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持たざる万能魔導陣師  作者: 水戸 松平
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男女間抗争と魔導の目覚め 5

 比呂彦は帰宅した後、家族の前ではいつも通り振る舞い、自室でベッドに潜り込み意気消沈していた。

 順子の顔面蹴りによる損傷は、学校で階段から落ちたという事にした。


「ウェイングレバー、何かあったの?」

 

「.........」


 お約束に構っていられる余裕はない。


「なに? 無視する気? もう根を上げてしまったのね。だらしないわ」


 サラの直球の言葉と学校での自分が重なってしまい泣いてしまった。


「う"......う"..う" う" う" ぅ!!!」


「な....何よ! また泣くの? 泣き虫!」


「な" い" て" な" い" も" ん" ! !」


「泣いてるじゃない。....何かあったんでしょ?」


 サラは仕方ないと言う声色でもう一度比呂彦に問いただした。比呂彦が話せる程度まで泣き止むのを待ち、その後、今日起きた出来事を聞いてあげた。






「なるほどね。今直ぐ阿蘇弥を消滅させに行くわよ! 着いてきなさい!!」


「ちょっと待って! サラが出たらめんどくさい事になるから!! そもそもどこに行くの!」


 サラは凄い力で比呂彦を引っ張るが、比呂彦は全体重と備え付けの家具の力を使ってギリギリせき止める。


「何?泣き寝入りしようって言うの!? あなたねぇ!!.....もぅ」

「わかったわ! 今日からは実践的な修行よ!」


「実践? でもまだ魔法は使えないよね」


「そうよ。知識が不十分な状態で魔法を扱わせるわけにはいかないわ」

「私はエルフよ。身体的能力の高いの。そして、体術と剣術は嗜んでいるわ。どう? 阿蘇弥を八つ裂きにしてみたくはない?」


「剣術はダメだよ! でも、体術は教えて欲しい...教えて下さい!!」


 比呂彦はベッドから飛び降り、床で土下座する。サラは気分が高揚したのか両腕を組んで「よろしい」と言葉を放った後、しゃがんで比呂彦の頭をやさしく撫でた。


「まあ、近い内に体力の基礎トレーニングを始めるつもりだったのよ。何をするにも体力は必須になってくるから」

「でも、いつやり返す予定なの?夏休みを跨いでしまうと遅いと思うわ」


「そうなんだけど、今日水曜日の夜だから後、土日挟んで6日しかないよ」


「そう、なら月曜日までの5日間。月曜日は含まないから4日間ね。ふんふん....無理ね」


「ええーー!!! 無理ってどういう事!」


「まず、この短時間だと体術は無理ね。数個の型を覚えて素人同士の実践で使えるようにするには、どう頑張っても2週間は必要よ」

「魔法も、あなたが魔法陣を使えるようにセッティングするのには.....これはいけるかもしれないけど、知識が不十分な状態ではとても危険だわ。それに、あなた木金は学校休めないでしょう?休めればみっちり教えれるのだけれど…休んだら負けたようなものだものね。真由美を取り返すという土俵にも立てなくなるかもしれないわ」

「まあ、私が直接関わればなんてことないんだけど」


「それは...なんかダメな気がする。うまくやったとしても、僕が僕を嫌いになる。そんなの嫌だ」


 沈黙が流れる。サラには師匠としての信念がある。それは魔法の怖さを知っているからこそのものだ。

 比呂彦は悩む。真由美ちゃんを助けたい。だけど、サラの力を借りたくない。ん?何でサラの力を借りたらダメなの?それは、僕が僕の力だけで真由美ちゃんを助けなければいけないから。んん?何で僕の力だけで真由美ちゃんを助けたいといけないの?それは、僕が....僕が..ぼくが...


「いや違う! ダメだ! 僕は僕のことしか考えてなかったんだ! 自分なんかどうでもいい!! 真由美ちゃんを助けたい!!」

「サラ!! 一緒に戦ってほしい!!!」


 サラは今まで見た事もない満面の笑みで


「さすが私の弟子よ!!!」

「なら、分かってるでしょうね!」


「ああ! 今すぐ行こう!! 時間が惜しい」


 サラと比呂彦は書き置きを残して、旅の支度を始める。魔法陣を使うのに必要な魔石は闇市で扱われている旧魔導人形に埋め込まれている。闇市は、大都市の中の無法地帯、スラム街となった所に日毎に場所を変え営んでいるとの事だ。

 ヤマトから一番近い大都市は、第19大魔導収蔵図書館があった「第7都市フィニシェリンテ」だ。フェニシェリンテは緑化の進んだ都市で、ゆえに図書館も大樹を基礎にしていたのである。全体的な建物も有機物的な、アールヌーボーなデザインが多く、物理的な建設技術により建設する建物よりエルフが古代語で魔法を使って創った建物が多く、エルフ族も多く住んでいる珍しい都市でもある。

 

 比呂彦は、サラにフェニシェリンテの情報を教えてもらい、必要最低限のモノだけ携え、二人で静かに旅に出かけた。


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