冬ののろい
『何故冬の女王様は塔を離れないのでしょうか。
何故春の女王様は塔に訪れないのでしょうか。
どうかこの季節を廻らせてください。』
季節廻る国の童話(http://marchen2017.hinaproject.com/teaser/ )より
お部屋に戻られた双子の女王様は、それぞれ見つけた本を読みました。そしてまず、姉のゾーマ様が、妹ヘレスト様に「冬ののろいとはね……」と語りかけました。
「冬ののろいはとてもとても、恐ろしいものなのです」
「どう恐ろしいのですか、お姉さま」
「それはね、冬を持つ娘が生まれたときに、その祝いの席にやってきた悪い魔女がかけたそうなのです」
「まぁ!なんということでしょう」
「冬を持つ娘は、人を愛してしまうと冬の力を失ってしまうそうなのです。そして魔女がその冬の力を手に入れてしまうそうなのですよ」
「まぁ大変!どうにかしなければいけませんわ」
双子の女王様たちは、まず詳しく話を聞かなければならないと、塔に向かいました。
季節の塔に入れるのは、女王様たちだけです。なぜなら塔の入り口は、女王様たちの歌声を楽しみにする魔法の茨があるからです。茨は夏と秋の女王様2人の歌声を一度に聞けたと、大喜びで2人を塔に招きいれました。
「ウィンテール?ウィンテール!あなたの姉が来ましたよ」
「かわいい妹、まさかあなたには冬ののろいがかけられているのではありませんか?」
塔の中で1人寂しく座っていた冬の女王、ウィンテール様は驚いて椅子から落ちてしまわれました。そしてお姉さまたちが近寄れば、涙をこぼして言いました。
「辛かったのです。私は人を愛してはいけないと、何度もお母さまに言われました。だから私は人とお会いしたくなかったのです。でも私たちはいつか“生涯の伴侶”を見つけなければなりませんでしょう?私ももう16歳、いつ愛する人を見つけてしまうか、心配だったのです」
この国には、豊かな恵みがあります。だから王様は気をよくして、ウィンテール様とレンテ様が16歳になったとき、彼女たちにふさわしい伴侶を見つけるべく、舞踏会を開くとおっしゃっていたのです。大臣からそれを聞いたウィンテール様は、舞踏会をこの寒い冬に行うことがないことを知っていました。だから塔から出ようとしなかったのです。
「15歳になるときも、私は塔から出たくないと、レンテに言いました。レンテは王様をなだめて、舞踏会はしないと約束させるから、今年は塔を出ましょうと言ってくれたのです。でも、その“約束”をもらったらやってくる、と言ったレンテは姿を見せないのです」
さめざめと泣く妹に、双子の女王様は困ってしまいました。冬ののろいの正体はわかり、かわいい妹ウィンテールは、そののろいに”おびえて”いただけなのですから。でも、約束を取り付けると告げたレンテは、城にはいません。
そこで、秋の女王様、エレスト様が思い出したように声をあげました。
「春を連れ去るあくまですわ!」
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