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春を連れ去るあくま

『何故冬の女王様は塔を離れないのでしょうか。

何故春の女王様は塔に訪れないのでしょうか。


どうかこの季節を廻らせてください。』


季節廻る国の童話(http://marchen2017.hinaproject.com/teaser/ )より



 冬の女王様は、外に出ることを恐れています、そしてやってこない春の女王様を待ち続けています。しかし、春の女王様はいったいどこに行かれたのでしょうか。




 冬の女王様には、悲しみであまり吹雪を起こさないように、と告げ双子の女王様は塔を出ました。秋の女王、夏の女王がともに塔の中にいたからか、少しだけ冬の寒さが和らいでいました。


「秋の女王様ではありませんか」


 広場のお触れのそばで、1人の老婆がエレスト様に声をかけました。秋の女王様は彼女のことをよく知っているようで、親しげにお話をされます。夏の女王様はどこかで見たことがあると、思い出そうとしましたが思い出せません。


「あら、あなたは紡ぎ糸のおばあさま。寒さで膝は痛まない?」

「痛くて痛くてしょうもないですよ、しかしね、春の女王様が行方知れずと聞いて、春のあくまについてお伝えをしようと思ったのですよ」

「春のあくまですって?」


 夏の女王ゾーマ様は大きな声をあげて驚かれました。知っておられたのですか、と紡ぎ糸の老婆も驚きましたが、詳しく伝えましょう、と2人は老婆の工房へと招かれたのでした。



「どうぞ、温かい飲み物です。やけどをしないよう気を付けなさい」

「ありがとうございます」


 老婆はしばらくすると、春を連れ去るあくまについて語り始めました。


 春を連れ去るあくまは、人で言えば美しくたくましい男の姿をしていること。

 そして春を連れ去るあくまは、春をその美しさで誘惑するのだということ。

 春は恋に落ちると、自らの足でそのあくまの元へ駆けていってしまうこと。


「春の女王様がいないということは、恋に落ちて自分から城を出ていかれてしまったのかもしれませんね」


 老婆の声は、なぜだか嬉しそうでした。

 そこで夏の女王様は、その老婆の正体をようやく思い出したのです。


「エレスト!」


 老婆から出された飲み物に、口をつけたエレスト様は長い長い眠りにつかれました。なんということでしょう、ゾーマ様が動く暇もない間に、老婆は「悪い魔女」の姿になり、エレスト様を拐してしまったのでした。




お読みいただきありがとうございます。

次の更新は少しあきます。5日月曜日頃をめどに考えています。

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