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持たざる万能魔導陣師  作者: 水戸 松平
10/32

ウィッチの秘密そして再び 2

 木造の教室がある。

 窓からムシムシとした直射日光が差し込む。

 比呂彦が通うザヴァノールゥ小等部4年1組の教室だ。

 生徒は20人余り。

 黒板の前には背の高い女性教師クラリアス=コリーナが教壇に立っていた。

 8:00丁度にチャイムが鳴り、女教師が名簿を手に、それぞれ生徒の名前を点呼している。


「八陣 比呂彦」                  


「はい」


 いつものようにコリーナ女教師の妖艶な声にドキドキしながら点呼に応じた。

 クラリアス=コリーナはウィッチ族で、毎日ビリジアン色の装飾の無いローブを羽織り、目の部分が包帯で巻かれていてフードで隠されている。

 

「はい。以上で終わりです。遅刻者はいませんでしたね。とてもよろしい事です。もし私のクラスで遅刻をしたなら.....クックックックック。とても楽しい事になるでしょうね」


 クラス中がザワリと波立ち、皆が過去に起きた悲惨な出来事を思い出した。

 ある比較的遅刻が多い生徒が、新学期初日から大遅刻をしてしまいその日の終礼の時に断罪がなされた。コリーナ先生の実験のモルモットになり、薬草を調合した新薬の実験台になるというものである。結果を先に言うと、その生徒は一週間クラスで飼って亀に意識を移されてしまう。コリーナ女教師は謹慎と減俸を食らったが、生徒が元に戻るまで容態を見守ると言う建前を盾に謹慎は免れ、対象の観察に没頭したという。

 この出来事が噂を呼びコリーナ女教師に逆らう者は近く出る事はないだろう。


「後もう少しで夏休みとなります。皆さん、各自気を引き締めて授業に取り組んでください。それがあなた達の未来を大きく左右するのですから。それでは解散」


  コリーナ女教師の挨拶が終わり、クラスの皆は最初の授業の準備をし始めた。


  ◯


 比呂彦は授業の内容が全く頭に入ってこなかった。よく耳の左から右に通り抜けると言われるが耳に入る事さえなかった。


 あの論文学校に持って来れば良かった。そうしたらいつでも勉強できたのに

 授業を聞いていないと思われないように教科書を黙読している振りをしていたが、長年教師をしている教頭は欺けなかった。


 「八陣君はどうやら私の授業が子守唄に聞こえるようですねぇ〜」


 自分の名前が聞こえた瞬間ビクッとして顔を上げると、そこには僕に微笑みかける国語の先生美濃 理一(みのう りいち)教頭の姿があった。


「いやっ..寝ては無いですよ!」


「そうなんですかぁ〜。寝て「は」無いんですねぇ〜」


 教室に失笑が漏れる。恥ずかしくなっている僕をさらに追い詰めるように美濃教頭は沈黙を貫く。


「.......ごめんなさい」


「何に謝っているんでしょうかねぇ〜。私は別に怒っているわけては無いんですけどねぇ〜」


 掴み所無くジリジリ攻めてくる教頭に対し、サラならどう答えるのだろうと思いながら絶望した。


ゴォーン。ゴォーン。ゴォーン。


 救済の鐘がなった。が、出来る限りホッとした表情を出さないように我慢したが


「八陣くんはその妄想を書いて提出してくださいねぇ〜。それでは今日の授業はこれまでです」


 穏やかに罰を下し、教頭は背筋よく歩いて教室を出て行った。


  ◯


「災難だったね。朝から元気なかったし何かあったの?」


 いの一番に比呂彦をフォローする女の子は間々 真由美(まま まゆみ)だ。


「どんなエッツィ〜な事を考えていたんだぁ〜い、きみぃ〜」


 ツェツィーリエ=リーファンが変なイントネーションでからかってくる。


「そんなの決まってんじゃぁ〜ん。ムフフでパフパフでボインボインな事だよぉ〜」


 その妹ツェツィーリア=リーファンが姉に乗っかってくる。


「違うよ!ちょっと気になる事があってそれを考えてたんだよ」


「気になることぉ〜?それってぇ〜、コリたん先生のえっちぃ〜く・び・れ?」


「「キャァーーーー!!!」」


 勝手に大興奮している蛇抜姉妹。教頭の後に相手にするとより一層疲れを感じる。


「おめぇーらうるせーよ。少し黙ってろ!」


 口悪く蛇抜姉妹をキャレブ=ギーツが注意する。


「「こわぁ〜い」」


 蛇抜姉妹は嫌味のような言葉を発するが、キャレブに睨まれた後どこかに逃げて行った。


「ごめんね。なんか逆に疲れさせちゃったみたいで」


「いや、悪いのは真由美ちゃんじゃないから。後、気にしなくていいよ、ただの寝不足だし」


「そう。何かあったら気軽に相談してね」


 真由美は自分の席へと戻って行った。

 原稿用紙を取りに、教室の前の一段上がった所にある教卓に向かう。その途中でまたうんざりする奴に声をかけられる。


「ねーねー、どんな妄想書くの?ねー?」


 執拗に訪ねてくる男の子は小豆 阿蘇弥(あず あそや)だ。

 阿蘇弥は原稿用紙を代わりに取ってくれており、僕に手渡してきた。


「はい。比呂君の想像力ならこれぐらい書けるよね」


 その手には厚さ1cm位の原稿用紙が握られている。


「ありがとうございました」


 基本、男子は阿蘇弥に対して敬語だ。もちろん嫌味としてである。比呂彦は阿蘇弥から原稿用紙を受け取り、間違えた用の事も考え5枚抜き取った後、残りを教卓の中の封筒に戻した。


 その後、席に戻った後に昨日あった出来事を脚色して書く事に決め、題名を考えている間に次の授業を告げる鐘が鳴った。

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