第三章:ベアトリス叔母さんの過去
語られるベアトリスの過去。
悪役令嬢としてどのような道をたどったのか……
いま明らかになる……
シアンがいない間に、話すことに決めたベアトリス。
悲惨な過去が今明らかになる。
「まずアリシア……」
「これだけは信じてちょうだい」
「私は無実の罪で断罪されて……」
「帝国まで逃げ延びることになったの……」
辛そうな顔で弁明するベアトリス。
「ベアトリス叔母さん……」
「大変だったのね……」
アリシアは悲惨な叔母の境遇を聞き、悲しくなる。
「……ええ」
「悲惨極まりなかったわ」
「それでもまたこうして会えたわ」
「奇跡なのよ!」
「ありがとう」
「こんなに成長したあなたに会えるとは……」
「思わなくて……」
「っ……」
涙を流し始めるベアトリス。
「大丈夫!?」
「もう今はこんなハンカチしかないけど!」
「叔母さん、泣かないで?」
優しく涙を拭き取るアリシア。
「……ごめんなさい」
更に落ち込んで、
うなだれてしまうベアトリス。
「無理に話すことないのよ」
「辛かったんだし……」
優しく片手で背中をさするアリシア。
「ええ」
「でも真実を知ってもらわないと……」
どうにかか細い声を
「少しずつでいいわ」
「まずは話せそうなところからで……」
「わかった」
「私は……」
「両親、婚約者、親友……」
「全てをなくしたわ……」
「もう二度と皆には会えないの……」
「それが辛くて……」
「帝国に亡命した時も……」
「生きるのに必死だったわ」
「必死に毎日働いて……」
「人生が滅茶苦茶になって……」
頭を抱え込んで、
苦しみ始めるベアトリス。
「叔母さん……」
「ごめんなさいね」
「そろそろシアンがくるし……」
「今日はこれくらいにしておきましょう」
「ありがとう」
「叔母さん」
「辛いのに話してくれて」
「もしよければ好きなだけ屋敷にいていいわ」
「私たちは家族でしょう?」
アリシアは優しく手を握り伝える。
「本当に……」
「ありがとう」
「……アリシア」
「立派になったのね」
「兄さんもきっと喜んでるわ……」
一瞬本当に兄の面影を感じたベアトリス。
「私たち似たもの同士ね」
「大切な人は皆いなくなっちゃたし……」
「そうね……」
「アリシア」
「改めてこれからもよろしくね」
「失礼します」
「いちゃこらしている二人の雰囲気を……」
「邪魔しにきました」
シアンは部屋に入ってきた。
「シアン!」
「ありがとう!」
「毒入り紅茶は美味しいかしら?」
「そうですね」
「アリシア様はいつものミルクティーですよ」
天使のような笑顔で、
ミルクティーを手渡すシアン。
「ばあさんのはドクダミを、」
「沢山絞っていれておきました」
無表情でベアトリスに、
この世の物とは思えない色の紅茶を、
差し出すシアン。
「じゃあ私が叔母さんのドクダミ茶を飲むわ!」
「アリシア様!?」
「そ、それはいけません!」
急に慌て出すシアン。
何か困ることでもあるのだろうか……
「どうして?」
「毒なんて入ってないでしょう?」
「シアン」
「も、問題はありませんが……」
「大量に絞ったので……」
「美味しくはないと思います……」
「私が毒味すると言った瞬間……」
「そんなに慌て始めて」
「まさか本当に毒を入れたの?」
「ねえ、シアン答えてよ」
突然追及し始めたアリシアに、
困惑するシアンは心拍数が上昇していた。
「この命にかけて毒など入れておりません……」
「安心してお飲みください!」
シアンは動揺して早口になってしまう。
「そう」
「ならよかった」
「大切な叔母さんが目の前で苦しみ始めたら……」
「どうしようかと思ったわ」
「叔母さんに手を出したら……」
「シアンを解雇します」
冷たい令嬢の顔をして宣言するアリシア。
「っ……」
「かしこまりました……」
「アリシア様……」
アリシアはもはや涙目になっている。
「このドクダミ茶……」
「美味しいわよ」
「シアン」
「ありがとう!」
上手くアメとムチを使いこなすアリシア。
「はい!」
「こちらこそありがとうございます!」
「褒めていただけて嬉しいです!」
「じゃあ叔母さん安心して飲んで!」
「ええ……」
「ありがとう?アリシア」
姪っ子の意外な一面をみて、
少しだけ恐怖を感じたベアトリスであった。
「当然でしょう!」
「私たちはもう家族なんだし」
突然地面が揺れ始める。
アリシアは地震が起きているのかと思ったが……
シアンが嫉妬に狂って、
能力が暴走しているだけであった。
「もうシアン」
「落ちついて!」
「はっ」
「申し訳ございません」
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫よ」
「それよりシアン……」
「夜はお説教よ!」
「本当ですか!?」
「楽しみにしております!」
「もう全然反省してないわね!」
「あなたたちいつもこんな感じなの?」
「そうよ」
「そうです!」
二人は同じタイミングで言う。
「仲が良いこと……」
少し呆れた顔をするベアトリス。
「叔母さん、この部屋はプレゼントするわ!」
「好きに使ってちょうだい!」
「ありがとう」
「こんなに親切にされたのは……」
「何年ぶりかしら……」
「ふふ、いいのよ」
「家族は助け合わないとね」
「私が困ったときは助けてくれると嬉しいわ」
「もちろんよ」
「いつでも力になるわ」
「そこの無愛想な執事よりは弱いけど……」
「ばあさんの夕飯はおかゆがよろしいですか?」
「私は食べれれば何でもいいわ」
「そうですか」
「じゃあ庭の雑草をお食べください」
「シアン?」
「それでは……」
「夕飯になったらお呼びします……」
「アリシア」
「お屋敷を散歩してもいいかしら?」
「ええ、もちろんよ!」
「案内する?」
「大丈夫よ」
「一人になって懐かしみたいのもあるの……」
「ダメかしら?」
「大丈夫よ!」
「お父様の書斎だけは入らないでね」
「魔力が強くて……」
「なぜか扉が開かないのよ」
「わかったわ」
「じゃあ私は自室で本を読んでるわ!」
「何かあったら来てね!」
「ええ、探せたら……」
「大丈夫!」
「扉にアリシアってネームプレートついてるから!」
「余裕があったら寄るわね」
「ありがとう!」
「叔母さん!」
こうしてベアトリスは、
自分の部屋となった客室を後にした。
ベアトリスの目的はいったい何なのか……
まだ何か隠しているベアトリス。
企みが明らかになる前にシアンは止められるのか?
ハッピースローライフはどうなってしまうのか……
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