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持たざる万能魔導陣師  作者: 水戸 松平
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ウィッチの秘密そして再び 3

「お疲れさまでした皆さん。しっかり授業は受けれましたか、八陣さん?」


 コリーナ女教師の妖しく鋭いぶっ込みがクラス全体の空気を一瞬にして凍らせる。


「は..はい.....」


 (今日は最悪の日だ)と昨日も思ったであろう事を二日続けて頭をよぎる。


「それは素晴らしいですね。ではその充実した授業中にしていたという考察を発表してもらいましょうか。クックックックック」


 コリーナ女教師のその妖しい微笑が教室内に響き渡る。


「あ...いや......その.........まだ..書けてなくて....これから書こうかなーと。あはは」


「書く?言葉足らずでしたね。私は口頭で発表しなさいと言いました。書く必要なんてありません。ではどうぞ」


(あ" あ" あ" あ" あ" あ" あ" あ" あ" あ" ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ!!!!)

(今日は本当に最悪の日だ!)


 本日二度目の強い思いも虚しく教壇へと招待された。


「さあ、思う存分その素晴らしい考察を披露してください」


 前を見ると阿蘇弥がニヤニヤとしていてすごく腹が立つ。雅や真由美が心配そうに見つめてくるが逆に心苦しい。昇のように窓の外を見て興味のない振りをしてくれている方がありがたい。


 比呂彦は観念して、昨日あった出来事を侵入部分を除いて思い出しながら話し始めた。サラと出会った事、ドワーフの男に追いかけられた事、その後に怒られた事、言える範囲で全部話した。


 そして話をし終わった所で


「大変面白い物語をありがとうございました。皆さん拍手をしてあげましょう」


 教室内にチラホラと拍手が鳴る。比呂彦は恥ずかしい気持ちになったもののこれで終わったと言う事に安堵し、この永遠とも思える短い時間を一生懸命耐える事ができた。


「ですがおかしいですね。本日の授業には道徳はありませんでしたが。美濃理一教頭先生が気分で授業内容を変えたのでしょうか?あのお人はそういう所がありますからね。クックックックック。一度注意しておかないといけませんね」


「いや!違うんです。僕が悪いだけです。授業を聞いていなかっただけなんです!」


 ウィッチ族特有のいやらしい攻め方をするコリーナ女教師に観念して全面的に降伏した。これで許されるだろうと高をくくったが、まだ、コリーナ先生に対する認識が甘かった事を痛感する。


「そうですか。授業を聞いていなかったのですね。私に嘘を付いたと言う事ですか。クックックックック」


 血の気が引いていく。弁解の言葉も見当たらない。コリーナ女教師の判決を待つだけだ。


「では、その原稿用紙を書き上げて美濃理一教頭先生に提出した後、私の所に来なさい。以上で終礼を終わります。さようなら」


 本日三度目の強い後悔で頭の中がいっぱいになった。


  ◯


「失礼しました」


 教頭に原稿用紙を提出して職員室を退室した後、重苦しい足取りでコリーナ女教師の元へ足を向けていた。


 あの後、クラスの皆は僕に同情の目を向けるだけで話しかける人は誰一人いなかった。それは、誰も寄せ付け無いオーラを醸し出して原稿用紙に書き殴っていた所為もあるが、今の比呂彦に関わる事によって自分に被害が被る可能性がある以上仕方なかった。


 カツカツと少し乱暴に音を立てて歩く。校舎はもうほどんどの生徒が下校している為ガランとしているが、外を見るとスポーツ系の部活の自主練で残って練習している人が見える。


 薄暗い廊下を歩いているとポツンと明るく光がガラスから溢れている部屋を見つける。教師は一般的な事務は職員室で済ますが、自身が専攻する研究をする場合は各自に与えられた部屋で行う。因みに、コリーナ女教師が職員室にいる姿を見た生徒はまだ誰もいない。


「失礼します」


 僕は扉をノックして応答をちゃんと受けてから部屋に入った。部屋に入った途端いろんな薬草が混じった匂いが鼻の中に充満する。部屋の3分の1が黒いカーテンで区切られた暗室になっており、至る所に植物プラントが置いてある。コリーナ女教師は入ってすぐ前にあるデスクに座りながら比呂彦を招待した。


「待っていましたよ、八陣さん。さあ、この椅子に腰を掛けなさい」


 指定された椅子に座り、どんな事をされるのか予想を立てる為に部屋を見渡す。


「クックックックック。そんなに珍しいですか?私の実験室に呼んだのはあなたが初めてですからじっくり観察するといいでしょう。それも勉強です」


 少しの間沈黙が流れる。この空気に耐えられなくなった僕は質問をぶつける。


「あの、どんな実験を僕はされるのでしょうか?」


 コリーナ女教師の包帯に隠れた目がコッチを凝視している感覚を強く感じる。目が有るのかも分からないけど。


「私が怖い?正直に話して下さい。クラスの皆さんは私の事をどう思っているのでしょうか?」


 思いもよらない質問にどうすればいいのか迷ったが、コリーナ女教師が嘘を嫌うという事は先の事でわかっていたので勇気を出して本音をぶつけた。


「怖いというより不気味で分からない事が多いんです。それが結果的に恐怖という感情になっているんだと思います」


 言い過ぎたと思い最後の言葉は尻すぼみする。


「そうですか。ではどこが不気味で何が分からないのか私に教えてもらえませんか?私にも自身を改める心の余裕はあります」


 比呂彦は急いで頭の中を整理して、もうどうにでもなれと不気味な点を一つ一つ指摘していく。


「まず服装がですね...いつも緑のフード付きのローブというのが不気味だなーと...後...」


「後、何でしょうか?はっきりと言ってくださっても結構です。聞いたのは私ですから」


 差別的な表現を嫌っている為、あまり口に出したくはないのだが仕方なく吐き出した。


「その..目を覆ってるの包帯が服装と合わさって、不気味さと不思議さを両方感じるんだと思います。」


「そうでしたか。包帯を隠す為にフードを被っていたのですが裏目に出ていたわけですね。しかし、包帯で目を覆っている女性の方がより恐怖を感じると思うのですが。あなたはどう思いますか?」


「えっと...その...包帯じゃないとダメなんですか?例えば・・・眼帯とか傷跡なら化粧で隠すとか...先生の魔法で隠すとかはどうなんでしょうか。後、どうやって周りを見ているのか分からないのも...少し不気味です」


 「少し」というオブラートに包んだのか包んでないのか分からない表現を加えつつ言いたい事は言い切った。

 すると、コリーナ女教師はおもむろに立ち上がりいきなりフードを外した。初めてコリーナ女教師の少しほつれた三つ編みのローブと同じビリジアンな色合いをした髪が露わになった。前髪はなくオールバックになっている。


「そういえばまだ私の目の事を話していませんでしたね。しかし、あなた達には決して話す気はありません。これはとても危険な事なのです。ですが、どうやって周りの状況を把握しているのか。その謎について教えてあげましょう」


 そう言うとコリーナ女教師はローブを脱ぎ、全裸になった。


「いやっ!ちょっと!何してるんですか!!」


「私はただ、どのように周囲を感知しているのか教えようとしているだけです。目を逸らさずにしっかりと見なさい。あなたが望んだことですよ」


 比呂彦は仕方なく。本当に仕方なく、興味は無いけれども見ろと言われたから。そう!見ろと言われたら仕方ないの!先生には逆らえないんだよ!!そうだ僕は正しいんだ!と懸命に思い込んで勢い良く顔を上げた。


 そこには後ろを向いたコリーナ女教師の姿があった。背が高くほんの少し肋骨が浮き上がっているが、後ろからでも見える豊満な胸とツンと上を向いたお尻が少年の心に突き刺さる。そして、後ろに垂れ下がったビリジアンな三つ編みを辿って見てみると先端が服のフードの部分と繋がっていた。


「髪と服が.....繋がってる?」


「そうです。髪の毛でこのローブを織っています。この髪のローブ、フリズューアを通して周りの感覚を察知しています。必要な時は髪を触手のように伸ばして遠くのものを察知しています。私の髪の毛は細いですからあまり気づかれないのです」


「え...ということはコリーナ先生って...」


「はい?何でしょうか?まだ知りたいことがありますか?どうぞ、遠慮せずにおっしゃってください」


 比呂彦は一瞬ありえないであろう事実に気づいてしまった。しかし、この目の前の事が事実ならば推測は的中する。いや、もはや推測でも無いもうすでに現実としてあるのだ。


「いつも....裸だったって事ですか?」


「確かにそうですね。意図せずに露出狂になっていました。不覚です....//」


 初めて見せる少し恥ずかしそうな声で淡々と話すコリーナ女教師に比呂彦はキュン死にした。


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