奪われたオオカミの足が一瞬止まる。


その一瞬が勝負を決する。


「フレイムソーサー!」


左手に残った魔力は詠唱を受け、その形を変じる。


炎の円盤


そう形容するしかないだろう。


薄く制御された炎は高速で回転し火柱が刃となる。


「おりゃああああああああああ!!」


気合いとともに振り下ろされた炎の刃が


山オオカミの胴体を真っ二つに切り裂く。


なかなかいい筋だな。


「終わったかー」


「うん!」


笑顔で振り返ってくるが、先程オオカミをかっ捌いた時の返り血でもはや化け物だ。


「気持ちわりいから、ちょっとこっちくんな」


「そんなこと言わずに、一緒にお昼食べようよ〜」


ニマニマしながら近寄ってくるマリナ。ゾンビかよ。


「せめて血落としてこい。ちょっと先に川あったろ」


「あーい」


ここに来る途中の街道沿いにあったので、二十分もすれば戻るだろう。


その間に昼飯の準備だな。


「あ、火つけて貰えばよかった」


火打石で我慢するか。

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