長い長い冬
『ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。
冬の女王様が塔に入ったままなのです。
辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。』
季節廻る国の童話(http://marchen2017.hinaproject.com/teaser/ )より
それはある年の、お話でした。
ある日、かすかな春の訪れを感じさせるそよかぜが、塔にいらっしゃる冬の女王様に声をかけました。交替の時が、今年もやってきたのです。しかし塔から出てくるのを、お迎えの兵隊がいくら待てども、ウィンテール様は出てきません。
心配になった兵隊長は王様の御前に行き、王様にこう言いました。
「ウィンテール様はどこかおかげんが悪いのでしょうか。私たちは3度太陽が顔を出し、2度月と挨拶をしましたが、ウィンテール様は出てこないのです」
王様は、寒い雪の中で長い間凍えながら待っていた、という兵隊長たちに家に帰るよう言いました。そして王様自ら、塔の前に立ちました。
「かわいい私の娘、ウィンテールや。もうそよ風がお前をむかえに来た。一緒に城へ戻ろうではないか」
「いいえ、王様。私は塔から出ません。レンテはどこにおられますか?レンテがいなければ、私は塔から出られません」
塔の一番高いところにある小窓から、白い肌の娘――冬の女王、ウィンテール様が顔を出されたのでした。王様は交替の時に必ずやってくる、もう1人の女王がいないことに気が付きました。慌ててお城の門番にたずねると、若い門番はこう言いました。
「春の女王様は、4つ前に太陽が出るときに、大急ぎで城を出られましたよ」
年老いた門番もおなじように言いました。
「レンテ様は、冬のウィンテール様と交替するからと、城を出られましたよ」
王様はレンテ様を探すよう、城にいる兵隊みんなに言いました。今まで大切に大切にしてきた春の女王様が、とつぜん姿を消してしまったのですから、そのお父様である王様はお部屋から一歩も出られなくなるほど、悲しみにとらわれてしまいました。
王様の悲しみは、城の外にも伝わり、季節廻る国は大きな悲しみにつつまれました。その悲しみが大きくなればなるほど、冬の女王ウィンテール様も悲しまれ、国はどんどん、深い雪におおわれていきます。誰も冬をとめることはできません。できるのは……春を持つ女王、レンテ様だけなのです。
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