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"名のない英雄"  作者: 莉月 暁星
【 灯火 】
3/37

第3話.

 

 驚きのあまり、言葉を失う。


 タコスが生きてるなんて、現実ではありえないはずなのに────


 そんなことを思う。


 必死に現状理解をしようと、僕は頭を働かせた。


 僕は何も言わずに、ただ考え込む。


 そんな僕をまじまじと見てくるタコスさん (?) 。


 少しするとタコスさんは、何か気付かされたかのように話し始めた。


「 あっ、ボクはちびたこっ。よろしくね!! 」


 ぴょこぴょことウサギのように跳ねて言うちびたこ。


「 、? オイラはたこし。昆虫を見つけたら、まずオイラに教えてくれよ! 」


 麦わら帽子をグイッと上げてからのキメ顔。


 片手には虫取り網、と格好からも虫好きなのが伝わってくる。


「 えぁ、え? 」


 突然始まった自己紹介。


 反応に困る僕を置いて、マシンガントークで自分語りを始めるタコスたち。


 その勢いはどんどんと増していく。


 そんな騒ぎを 嗅ぎ付けてきたのか、暫くすると店の奥の方から新たに人影がやって来た。


 今度こそ人間かっ!?、なんて思いながら勢いよく振り返る。


 けれど、その影の正体はまたもやタコスであった。


「 ぉ、なんだ自己紹介かぁ~? オレも混ぜろ!!」


 リーゼントヘアが特徴的なそのタコスは、元気よくこちらに駆け寄ってくる。


 そして、その勢いのまま自己紹介を始めた。


「 オレはたこやん!!ヤンキーだッ! 」


「 え、いや…それがどうしたと?? 」


 唖然とするあまり、少し辛辣な言葉使いになってしまう。


 慌てて訂正しようとするが、彼らは僕が口を挟む間もないほど話を白熱させていた。


「 ぇ、ぁ、あはは 」


 もはや、苦笑いしか為す術がない。


 僕は救世主が現れることを、ただ願っていた。






 少しすると店内の騒がしさに気づいたのか、奥からまた別に新たな影がこちらへ向かってくるのが見えた。


 その影は合計3つあり、その正体は変わらずタコスであった。


「 あ?騒がしいな。俺の飲み会(※ひとりで)を邪魔すんなッ 」


 と、額に皺を寄せたタコス。


「 はぁ、飲み会って言っても泡立てた麦茶でしょ 」


 正論 (?) をぶつけるたらこ唇のタコス。


「 これはビールだッ、麦茶じゃねぇッ!! 」


 そう言って僕に、持っていたビールを見せつけてくる。


 ごめんなさい。


 僕には麦茶にしか見えません。


「 ちょっとぉ~、2人も十分煩いんですけど??推しの配信聞こえなくなっちゃうから静かにしてよね 」


 そして最後にやってきたのは、ペンライトを両手に抱えたタコスだった。


 個性的なタコスたちに、事態は更に悪化する様子を見せる。


 このままではいつまで経っても話が進まない。


 そう思うと、冷や汗が頬を伝った。


 不思議なタコスたちに囲まれていても、頭のどこかでは、ずっと碧のことが引っかかっている。


 胸の奥で、何かが叫んだ。



 ────碧を見つけなきゃ



 その目的を果たす、それだけを考えていた。


 だからか、タコスたちの話を遮る勢いで声が飛び出ていた。


「 、あのッ!! “碧”という名前の男の子を知りませんかッ? 」


 僕の口は僕の思いに忠実だった。


 そのくらい、僕は碧を助けることに必死だった。


 冷静になって考えると、彼らが碧のことを知っているはずがない。


 けれど、それは単なる“思い込み”だったのかもしれない。


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