王様の願い
『困った王様はお触れを出しました。
“冬の女王を春の女王を交替させた者には好きな褒美を取らせよう。ただし、冬の女王が次に廻って来れなくなる方法は認めない。季節を廻らせることを妨げてはならない。”』
季節廻る国の童話(http://marchen2017.hinaproject.com/teaser/ )より
ある、お空の宝石が舞った日の夜、1人の若者が城の門をたたきました。若い門番は、早く見張りの番を交替して眠りたかったので、追い返そうとしました。しかし年老いた門番は、そんな若者の悲しみの表情を見て、城の中に入れてやりました。
王様が出てこられない部屋の前に、若者はやってきて、すぐそばにいた兵隊のように、膝をつき、涙をこぼして言うのです。
「私は季節廻る国に生まれ、育ち、今まで感謝してもしきれません。しかし王様、どうして私たちはこの冬の中、これ以上耐えられるというのでしょうか。春の女王様がいなくなってから、すでに太陽は何度も何度もお顔を出し、我が家には蓄えがありません。今日も私はたった両手に乗るだけの米を炊いて、両親と祖父母、そして5人の弟妹と分けあって1日を過ごしたのです」
もうこのままでは死んでしまいます。その若者の”訴え“にとうとう困り果てた王様は、悲しんではいられないとお部屋をお出になられたのでした。
その翌朝、昨日のようなお空の宝石は舞いませんでしたが、王様は兵隊長に、お触れを出すように伝えました。国の真ん中にある塔の下には、お触れが張り出される広場があります。多くの人がそのお触れを見ようとやってきました。
お触れはこう書かれていました。
【わが娘、春のレンテと冬のウィンテールは、交替ができていない。
春の女王レンテを探し出し、見事冬の女王と交替させることができたものには、
好きなだけ褒美を取らせる。
ただし、冬の女王が次の冬に再び塔に戻ってくることができるように、
冬が廻って来ない方法は、認められない。
季節は廻らなければならない】
国の人は皆、春の女王様が城を出ていなくなってしまったと聞き、彼女を探し始めました。王様は冬の蓄えがなくなった人に城にある蓄えを渡し、春の女王レンテ様の帰りを待ちました。
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