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北の、寒さの厳しい村

次は秋の女王様、エステル様を探します。しかし、一体どこを探すというのでしょうか。春のあくまとは違い、魔女はどこでもいける、と本には書かれていました。悪い魔女はどこかに隠れているのでしょうか。




 次は秋の女王様を探しに行きますが、夏の女王様は秋の女王エステル様がどこにいるかも、魔女の居場所さえも分かりません。困ったゾーマ様に、アリフはとある提案をしました。それは北の、寒さの厳しい村に住むという、“呪い師“に居場所を占ってもらう、ということでした。


「呪い師は魔女とは違い、人のためにと動く心優しい御方だと聞きます。夏の女王様、そちらお尋ねになってはいかがでしょうか」

「そうですね、何もわからず歩き回っても、私のかわいい妹は見つかりませんもの」




 2人は北に進みます、途中で大きな狼の群れに会いましたが、狼たちは屈強な体で、大きな斧を振り回すアリフと、近づけば温かい夏の太陽に焼かれているような気持ちになるゾーマ様に、あっという間に逃げてしまいました。


「弱い狼なのね」

「いいえ、夏の女王様。彼らはあなたの背負う“夏”が苦手なのですよ」

「まぁ、私は夏を持つ娘だからだったのね」


 大きな口を開け、大きな声をあげて笑うゾーマ様は太陽がきらめくような美しさでした。アリフは、この方に付き従っていくこの旅にやってこれたことを、神に感謝しました。




 こうして遠い遠い道のりを越え、寒さが厳しい北の村にやってきました。気が付けば、国の季節はずっと冬のままで、北の村はひときわ寒さに凍えておりました。隣の国は夏になったといいますから、本当ならゾーマ様が塔の中にいなければなりませんが、秋の女王様を探すために、塔からは遠く離れたこの村にやってきているのです。


「あぁ、夏の女王様。どうか私たちの村を温めてください」

「温かい太陽で空を照らしてください」


 村人の訴えに、ゾーマ様は涙をこぼして言います。


「みなさま本当にごめんなさい、無理なのです、私たちは塔の中にいるときだけ、不思議な魔法が使えるのです。王妃様が私たちにかけたまじないで、私たちは塔にいるときだけ、季節をこの国に広げることができるのです」


 その代わりにと言わんばかりに、ゾーマ様はできる限りの人と手を握られました。夏を持つ娘が手を握ると、吹雪に凍える人々の体も、夏のまっぴるまにお外でひなたぼっこをしているように、かっか、かっかと熱くなるのでした。


「夏を持つ女王様は、私たちの体に夏をくださった」

「女王様、ありがとうございます」



 ゾーマ様は、日頃感じることの少ない感謝の心を間近で感じました。そうです、ゾーマ様が持つ夏は、普段季節が廻ってくるたびに、必要とはいえど“わずらわしい”ものなのです――だって、誰が好き好んで、暑い日にお外に出るのでしょうか。出たいのはきっと、7日鳴いて死んでしまう灰色の虫と、ぐんぐん緑を増やす森の木たちだけでしょう!




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