#5 初めての練習試合
その後、チーム間の練習を終えると、五対五の試合を始めることになった。新しい新メンバーでのチーム戦。これは胸が高鳴った。
ロサンゼルスでのあの決勝戦以来だ!バクバクと心臓が鳴り響いている。たかが練習試合だというのにこの有様だと、一年後の本戦は一体どうなるんだろう?ワクワクするけど、頭が痛い。喉の奥から何かが出戻って来る感じがする。
「よっ!アイーシャ?気分が優れないのかい?」
雫が声を掛けてきた。
「ポイントガード、お前にばかり任せないから、安心して仕事しろよ?」
サークル内には健二と薫が既にスタンバイしている。
「今日からは僕がトスを上げよう」
八神は、審判を兼ねて、ストップウォッチを片手にそう言った。
多分、本当の試合らしくしたいのであろう。今までみたいに各自が審判なんて事は有り得ないのだから。
高々と上がったボールを叩いたのは、やはり健二であった。その零れ玉を拾ったのは、雫。あたしはそれを確認すると一気にゴールへと走った。勿論パスが来る。しかし、あたしの足は遅い為、英治が目の前に立ちはだかる。細かくドリブルを重ねてメンバーが所定位置に着くまで待った。さて、どう攻め込もう?あたしに付いている英治の身長を考えると、下からの方が攻撃可能範囲。春樹だったら上からにした方が無難だけど。
「ヘイ!パス!」
雫があたしに向かってパスを要求した。相手はマンツーマン。さて、雫にボールを渡してこの先どうする?あたしは走り寄ってきた雫にバウンドパスをした。すると、一気にあたしを背に一緒に付いて来ている春樹共々抜きに掛かった。あたしは、春樹と、英治を抑え雫にボールを任せた。一人自由になった雫は、一気にゴール目指してドリブルで駆け込んだ。そこに、薫が立ちはだかった。身長差を考えると無謀過ぎる。だけど、雫は誰にもパスを出さずに強引にシュートへと持ち込もうとした。
「雫!無理!」
健二は、それを見てリバウンドする為に亮を抑えてスクリーンアウトしに掛かった。入らないだろう事は予測できる。しかし、薫がジャンプするのを見計らって、雫は薫の懐に潜り込み、レイアップシュートを掛けた。
細かく動き回る身長の低い雫だが、見事に決めてくれたのである。
「ったく〜入ったから良いものの、無理すんな!」
健二が雫の背中を一発叩いた。
「へへっ、俺、オールラウンドなんだから細かいこと言うなよな!健二?」
雫は舌を出した。
「これだから、こいつとチーム組むの苦手なんだよ〜」
健二は何やらぶつくさ言っている。
次はエンドラインから相手の攻撃が始まる。勿論、ボールを運ぶのは春樹。あたし達はオールコートのマンツーマンで挑んだ。しかし、春樹のボールをスティールするのは困難だった。本当にボール捌きが上手い。取れると手を出すと、ステップバックして、後退するし、あたしの手には負えない。けれど、ここで引き下がるのは避けたい。そして抜かれるのもだ。ひたすら、春樹のドリブルの姿勢を見ていた。この人から技を盗むのも一興。一度、大きく賭けに出るのも練習の内なのだろうか?
頭の中で、色々と考えてしまう。考えるより、身体を動かす方が先決だと言うのに!
思考と行動がバラバラのあたしは気が付いた時にはすでに、春樹がハーフラインまでボールを運び込んでいた。
しまったという感情が無いわけではない。が、ここからは三十秒ルールが成り立つ。ゴールさせるまでに、三十秒粘ればあたし達のボールになる。だから、必死で春樹の持つボールに喰らい付こうとした。が、やはり春樹の方が一枚上手であった。あたしが意を決して右手でドリブルしているのをスティールしようとするのを予測していたかのように、レッグスルーでかわし、体のバランスを失ったあたしを何事も無かったかのように抜き去って行った。
「英治!」
春樹は、英治にボールをパスする。元ポイントガードの彼だから、この辺り一番信頼出来るのであろう。今度は英治がボールを持って攻撃に入る。英治を守っているのは雫。何の因果か元ポイントガード同士。あたしは急いで春樹のガードに回った時、二人が笑っているのをこの目で確認した。
「何笑ってるんだか?気持ち悪い奴ら」
思わずあたしは呟いていた。
「お互い楽しんでるんだよ。アイーシャにはそう言うの、分かんないかねぇ〜」
聞こえていたんだろう。春樹がボソリと零した。あたしはまた驚く羽目に合う。あ、春樹が英語を話した……やはり、皆話せるんだ。そりゃそうだよな。一年後にロサンゼルスに行こうって奴らなんだから。話せない訳が無いんだ。
雫は、ピッタリ英治をマークしていた。英治の俊敏な足は役に立たない。色々と試しているが、雫が後に引かない。このまま行けばゴール下にボールが回るまでに三十秒は過ぎてしまうだろう。そう思っていた時、英治がドリブルで加速し、春樹の所まで下がって来た。何故戻って来る?あたしは春樹と英治のアクションを交互に見ていた。すると、英治があたしをスクリーンに掛けるようにして春樹にボールを手渡した。
「雫!チェンジ!」
引っかかったあたしは、自由に動き始めた春樹をマークするように雫に言って渡した。
まあ、雫もどうなるか把握していたのであろう、春樹に既に付いていた。
「こっちは任せろ!ボールはこれ以上中に入れさせないぜ?どうするよ?」
春樹対雫。これも後に引かない良い勝負。ったく上等じゃ無いか!これ迄ゾーン内にはボールは入れられていない。良い守備。
八神が手元のストップウォッチを見ていた。そろそろ時間。
そう思っていると、笛が鳴った。
「ちっ!」
春樹が舌を鳴らしていた。ついに時間切れ。
攻撃の権利はあたし達に移った。
あたしは、サイドラインから雫にボールを渡した。ボールを持った雫は静かにドリブルに入った。相手は英治。あたしは春樹にマークされていた。
センターラインまでソツ無く進められていくボール。雫はどう攻めようと言うんだろう?あたしは、雫とは逆サイドにいる。此処まで運んで来るつもりなのか?などと客観視してどうする!あたしは、一度右に身体を揺さぶって中央へとダッシュした。さっきのお返しだ。フェイクは決まり、あたしはフリーになった。それを雫は見落とすはずも無く、あたしが走りこむ先にボールを放り込む。私は必死でそのボールに飛びつき、体制を整えると、今の状況判断をした。
ゾーンのトップにいるあたし。健二は薫がマークしている。真は陸。友則は亮。マークはピッタリと付いている。フリーなのはあたしだけ?と判断すると、一気にゾーン内に突っ込む。春樹が後ろからガードしようとして来る前に、この状況を上手く利用しないと!そう考えていた。すると、カバーで健二に付いていた薫が前にはだかろうとした。あたしはそれを見越し瞬間、バウンドパスで健二へとパスを送った。健二はノーマーク。ゴール下へと入り込むと、ジャンプシュートが決まった。
「よっしゃー!ナイスパス!」
健二があたしに向かって手を叩いていた。
「健二こそ!ナイスシュート!」
すんなり攻撃は決まる。ここで春樹が、
「これからディフェンスは、ゾーンで行く!」
マンツーマンから切り替えるらしい。まあ、付き纏われるよりは気が楽だ。それに、そうなると今度は外からの攻撃が使える。こっちは真がいるのだ。
エンドラインからの相手の攻撃。あたし達は、しっかりオールコートのマンツーマン。
疲れるけど、一番得点に結びつく。で、あたしは春樹のガードに付く。同じ事の繰り返しだけど、その時々で異なるシチュエーション。だから面白く感じるのか?バスケがこんなにも面白いと思える。あの時、ロサンゼルスでやった試合で感じた疑問が今まさに蘇ってきそうだった。
心のないヒューマノイド。彼らに楽しむと言う事が分かるのだろうか?この感覚を味わうのは、やはり人間であるべきではないのか?
疲れきった体を駆使し、想像して、ゲームを制する。それは、人間であるべきあたしたちの特権で無ければならないのでは?そう、あたしは思った。
歴史は何を変えてしまったんだろう?過去の過ちを繰り返さなければ良いだけの筈の事があたしたち人間には出来ないのであろうか?全てはループしている。そう考えられているから、あたし達は限られた世界に足を地に着けている。ああ、考えていたら頭が混乱してきた。いけない。試合に集中しないと!
春樹のボールを見詰めながらあたしは頭を振った。その隙を春樹は見抜いていた。フェイクであたしを抜き去った。あたしは崩れた身体を床に手を付き起こすと、直ぐに駆け出した。
「春樹パス!」
亮が友則を抑えてパスを要求している。あたしがやっと春樹に追い付いた時には、ボールは亮に渡っていた。亮対友則。ジャンプ力がチーム一番の亮。しかし、友則も黙っちゃいないだろう。ゴールを背に腰を落とし立ちはだかる。ピボットを使い一時肘で友則を避けるように次の体制を考えている。そこに、雫がガードしている英治が走り込んで来た。
手渡しパス?と思わせておいて、亮はクルリと反転すると、ダックイン。友則もそこまで考えて無く、亮はすんなりとゴール下に潜り込んだ。ゴール下は薫と健二がいる。健二は勿論カバーに入る。亮の方がジャンプ力が有るから、付かなきゃ必ずダンクをして来るだろう。その事が頭を過ぎらない者はいないはず。
ここに来て初めて観た時の印象が強いから、特にそうあたしは思った。しかし、ジャンプした瞬間、後ろに英治が走り込んで来ていた。雫が付いていたんじゃなかったのか?と、雫を捜したが、雫は居ない。何故ノーマーク?
「健二!ジャンプしないで!」
叫ぶけど、間に合わない。健二がジャンプした瞬間、亮もジャンプした。が、亮はボールを上からスルリと後ろに回した。英治が走り込んでいるのが理解っているんだ。あたしは必死でゴール下に駆け寄った。しかし何処から走り込んで来たのか?雫が現れた。放ったボールが弧を描いて英治の手に収まるのと同時に雫の手の中に納まった。
「ヘルドボール!」
どちらのボールか分からない、力で奪い取る図がそこに有った。
八神が、ヘルドボールの指示を出した。
「英治、雫。ジャンパーは位置に付きなさい」
サークル内に二人は立っていた。雫はオフェンスの用意をしろと言いたげに目配せしている。ちょっと待ってよ。英治と雫の身長差ってかなり有るよ!あたしは守りに入ろうと自らのコート内へと足を向けようとした。しかし、雫は苦い顔をしていた。勝つ気でいるの?じゃあ分かったわよ。負けた時にはどうなるか分かってるわね?そういう目つきであたしは敵陣側へと足を向け直した。
ボールは八神の手から、空中を何事も無く飛び立った。すると、どうだろう?英治より先に雫の手でボールは弾かれた。上手い具合に、あたしの方にボールが飛んで来る。あたしは必死になって駆け出した。何もこんなに強く弾かなくても良いのに!サイドラインぎりぎりの所であたしはボールに追い付き、そして、走り込んで来た健二にパスを出した。
いきなりの速攻。皆がこうなる事を考えていなかったようだ。相手の戻りは遅かった。健二は勢いに任せてドリブルでゴール下へと突っ込んで行った。後ろから英治が走り抜けて行く。あたしはそれを阻止しようと駆け込んだがやはり英治の足は速かった。追い付けない。誰か!心の中で叫んでいた。
英治は、ファールを取られようがこのまま得点を許す気はなさそうだ。後ろから手を出していた。健二!気付いて!
すると、健二と英治の後ろに真が走り込んで来ていた。
「健二、後ろ!」
雫が叫ぶのが聞こえた。健二はさっきの亮と同じようにシュートを打つと見せかけて、ポーンと後ろにボールを投げていた。空中に高々と上がったボールを真は受け止めると、スリーポイントラインまで素早く下がりシュートを放った。
いつも通りの綺麗なフォーム。パスンとネットの中に納まり、シュートは決まった。
この試合。一方的にあたしたちのチームの方が有利であった。初めてチームを組んだのに、意思疎通が出来ている。それがとても気持ちが良い。
これで、七対0。しかし、ここまで差をつけられたら、相手側だって黙ってはいられないだろう。負けると言う言葉は似合わない連中。勿論それはこっちだって同じなんだけどね。
エンドラインから即座投げ込まれるボール。春樹がそれを受け止める。ゲームの立て直しを考えているのだろう。ドリブルしながらゆっくりしたペースであたし達の陣地に入って来る。ここで止めて、マイボールにしたい。攻める時は、一気に攻め込んでしまいたい!あたしの心は固まっていた。だから、春樹の間合いに一気に飛び込んでいた。
しかし、まだ未熟なあたしの心の中身などお見通しであったのだろう、春樹はヘジテイション(前後に揺さぶりをかける)であたしをいとも簡単に抜き去ってしまった。
シマッタ。と思い、後ろから追い掛ける。が、春樹は既に英治にパスを出していた。雫がそれに付く。今度はどう攻めて来るつもりなんだろう?ボールは既にトップまで運び込まれていた。
あたしは、春樹の動きをマークしつつ、ボールの行方を見定めなければならない。どちらも気が抜けないのだ。もし次に春樹にボールが回って来るならば、カットしなければならない。一瞬たりとも気を抜く場面など有る訳がないのだ。あたしは手を大きく広げ、いつでもカットが出来る体制を作っていた。
しかし、ボールは回って来なかった。雫にフェイントを掛けた英治が一気にダックインしてゾーン内に入り込んでいたからだ。このまま力技で行くのかと思いきや、ゾーン外にいる陸にパスを送り出す。陸はそのパスを受け、得意のフェイクで、真を交わすとゾーン内に入り込み、一気にゴール下までドリブルで駆け込んだ。陸の場合、ここからが上手いのだ。健二が、勿論カバーでマークしようと駆け寄る。でも、その間にセンターの薫がノーマークになるのを見越しているだろう。さて、ここは自ら行くか?それとも薫を使うか?
薫を抑える為のマークがいない。誰かがフォローするのが一番なのだが、背の高い薫を止められるのは、あたしのチームには健二しかいないのだ。健二!あたしは、ゾーンの外から成り行きを見守るしか出来ない。
陸は、スッと一旦ボールを横に押し出すと、高々と離れた地点でボールは弧を描くように解き放たれた。自ら行った!これはフックシュート?地道な訓練で出来る技ではあるけど、陸のは綺麗に決まった。
「二点返したぜ!後五点!張り切って行こう〜!」
陸はテンション高く声を張り上げていた。これはどう考えてもあたし達の敗北。背の高さを利用して来る相手は、どうしようもない。
その代わり、こっちだって利用価値の有る選手は居るのだから。
「おい!ボーっとすんじゃないぞ!向こうはゾーンディフェンスなんだから、その分体力温存して来てるんだぞ!それを超えるような、お前の頭脳頼りにしてるぜ?」
雫がエンドラインからあたしに声を掛けて来た。あ、そうだった。ゲームの司令塔であるあたしがここで突っ立って考えていても仕方ない。とにかく動かなきゃ。そう動かなきゃ!
頭では判っているのに、何故体が動かないんだろう?じれったいな〜ここまでのあたしの役割はちゃんと果たせているのであろうか?疑問。雫に頼りきっている気がしなくもない。あたしらしさって一体?また一つ疑問が生まれた。
同じポイントガードの春樹は柔和な感性。元ポイントガードの二人……雫は暴走突入型。英治は瞬発力強化型。あたしには……何も無い?
「何やってる!ちゃんと集中しろよ!」
ドリブルしながらトップ位置で、あたしはもう少しで危うく春樹にスティールされてしまうところだった。何とかキープできたのは救いだが。何か変なんだよね……気持ちがスッキリしないでいる。
考えなきゃ。
動かなきゃ。
押し寄せて来る不安。あたしだったら?でも今はまだ自分が無い。
「健二!」
センターを使いたい。でも、薫が粘ってこの場を凌いでいる。パスが出せない。真にもマークが付いている。何?どうすれば良いの?オロオロしてしまった。こんなの、あたしらしくないのに!
そんな時、雫がトップまで来てあたしのお尻を思いっきり、バチンと叩いた。
「しっかりしろよ!俺が何故お前にポジション譲ったのかこんなんじゃ分かんないぜ!」
そのまますり抜けて行く。ボールを取りに来た訳では全く無かった。激励。叱咤。そのどちらにも当てはまる言葉だった。有り難いことである。
あたしは、今の状況をもう一度確認した。右サイドには真。左サイドには友則。そしてゾーン内を入ったり出たりしているのが、健二。そして、さっきあたしのお尻を叩いていった雫はトップ。あたしは、雫にパスをした。
そして、スクリーン状態をキープしてくれた雫は、直ぐ様もう一度あたしに返した。これって、あたしにシュートを打てと?此処から入るだろうか?分からない。だけど打ってみる価値はありそう。これまでシュート練習だけはヒューマノイドに入力するデーターを登録する為に、欠かさずして来たのだから。
あたしはスリーポイントライン迄下がってボールを頭上に持ち上げた。ポーンと放つボール。後はセンターの健二の仕事だ。
「リバウンド!」
健二は必死で薫相手にスクリーンアウトしている。ボールは弧を描いてリングへと向かった。入る。そんな気がした。それは確信に近い物だった。
バックボードに当たったボールは、リング内へと収まった。真みたいなリングを直接狙う綺麗なシュートじゃ無いけれど、見事に入ったのである。
「アイーシャ!ナイスシュート!」
雫が、やれば出来るじゃ無いか?って表情で駆け寄ってきた。
「うん。当然!」
生意気にもこんな言葉を吐いていた。促してくれたのは雫。ああ、自信を持たせてくれたのかもしれないな。って気もしてきた。
手を打ち鳴らして、今度はディフェンス。
「止めるよ!この一本!」
あたしは、春樹のドリブルに喰いついてく。点差は八点。時間的にもまだまだこれからであった。
結局、この試合はあたし達のチームの十点差勝利で終わった。入れられたら取り返し、シーソーゲームが続く試合内容。各人自らのポジションを考えながらプレーしているかのようだった。
あの時の雫の言葉があたしに力をくれた。ディフェンスで春樹を抑え切るのはまだまだ無理だけど、コツは掴めたのではなかろうか?オフェンス時は、あたしの作り出す作戦も少しは視野を広げられたように感じられた。
初めて経験したにしては上々の出来だったと思う。って、これで納得できると言う事ではないけれども。一試合終えて素直に思うことがそれだった。
後は……
「これで今日の練習を終わる。帰ったら、ゆっくり休め。明日も有るからな」
試合後、皆を召集して言った八神の言葉。
「う〜ん。今日練習試合をやっての感想として言えば、このチームの割り当ては僕の想像と大体一致していた。このままで良いかと思う。負けたチーム。次は勝てるように!各個人については、健二はもっと俊敏に動けるように!真は、もっと積極的にポストプレーやリバウンドに励め。亮は細かい所にも目を配るように。薫は、もっと力強く、粘りを見せられるプレーを。陸はリバウンドに力を入れろ。友則はもっと動け。時々足が止まっている。春樹は足腰をもっと鍛えろ!英治は突っ走りすぎ!柔軟性を持て。雫はジャンプ力強化!まだポイントガードとしてしか働いてない。視野を広げる必要があるな。最後にアイーシャ。体力をつけろ!後、基本をマスターするように明日から重点を置け!」
あたし達を見ての感想を、何も遠慮せずビシッと決めてくれた。
「以上。解散!」
「お疲れ様でした!」
頭を下げて、あたし達は掃除に取り掛かった。昨日と同じだった。