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夢から覚めると和室

あなたは、誰かよりも優れていると思いますか?


いいえ。


あなたは、誰にも負けないと言える何かがありますか?


いいえ。


あなたは、必要のない人間だと思ったことがありますか?


……はい。



何をしても失敗します。気を使えば裏目にでて、急がなければと頑張れば1人でバタバタして見苦しいと言われます。あの人に「それはAだ。」と教わった通りにしていたらこの人に「それは違う、Bだ。」と言われ、混乱します。失敗して、相手が怒っています。怖い、というよりもなんと言ったらいいのかわからなくなり、結局なにも言えません。なにも言わない私に、相手はさらにヒートアップします。

恥ずかしい、と言われました。どうしてそう言われたのか、もう思い出せないけれど、それでも……悔しくて悔しくて怒りに頭が真っ白になったあと、結局は自分が悪いのだと思い始めた時、私は必ず恥ずかしいと言われたことを思い出します。

私という存在が、私という人間と関わりがあることが、恥ずかしいのだと。

あぁ、なんて私は必要のない人間なんだろう。

こんな無駄な人間なら最初からいなければ良かったのに。泣きながら、髪をかきむしりながら、声にならない悲鳴をあげながら、思い切り拳を壁に叩きつけながら、そう思ったことが、私にはあります。






──目覚めは最悪だった。枕に顔を押しつけたまま目を見開いた私は今まで見ていたことが夢であることに要約気づく。心臓が馬鹿みたいに跳ね上がり冷や汗がつぅ、と首筋を撫でるのがわかった。でも、夢だった。……良かった。

嫌な夢を見た。リアルで、夢じゃないみたいで、痛いというより苦しい夢だった。そのせいかひどく頭が重い。全く寝たりないのか、逆に寝すぎたときのようにまぶたが重く、あけたくない、まだ眠い。気持ち悪い一歩手前なぐらい体がだるい。昨日何時に寝たっけ……まだ寝たい。と寝ぼけた頭でぼやいても理性の片隅では起きないとと警告音をだしている。でもあと5分くらい大丈夫、かな。時間は……とスマートフォンを探した手がシーツとフローリングの冷たい床をすべる、はずだった。

ザリ。

固いざらざらしたものが指先をかすめたことに驚いて目を開けて。


「は。」


目を疑った。白い壁と天井、ベージュのフローリング、緑色の布団と畳まないといけない服、いろいろ物の乗ったテーブル、があるはずだったのに。そこは和室だった。木目の天井と和紙を使ったような壁、花の絵がかかれてる襖に和風の低いテーブル。寝ていた布団も安くて軽いものじゃなく、少し重いくらいの花の絵柄が綺麗な布団だった。見たことのない和で統一された部屋にいることに言葉もでない。起き上がった体制のまま息すらしないで固まっていた。不安で早鐘をうつ心臓が痛い。ふ、と手のひらを見た。今のわけがわからない状況は心臓が飛び出しそうになるくらいだけど、でも、だからこそ、良かったと思う。自分が死ぬ夢を見ていたあとの痛みは、正直ほっとした。


「………いや、落ち着けないから。」


独り言が空しく響いたところでとりあえず布団からでる。来ていた服がいつものパジャマ代わりのジャージではなく黒の長袖に赤のチェックスカート、同じく黒のストッキングであることにまた心臓が大きく跳ねた。ドクリ、耳元で響いた音に頬を冷や汗が伝う。違う、から。違う、違う。違う、あれは夢だから。本当じゃないから、大丈夫。夢と同じ服を来てたけど、それは夢だから。


「……。」


震える手で体に触れる。首に、肩に、胸に、お腹に。

痛いところは、ない。怪我もない、傷一つない。服も血で汚れてない、だからやっぱり。


「……ふ、ぅ。」


自然とこぼれたため息は少し震えていた。訳のわからない状況が夢と現実をグチャグチャにして、境目がわからなくなっている、でも。死んでない。それだけは間違いなくて、良かった。

……どうしてこんなに不安になるのだろう?

ただの夢だ。確かに夢を見ているときはどんなに変な夢でも本当のことで怖い。でも、覚めてしまえばすぐに分かる。あぁ、さっきのは夢か、良かった。ほっと息をはいて、そして暫くすれば忘れる。いつもはそうなのに、なんで、忘れられないのだろう。


たん


小さな音が聞こえた。短く息をすう。指先一つ動かせずじっと息を潜めた。

たん、たん、たん、と少しずつ大きくなる音はどこか軽い気がした。視線を襖に向ける。光が透ける襖は綺麗だけど、怖かった。ほんの数秒のことだけど、ひどく長く感じた。


「、」


そして見えた影にほ、っと息をついた。強ばっていた体から力が抜け、無意識に握りしめていた拳を開く。表れた影はたぶん小学生になったかならないかくらいに小さい。子供だ。そっか、子供か。害がない存在に気が抜ける。むしろ今の状況が分かるかもしれないとうきたち、自然と口角があがっていた。

どうしてか入ってこない影に気が急いて自分から開けようとすると、かたん、と音がして僅かな隙間をつくる。隙間から見えた瞳に目を見開いた。表れた大きな瞳は、今までの人生で見たことがない、赤い色をしていたから。









初めてちゃんと小説を書きます。ここまで読んでくださいありがとうございました。

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