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謎の宝玉

執拗に追いかけてくるぐちょぐちゅのマリナ。


最終的には川に叩き落とし焚火で温まったのは昨日の話。



森から帰還した俺たちの戦利品は爆散したジャイアントカメルーンから


回収できた比較的状態の良い鱗と甲殻が少し。


後は爆発と一緒に奴の体内から転がり出したと思われる、紫色の玉。


こいつの正体が謎のため、鑑定を行うべくリンネルネまで戻ることとした。


多少日は落ちていたが、マリナの光の魔法のおかげで街灯のないこのあたりの道も無事に移動できたのは収穫だ。


ただ、やたらと虫が寄ってくるのは鬱陶しかったが。


とりあえず家の温かい寝床で眠れたので良しとする。



早速鑑定を行うべくギルドの出張所へ向かうと、ちょうど掃除をしていた職員さんに出くわす。


「レイちゃん、おはよう」


「アートさん、おはようございます。お隣のマリナさんとは初めましてになりますね。


ギルドから派遣されているレトラ・パーレイです。以後お見知り置きを」


ぺコンとお辞儀をするレトラ。その頭には犬耳が生えており、お辞儀と一緒にピクピク動く。


ギルドの制服に身を包んだ彼女は犬の獣人だ。


獣人達が反乱を起こした獅子王戦役であるが、ソウイチのかねてからの願いもあり獣人との


共存をギルド主導で行った結果、現在のように市民にも何とか受け入れられている。


いまだ禍根のの折る部分もちろん存在するがそれは時間とともに解決するしかないだろう。



「ところでレイちゃん。ギルドから他の職員の人も派遣されて来たんだっけ?」


「そうなんですよ。ちょうど今朝こちらに赴任されたばかりです。中でお仕事の準備されていると思うので挨拶してあげてください。きっと喜びますから」


きっと喜ぶってどういうこっちゃ。俺のファンとか?んなわけないか。


どっちみち鑑定するのが目的だから行くんだけどな。


出張所の簡素な扉を開くと、長机が並ぶ一角に資料が山積みにされている。


「いらっしゃいませ」


書類の山の中からヒョコっと顔を出してきたのは見覚えのある顔だ。


整った顔たちに切れ長の目。


何より特徴的なのはとがったその耳。


随分と懐かしいのが出てきた。


メルト。


ソウイチと共に、賢狼 ベイオウルフを討ち取った際に、奴の根城で捕虜にされていた

エルフの少女。


ベイオウルフとの戦闘で負った傷を癒す為に暫く身動きの取れなかった俺たちの面倒を見てくれていた。


こんなところで再開するとは。



「アート様。お久しぶりです。活躍はかねてより耳にしておりました。またお目にかかれて光栄です」


「相変わらず堅苦しいな。元気してたか」


「ええ。皆様にこの身を救って頂いた後は暫く森に戻っていたのですが、縁あってギルドに出入りさせて頂いています。それがこのような形でアート様のお役に立てるようになるとは思ってもおりませんでした」


「俺も驚いたけどな。でも、すまねえ。お前に貰った巡魂の霊石砕いちまってよ。あれ、メルトのところの村の大事なものだったんだろ」


「謝らないで下さい。アレは私がアート様に託した物。どの様に使われても自由ですし、お役に立てたのならそれが一番です。村の者達も誰も恨んではおりませんよ。それよりも、あの石の呪いで随分苦労されたと」


「お陰様で歩く事件簿なんて言われてるよ。命があっただけ儲けもんだ。ソウイチの分もしっかりやんねえとな」


メルトの顔が少し曇る。


やはりソウイチを失った悲しみは、あいつに世話になったやつには大なり小なりあるんだろう。


俺だっていまだに完全に吹っ切れたとは言えないしな。




「先程から、気になっていたのですがそちらのお方は?」


マリナの方に視線を移す。


「紹介が遅れたな。こいつはマリナ。俺が面倒みることになった、ストレンジだ」


「サガミ マリナです。メルトさんだっけ、よろしく!」


マリナが差し出した手の平をしげしげと眺め、失礼と、クンクンと匂いを嗅ぎ始めるメルト。


そして、ポロっとその瞳から一筋の涙が流れ落ちる。


「あれ、メルトさんどうしたの!?もしかしてあたしの手臭かったの?あのトカゲのせいか。許すまじ」


「いえ、違うんです。マリナ様からソウイチ様と同じ匂いがして、懐かしくてつい」


「そういえば、エルフは鼻が効くんだったか。こいつとソウイチは同郷らしいから同じ匂いなのかもな」


「おっしゃる通りです。正確には魔力の波動を匂いとして認識しています。種族によって波動は異なりますが、ソウイチ様もマリナ様も他の人間の方とは少しだけ違うのです。何がとはうまく言えませんが、どこか温かみのある。という感じでしょうか」


自分の体をあちこちクンクンしていたマリナも話を聞いてやっと納得した様子。


ちなみにマリナには内緒だが、トカゲのせいで臭いのは数日続くので正直まだ臭い。本人の鼻は既に麻痺しているようで匂いは感じていないみたいだが。


装備の方がなかなかに匂いがとれなさそうだったので、現在リックが絶賛洗濯中。


「ところでメルト。お前が来ているということは、鑑定なんかもお前が担当か?」


「そのために来たようなものですよ。そちらの術に関しては少々自信がありますので」


「そこは俺も信頼してるよ。早速で悪いが、こいつを見てくれ」


ポーチから件の玉を取り出す。それを見た途端にメルトの表情が曇る。


「やはりアート様のところでも見つかりましたか。ほかの地点で討伐されたモンスターからも同じようなものがいくつか見つかっています」


「その口ぶりから察すると何か良くない知らせも一緒か」


「良くないというよりは鑑定の結果があやふやで結論が出せていないのが現状です。というのも、このアイテム自体は宝石の玉に魔力を込めたもの。発動する魔法は弱っていてはっきりしませんが、おそらくテイムか遠隔操作の類です」


「そこまで分っていて何が問題なんだ」


「石の産地が分からないのです。主な産地の宝石のサンプルはギルドに保管されているのですがそのどれとも一致しない。つまり我々の把握していない鉱脈を何者かが発見したか、ギルドの管轄外の地域から持ち込まれたかということです。」


「鉱脈が発見されたくらいならなんとでもなると思うが、後者だと厄介だな」


ギルドの管轄外の地域とはこの大陸の僻地。そういった地域の常として強力なモンスターが存在する。


そして、そもそもギルドの力が機能しない別の大陸。


現在この世界には四つの大陸が確認はされているが互いの交流は少ない。


理由はシンプルだ。


海を渡れない。


海には強力なモンスターが多く船での移動は確実に阻害されてしまう。



俺たちの暮らすこの大陸はベルドラム。


最も近い大陸は北に位置する、グランドレイク。


次に近いのは南に位置する、セイルロート。


そして西に位置する、レイブラック。


グランドレイクとはギリギリ交流を持っているが、ほかの二つの大陸とは碌に交流は持てていない。


海路が使えないとなると残る手段は空路となるが空にも飛竜をはじめ強力なモンスターは多い。


なので空を移動でき者はドラゴンレベルのモンスターをテイムできる高レベルの冒険者やそれに準ずる能力を持つものに限られる。


つまり他の大陸にしろ僻地にしろそこから産出されたアイテムが悪用されているということは、強力な力をもつ何者かがこちらに敵意を持っているということ。


どちらにしてもいい話じゃないのは確実だ。



「それでギルドとしてはどう動くんだ」


「しばらくはこの宝玉の解析を進めます。術式の解析と産地の分析、平行して進めますが術式の解析は一週間もあれば完了するでしょう。産地に関してですが私の見立てではおそらく大陸内のものかと。あくまで直観ですが」


「その直感が当たることを祈ってるよ。ならこの件についてはしばらくギルドからの連絡を待つとするか。話は変わるが、メルトが来てるならちょうどいい。マリナのレベルの鑑定もお願いできるか。こっちに来てから日も浅いしまだレベルもはっきりしてなくてな」


「そういうことならお任せください。それではマリナさん、こちらに」


メルトがマリナの手を取り、静かに瞳を閉じる。


二人の手にぼんやりと魔力の光が現れる。


しばらくその光景を眺めていると、光も弱まり、鑑定が終了する。


メルトが紙に書き起こした結果を三人でのぞき込む。



サガミマリナ


Lv.13


属性 炎 光 ??


筋力 120


魔力 350


器用 200

 

瞑想 400


パッシブスキル


・レプタイルキラー

爬虫類と対峙した際にすべてのパラメーターが上昇する


「ほう、思ったよりもレベル上がってるな。この前のカメレオンが効いてるか」


「おじさん、これ何?レベルってまんまゲームじゃん。」


「ソウイチも同じこと言ってたよ。俺たちの見立てじゃ、この世界からお前たちの世界に戻た奴がゲームっていうかたちで広めていったんじゃないかと思ってるんだが」


「フーン。それで、これって強いの?基準がよくわかんないんだけど」


「レベルの割に魔法関連の能力は高い方だな。筋力は少し低いが許容範囲ってところ、器用さは普通だな。後はパッシブスキルも発現してるのはなかなか珍しいぞ。結論として、けっこうやるじゃねーか。ってところだ」


「えへへっ、褒められた。あと属性の??ってなに」


「そこはこの世界に召喚された時のおまけでもう一つ属性があるんだよ。お前の場合まだそっちの


能力は目覚めてないみたいだけどな」


「気長にまつしかないのかー。そういえば、あたしのも見たんだからおじさんのも見せてよー」


「俺もずいぶんレベル測ってないないしなぁ。メルト頼めるか?」


「分りました。それではお手を拝借します」


同じように鑑定結果を転記してもらうと


アート・ヴィンドラム


Lv.74


属性 風 強化 【雷】


筋力 3200


魔力 2400


器用 4500


瞑想 1200


パッシブスキル


・勇者の願い

生命の危機に瀕してパラメーターが上昇及び属性雷の開放


・巡魂の呪い

スキル達人芸を得る。達人芸を発動すると技を得るまでに必要な苦難を経験する


・ブレスオブドラゴン

竜種とのコミュニケーションが可能


・達人芸

過去に見聞きしたスキルを任意に発動可能。

瞑想の値に応じてスキルの作成も可能。


その他32



「お、ちょっとレベル上がってるじゃねーか。さすがにスキルは新しく発現してないか」


「それよりもこのレベルの高さ自体に私は驚きを禁じ得ないのですが。賢狼と戦った際がLv54でしたから、あの頃よりもさらにお強くなられたということですか」


「その分苦労はしたけどな。いまならライオネルともまともにやり合えるとは思うが」


「おじさんとあたしのパラメーターが桁違いすぎて引くんですけど」


「伊達に歳は食ってねえってことよ。お前もそのうち強くなれるから安心しろ」


「別に心配はしてないんだけどね。そんなに強いならあたし居る意味なくない?」


少しふくれっ面のマリナ。


「そんなことないぞ。お前がいてくれたら、旅先でわざわざ火起こさなくて済むしな」


先ほどまでのふくれっ面がに怒気が含まれていく。


「あたしはライターじゃなあああああああああああああああああああい!うがーーー!」


ライターが何かは知らんが、手から炎を出して襲い掛かってくるあたりそこらのモンスターよりよっぽど凶悪な気もする。


メルトがプッと吹き出し俺たちを面白そうに眺めるまえで、しばらくマリナに追い掛け回される。


その後掃除を終えて戻て来たレイちゃんに「こんな狭いところでおばれないでください!」と一括さ


れ、二人仲良く正座させられたのだった。

レベルの項目について。

今回初めてレベルという概念を放り込み増したが各数値について簡単に解説。


筋力

要するに筋肉。

筋肉にも遅筋や速筋が存在するようにこのパラメーターの中にも、

純粋な力の強さ。

素早さ。

体力。

打たれ強さ。

といったものがたくさん含まれます。

筋力1000のボディービルダーもいれば

筋力1000のマラソン選手も存在するわけです。


魔力

こちらは体内に流れる魔力の送料となります。

ゲーム的に言うならわかりやすくMPとなります。


器用

これは武器の取り扱いに関するもの。

手先の器用さ

勘の良さ

習熟の速さ

応用力

といった能力です。


瞑想

この世界では魔法はあくまで本人のイメージに依存するものです。

簡単に言うとこの数値が高ければ高いほどより高度な魔法が使えます。

そして、魔法を使う際に重要なのは術者の意識。

使う人が「難しい」「不自然」「常識外れ」と考える度合いが強いほど、魔法の発動に必要な魔力が高くなります。


例えるなら

小学生が100円のお菓子を買うのと、社会人が100円のお菓子を買うのと、心理的なハードルは異なりますよね。

この心理的なハードルを下げるのが瞑想という値です。

逆にお菓子の代わりに魔法という現象を発現させるために必要なのが魔力です。


魔法とは、無理や無茶を現実にするために物理法則や時には運命といったものを捻じ曲げるものということになります。


パッシブスキルとは

経験や訓練によって獲得できるもの。

その獲得の条件は実に様々です。


アイテムによって得ることも可能ですし中には一時的に

スキルを発動させるものもあります。

マリナが使ったマジックポーションもその一つです。


また、経験によってスキル自体がアップグレードされることもあります。

効果が上昇するものもあれば、対象が拡大したり、他のスキルと合体し、別のスキルになることもあります。





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