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Moon①
「看板もつけたしOPENしよ」
『今日は、どんなお客様が来るかなぁ…』
私は、声がした方を振り返った。
だけど、誰もいない。
今のは、あの子の声だと思ったんだけど…。
『ここだよー』
声は、地面から聞こえてきた。
下を見ると、お店のドアに隠れて私を見ているベアがいた。
「あっ、ベア。危ないでしょ」
ベアは、オレンジ色のくまのぬいぐるみでお腹に月のマークが刺繍してある。
いつもニコニコしていて、可愛い子。
本当の名前は、Moon Bearなんだけど、ベアの方が、呼びやすかったりする。
『だって、せいかちゃんがいなかったから…。寂しかった…』
ベアは、しょんぼりとしている。
そんなベアを見たくなくて、名前を呼ぶ。
「ベア」
ひょいっと持ち上げて、抱っこをするとニコニコしている。
『わーい!!あっ、お店OPENでしょ?』
そうだった…。
私は、看板を見上げた。
"Moon"と書かれた看板は、私とベアでつくったもの。
板に、色を塗って字を書いただけ。
背景は、藍色で小さな星がたくさん散りばめられている。