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異世界に落ちてきた男  作者: 岡本沙織
第6部「テクノロジー」
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第67回「逮捕」

 以前何かの折に「津田は上機嫌な時ほど恐ろしい」と長谷川氏から聞いていたので終始嫌な予感がしていたが、それはどうやら杞憂だったらしく特に何事もなく和やかにこの日の会談は済んだ。ガーボル氏はその日のうちに大陸(イースタシア本土の意として使われている)へ渡り、僕とブラッドは日付が変わる前に帰宅することができた。

 それからしばらくは普段と変わらない、何やら難しい内容の書類へのサインやイースタシアの要人と一言二言の無難な会話をするだけの日々が続いた。休日は相変わらずブラッドやオリガと過ごしたが、オリガに関しては最近イースタシア人の友達ができたらしく「白くて羨ましい」だの「お人形さんみたい」だの言われていい気になっているようだった。どこで知り合ったのか聞くと「近所の公園でナンパされた」などとわけのわからないことを言っていたが、子供の順応の早さにはやはり目を見張るものがある。同時にそのうち彼氏でも連れてきやしないか、などと実の妹にさえ抱いたことのない、父親のような心持ちさえ感じたのには自分自身でも少し驚いた。


 状況が一変したのは月曜日の夕方のニュースを見ていた時のことで、映像のテロップは「ガーボル社長が詐欺容疑で逮捕」だった。これはリヒャルトすら事前に何も聞かされておらず、当初は親衛隊の陰謀ではないかと予測されたが実際は大きく違った。事の発端はスマートフォン事業の失敗で、巨額の広告費を使ってあたかも大ヒットしているように装いながら販売台数は初週を境として大幅に下落しV2社の赤字は倒産寸前にまで達した。そこで資金調達に焦ったガーボル氏はスマホ事業の負債を隠したまま手当たり次第に融資を募ったが、事態を気付いた複数の投資家が動いたことで粉飾が発覚、逮捕に至ったようだった。またガーボル氏を使っていた国防軍は全ての責任を彼に押し付け、まるで事業そのものが彼1人のスタンドプレーであるかのように吹聴した。


 後に聞いた話では、彼の身を案じたヴィンデ、クレアとアシュレイの3人は(シュナイダー博士から止められもしたが)ガーボル氏が収監されている留置所に押しかけ半ば強引に接見したが、彼の顔は明らかにやつれ憔悴した様子で一見すると誰だかわからなったほどだったという。そしてガーボル氏は彼女たちに向けて作り笑いを浮かべるとおもむろに「僕の口に舌は付いているか」などと妙なことを彼女たちへ尋ねたそうだ。いよいよ心配になりながらクレアが「ええ、以前と何もお変わりございません」と答えると、ガーボル氏は眉間にシワを寄せ神妙な面持ちで「よろしい、ならば問題ない」と呟いたという。

 そこにデリカシーという観点がないアシュレイが「でもあなたは全て失ったのですよ」と余計な口を挟むと、ガーボル氏は不思議そうな顔をしてしばらく沈黙した後、「ああ、会社のことか。」と鼻で笑い、「あんなものはまた作ればいい」と続けたらしい。

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