ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた件
皆様。
突然ですが皆さんは勇者として異世界に召喚されることになりました。
ええ、ええ。気持ちはわかります。
元の世界に返してくれというリクエストにはお答えできかねます。
異世界転移あるあるってやつですね。
まあ理不尽に感じるところはあるでしょうが、雷に打たれたようなものだと思って諦めてください。
つきましては皆さんに、ギフトを授けたいと存じます。
いわゆる「オレツエー系ギフト」ってやつです。
このギフトがあれば召喚先でも大活躍間違いなし! ですよ!!
ただ、ギフトには数に限りがございまして……。
ということで仕方がないので、ギフトは早いもの順にしようと思います!
大当たりのSSSランクギフトは1点、SSランクギフトも1点、Sランクギフトは3点です!
さあ、早いもの勝ちですよ! 急いで、急いで!!
——————————————
……だ、そうだ。
あれは昼頃だっただろうか。
仕事中に突然めまいがして意識を失って、目が覚めたと思ったら知らない空間に立っていた時にはビビったけれど、思えばあれが召喚の予兆というやつだったのだろう。
足元に魔法陣が浮かんで……とかそういう演出がなかったのは残念だが、まあそんなことに文句を言ったところで仕方ないか。
とにかく、俺が転送された異空間には俺以外の人間も大勢いて、今は「我先に!」とギフトの奪い合いをしている。
俺は……というと、半ば諦めモードに入っていた。
俺は運動神経もイマイチだし、かといって何か特技があるわけでもない。
強いて何かあげるとすれば、漫画やライトノベルを結構読むこともあって妄想力だけは人並み以上だと自負しているが、それでも上には上がいると思う。
今血眼になって、行列を押しのけてまで目当てのスキルに向かって一直線なああいう輩と比べたら、俺なんてそれこそ石ころみたいなものだ、と思う。
にしても、いかにもリア充っぽそうなチャラい若者や、堅物っぽそうなスーツを着たおっさんまで必死にギフトの争奪戦に参加していて草が生えるんだけど。
……多分、俺みたいな落ちこぼれとああいうエリートの違いは「こういう大事な局面で本気になれるかどうか」の違いだったんだろうなぁ。
まあ、今更俺なんかが頑張ろうって気にもならないけどな。
まあ、最低ランクのギフトでも召喚先の世界のちょっとした有名人になれるぐらいの有能スキルではあるらしいからそれでもいいかな。
元の世界に戻りたいとも思わないし、召喚先の世界で勇者になりたいなんて、考えもしない。
なんかパッとしないけど珍しいぐらいの能力を手に入れて、悠々自適にスローライフを・・・ってのも悪くない。
「やあ、君はあの争いに参加しないのかい?」
「……いや、お前誰だよ」
「私? まあ名乗るほどのものでもない。多分君と同じ立場の召喚者ってやつかな。次の世界では勇者になるつもりだから、顔だけでも覚えといて!」
「だったらこっちも名乗らなくてもいいよな。で、何の用だ?」
「いやいや。だから、もしかしてさっきのアナウンスを聞いてなかったのかな? ぼーっとしてると、優秀なギフトはどんどんなくなっていくよ?」
「そういうお前は、いいのかよ。俺みたいなのを相手していて……」
「私? 私は大丈夫。ほら、私のギフトはもう確保してあるから!」
「……ちゃっかりしてるな。それで『次の世界の勇者』ってわけか。だったら俺は、次の世界では浮浪者になるだろうから、顔だけでも覚えといてくれ。んでもってもし顔を覚えていたらなんぞお恵みでもよこしてくれ」
「君、面白いことを言うね! わかった。だったら勇者パーティーの荷物持ちぐらいにはしてあげよう! ……さあ、他の人は全員選び終わって、残るは君のギフトだけだよ! 私は先に召喚先の世界に行ってるね! んじゃ、またね!!」
「……騒がしい女だ」
見知らぬ女性に声をかけられたので、ビビりながら適当に話をしていたら、いつの間にかまわりは静かになっていた。
あの女も光り輝くゲートを通り抜けてからは気配が消えた。
この空間に残されたのは、俺一人。
ってことはギフトの残りもあとひとつか。
「残り物には福がある」なんて言うが、この場合においてはそんなことはあり得ないだろう。
スキル名 :洗浄魔法
スキルランク:Bランク
概要 :指先で触れた場所を少しずつ綺麗にしていくスキル。
俺に残されたスキルは掃除用のスキルだった。
俺の次の転職先はどうやら清掃員が向いていそうかな?
想像の数倍汎用性のないスキルでびっくりしてるけど、まあいいや。
どうせ俺なんて、清掃員がお似合いってことで・・・
おめでとうございます!
ラストワン賞を引かれた方に、素敵な景品がございます!
それではおまけのギフトをお受け取りください!!
スキル名 :聖剣/魔剣召喚
スキルランク:ラストワン
概要 :聖剣及び魔剣の召喚が可能(時間制限あり)。召喚可能時間の制限も召喚者のレベルに応じて変化する。召喚者のレベルが1の場合、30秒間召喚が可能。30秒経過で自動的に消滅し、任意のタイミングで消滅させることも可能。消滅後は、召喚者のレベルに応じた一定時間再召喚が行えない。召喚者のレベルが1の場合、召喚時間1秒につき5分間再召喚不可。魔剣と聖剣は別枠扱いのため、同時召喚可能。魔剣消滅後に聖剣召喚のようなことも可能。魔剣召喚時、魔剣を保持している人間は『スキル:魔化』が発動し、魔族と同等の魔力適性を獲得する。聖剣召喚時、聖剣を保持している人間は『スキル:聖化』が発動し、聖人と同等の神聖力適性を獲得する。魔剣スキル:……
なんだこれ。
おまけってレベルじゃない……。