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口裂け女
「わたし、キレイ?」
高校三年生の夏。俺は、異様な女に声をかけられた。
ボサボサの黒髪に、顔を覆う白いマスク…目が細くねじまがり、気味の悪い笑みを浮かべている。
「わたし、キれい?」
女は頭を左右に揺らしながら、もう一度聞いてきた。ニタニタと、楽しそうに。
俺は怖くなり、否定の言葉を口にすることができなかった。
「き…、きれいです…ッ」
すると女は嬉しそうに、
「そう………………………これでもかぁっ!!!」
勢いよく、マスクを外した。
…あごに髭が生えていた。
「……ぅ男かいぃいっ!!!」
「てへ♪」
「『てへ』じゃねぇえええ!!ただのオカマじゃねぇか!びっくりさせやがって」
「オカマじゃない、女装癖だ」
「どっちでもいいわ!」
めでたしめでたし