魔族なのに何故か光属性のハーピーでした
今年最後の作品なんとか今日中にできました。
拙い物語ばかりでしたが今年1年ありがとうございました!!
2/14:ベリルのネクロマンサーの設定を変更しました。
大変です!!
今わたしの目の前に勇者パーティーが立っていますよ。
わ、わたしはどうしたらいいんでしょうか!!
わたしの名前はパール。
魔王の親衛隊でもある四天王の1人で、種族はハーピーで属性は光。
え?四天王なら勇者をやっつけろ?
というか魔王の四天王が何でハーピーで光っておかしい?
言いたいことはわかりますが、わたしに戦闘は無理なんです。
これにはちゃんと理由があるんですよ?
四天王は魔王様自らが力を分け与えて創ってくれたんです。
魔王になって最初にする事は自分の部下を創ることで、魔王様しか入れない聖域?に不思議な大きな木があって、それに魔王様が魔力をこめると木に卵が生るんです。
自分の力で作った部下が魔王様の実力を現すとも言われる重要な儀式で、魔王様の力で作られたわたし達は決して魔王様と命を共にし、裏切ることのない忠実な部下と言う訳です。
そして今の魔王様が木に魔力を送って出来た卵は4つ。
これは大体平均的な数で、過去には1つだけど魔王様と同等の力を持つ部下とか、数は多いけどそれぞれの力は弱い部下とか色々いるみたいです。
一番多いのが、4つの卵に火・風・地・水のそれぞれの属性に分かれた部下です。
今回もそうなるはずだったんです。
なのにわたしったらどういう訳か大きな力が流れてきた時に”殺すの嫌””暴力反対””空は飛びたい””魔法大歓迎”とか色々力を拒否してしまったんですよね。
魔王様からの力を拒否とか今にして思えばなんという事をしてしまったんでしょう。
どうもわたしの前世は人間だったらしく何故か人間だった頃の記憶が残ってて咄嗟に反発してしまったんですよね。
卵から返った時にはわたしは魔王様の部下だ!!と思っていたので何でさっきまで自分は人間だと思ってたのか不思議で仕方ありませんでした。
そしてその結果がこれなのですから泣きたくなりましたよ。
おかげで完成したのが、攻撃力ほとんどなし、防御力抜群、魔法は光属性と補助魔法のみ可能な真っ白いハーピーが完成してしまったんです。
ハーピーと言っても魔王様に創ってもらったわたしは一般的なハーピーとは基本的なステータスも異なるんですが、はっきりいって失敗作です。
わたしが生まれた時、魔王様は驚いてましたとも。
その顔を見てわたしは自分の失態に気付きました。
ほんとになんてことをしてしまったんでしょう。
でも魔王様はそんなわたしにも優しくしてくれます。
魔族にとって真っ白な光属性の私なんて稀有な存在としか言えないのに、他の魔族もわたしを見ても嫌悪することなく、大切にしてくれるのです。
四天王内では最強で最弱と言われ、他の四天王の仲間からもよくしてもらって本当にわたしは幸せ者です。
え?最強で最弱っておかしい?
でも事実なんですよ。
わたしは誰も倒すことは出来ないのですが、相手が私を倒すのも困難なんです。
そうわたしの防御力は半端ないのですよ。
魔王様の攻撃も防いだことあるのですよ!!
まぁ、手加減をしてくれたからと言うのもあると思いますが・・・。
でも、わたしは日々申し訳なくすごしているわけなんですよ。
だって魔族で魔王様の直属の部下なのに人間すらまともに殺せないとか情けなくないですか?
しかも魔族で光属性って過去にも誰もいないですしね。
人間の記憶が残ってたばっかりに光属性になってしまって、その人間の記憶も今ではほとんどないと言うのに本当になんであの時反発してしまったのでしょう。
なのに魔王様も四天王の仲間もわたしが光属性なのは嬉しいといってくれるのです。
もうみんな大好きです!!
いつかは魔王様の役に立てる日が来るでしょうか。
四天王仲間のドラコニュートのルビーちゃん、人狼のアズライト君、人虎のべリル君は日々、魔獣討伐で役にたっているんですよ。
魔獣と言うのは瘴気のたまり場から生まれる存在で、知識なしの力ばかりの存在です。
人間達は魔族も魔獣も一括りに考えてますが、違うんですよ?
たまに勇者パーティーとかも現れてこちらとしては非常に迷惑なんですが、人間達はわたし達が別であることを理解してくれません。
困ったものです。
魔族と言っても皆が皆、戦闘狂って訳ではなく、畑とかを耕す魔族もいるのでそういう魔族達にとっては私は重宝されてます。
戦いでは全くの役立たずなのでこちらで今わたしは魔族領が豊かになる様に頑張っているのです。
いつかは魔族領土を緑豊かにするのがわたしの役目だと思っています。
そんなある日、魔族領と人間領の境にある迷いの森で人間と魔族がよく戦いを起こすのですが、最近その森の一部に瘴気が溜まりすぎて死の森になりそうって事で、わたしは勢いよく飛び出してきたんです。
死の森になってしまったら魔族と言えども住めない場所になってしまいます。
それは避けたい事で、わたしは光魔法が使える唯一の魔族です。
死の森になる前なら浄化もできる!!
わたし役に立てる!!と勢いよく城を飛び出して森に行きました。
森はものすごい瘴気が漂っていていました。
この空気に耐えきれなかった鳥や動物達の死骸もいくつかあります。
急がなくては本当に死の森になります。
ハーピーの特技として音波があるのですが、わたしはその特性を生かして浄化の威力を歌に変換して森全体に行き渡るように歌いまくりました。
どれくらい歌っていたのか数時間なのか数日なのかそれさえも自分でわからないくらいの時が経過して、森にやっと生気が戻ったのを感じたわたしは歌をやめました。
これで一安心と思った矢先、チャキッと音がするので振り向くと鎧をまとった人間が光る剣を構え、その後ろには弓使い、魔法使い、槍使いと武器を持っていない少女の計4人がいます。
ここで冒頭に戻ります。
そう、これは最近魔族内で噂の勇者パーティーでしょう!!
光る剣を持っていることが勇者の証です。
何故、ここにいるのでしょうか。
噂ではまだ魔族領近くまでには来ていないとのことでしたのに・・・。
ど、どうしましょう!!
とりあえず魔王様と四天王達に報告をしなくては!!
<報告です!!勇者パーティーが迷いの森に現れました>
勇者から視線を外さずに念話を一方的に飛ばして通信を切ると、防御の構えに入ります。
いくらわたしが防御特化とはいえ5人の攻撃に耐えられるでしょうか。
「貴様は何だ?何故魔物なのに白い?」
この世界は魔族も人間も色でそれぞれの属性がわかるんですよね。
なので腕に羽はあるけど上半身は人間、下半身は鳥で明らかに魔族なのに色が白いから勇者は疑問を聞いてきます。
「さあ?何故と言われましても光属性だからとしか言いようがありませんが」
「嘘言わないで!!
聖女と勇者しか光魔法は使えないのに魔物が使えるなんてありえないわ!!」
勇者の後ろにいる銀髪の少女が睨みながら言ってきますが、嘘と言われても困るんですが・・・。
この世界で銀髪に金色の目の人間は特別な存在らしいです。
魔族では銀髪は珍しくないんですけどね。
そして今目の前にいる勇者も銀髪金目、少女も銀髪金目という事はこの少女が聖女という事になりますね。
「でも、確かに先程の浄化は彼女の力でしたよ。
それに喋れるという事はかなり高位の魔族と言えます。ハーピーなのに」
「それもどうみても聖女様より威力のある浄化魔法だったよね」
女性の弓使いの言葉に聖女が弓使いを睨みつけている。
どうやら仲が悪いようですね。
それにしても魔法使いは何故こちらをじろじろ見てくるのでしょうか。
というかこの魔法使いは高位じゃないと魔族は喋れないと思っているのでしょうか。
人間に対して口を開かないだけでどの種族も一応は喋れるんですがね。
人間にわかる言葉かどうかは別として・・・。
「白くたって魔物は魔物よ。くたばりなさい!!」
聖女は突然私に向かって魔法攻撃を仕掛けてきました。
聖女なのに好戦的なようですよ。
聖女ってお淑やかで優しくて後ろで回復だけをしてるだけかと思ってたんですが、違うんですね。
連発で魔法攻撃をしかけてきますが、わたしの防御結界に弾かれてます。
同じ属性同士の攻撃を受けるのは初めてだったのでドキドキだったんですが、大丈夫のようですね。
槍使いの人も攻撃態勢に入ってますし、本当にどうしましょう。
逃げて後追っかけられても困りますし、反撃なんてできるわけありません。
ここは面倒ですが、転送魔法を使ってどこかの街に飛ばす?
駄目だ。わたし人間の街に行ったことないから知らない場所には飛ばせない。
考えながら攻撃を防いでいると何処からともなく地響きが聞こえてきました。
「「「パール!!!!!」」」
「無事?無事だった?勇者が来たって聞いてすっ飛んできたよ。
ごみはわたしが片付けるからパールは休んでて?」
「何言ってるんだ、片付けるのは俺の役目だ。
お前達はパール連れて城に戻ってろ」
地響きの正体は四天王達で私に飛びついてきたルビーちゃんが勇者達に殺気を向け、アズライト君も殺気を放ちルビーちゃんを牽制します。
2人が睨みあってる横でべリル君が詠唱に入ってますよ。
突然、現れ速攻で攻撃ですか!!
さすがです。考える事もなく迎撃態勢に入れるなんて羨ましいですよ。
べリル君の攻撃に勇者達も反撃に入り、ルビーちゃんとアズライト君も口喧嘩を止めて”べリル抜け駆けひどい”といいながら勇者達に向かって行ってます。
わたしにも時たま攻撃が来ますが、あたりません。
というか聖女さん、貴女は何故わたしばかりに攻撃しかけてくるんでしょうか。
聖女って攻撃ではなくサポートや回復の役目じゃないの?
ってべリル君!?
何特大の呪い魔法を使っているんですか!!
そんな魔法使ったらまたここが瘴気でいっぱいになってしまいますよ。
ああ!!
ルビーちゃんもアズライト君も森を破壊する気ですか!!
って勇者達もなんでそんな大技をこんな狭い森で使おうとするんですか!!
死の森以前に森がなくなってしまいます!!
あーもう!!
『動くな』
ハーピーの音波の応用で相手の動きを支配する技で全員の動きを止めます。
これ便利なのですが、かなり魔力を使うのが難点なんですよね。
でも今はそれどころではありません。
「せっかく、浄化を終えたのにまた瘴気を溢れさせる気ですか!!
貴方達も貴方達です!!
勇者と言われてるくせに森を破壊するような大技使うとは何事です!!
場所を考えて戦いなさい!!迷惑です」
怒りにまかせて電撃と共に勢いよく言うと全員を砂漠に転移させる。
電撃と言っても攻撃能力のないわたしの魔法ではピリッとするくらいだし、砂漠なら思う存分戦っても問題なし。
それよりも問題はこの場所だよ。
酷い状態だ。
たった数分でこの状態を作ってしまうなんて羨ましいくらいの攻撃力です。
元に戻すのは大変なのに・・・。
溜息をつき、もう一度浄化の魔法と再生の魔法で森を元に戻します。
前回に比べて瘴気も少なかったので数十分で森は元に戻りました。
「これでやっと元の森に戻りました!!」
任務完了!!の気持ちで伸びをしていると不意に名前を呼ばれました。
え?この声ってと慌てて振り向くとなんと魔王様じゃないですか!!
「魔王様!!どうしてここに?」
「パールを迎えに来たんだよ。さぁ、帰ろうか」
満面の笑みで魔王様がお迎えに来てくれましたよ!!
しかもさぁおいでとばかりに両腕を広げてくれます。
わたしは迷わず胸に飛び込みました。
大好きです、魔王様!!
「見てください。頑張りました!!」
「前より森が綺麗になったな」
魔王様が頭を撫でてくれます。
わたしも少しは役に立ててるって思っていいですか?
「戦いはできなくてもそれ以外で頑張りますから見捨てないで下さいね?」
そう伝えれば魔王様は笑顔で更に頭を撫でてくれます。
わたし達が仲良く城に戻り、魔王様から果物を食べさせてもらうと言う光栄なご褒美をもらっていると疲れ切った顔のルビーちゃん達が帰ってきました。
勇者達をとりあえず追い払ってきたそうです!!
やはり3人ともすごいですね。
わたしが尊敬の眼差しで3人を見ていると魔王様に果物を食べさせてもらってる状態に気付いたルビーちゃんが頬を膨らませます。
「魔王様、ずるい!!」
ルビーちゃんはあろうことか魔王様から果物を奪い取り、わたしの口に運びます。
その果物をアズライト君やべリル君や魔王様まで奪ったりとすごい争いになっています。
何やらすごい展開になってしまってますが、魔王様とわたし達四天王は今日も平和な日々を過ごしています。
光属性でハーピーと言う異端なわたしですが、今日もわたしは幸せな日々を送っています。
できればこの平穏がずっと続くことを願います。
この後、何故か聖女からは嫌がらせを受け、勇者からは一緒に旅に行こうと誘われる日々になり、別の意味で勇者と魔王が戦う日々になりそうです。