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"名のない英雄"  作者: 莉月 暁星
【 黎明 】
27/37

第27話.

 

 僕は暫くの間、帆の美しさに魅了されていた。


 息をするのも忘れてしまいそうな程に。


 けれど、たこやんの声が聞こえて我に返る。


 その時には、既にみんな舟に乗り込んでいて、もう出発の準備は万端だった。


「 うし、行くぞ!! 」


 そんなたこやんの声かけに答えるように風が吹き寄せ、帆が風を受ける。


 静かな雰囲気にあった、緩やかな船旅。


 頬に触れる風が冷たくて、心地よくて。


 僕は今、地球と宇宙を繋ぐ架け橋なんじゃないかと、錯覚してしまいそうだった。


 ふと、上を見上げれば視界に映るのは満天の星空。


 “星の洞窟”という名にあっていて、上を見上げたら天井に輝く星が見える。


 そんな星々を見ていると、数年前の夏の日の記憶が鮮明に蘇ってくる。


 ―――それは、碧と天体観測に出かけた夜だった。





 夏休みの宿題「夏の星座を見つけること」。


 この宿題を終わらせるため、僕たちは近場の公園に来ていた。


 持参した望遠鏡を覗き込む。


 星座の図鑑と照らし合わせ、やっとの思いで見つけたのは白鳥座だった。


「 あっ、あれ白鳥座じゃない? 」


「 !! マジ? よっしゃ、これで宿題は終わりだな 」


 そう喜ぶ碧を横目に、僕は夜空に浮かぶ白鳥座を見つめた。


 星の輝きを見ていると、なんだか胸が苦しくなる。


 同時に、星の美しさを純粋に味わえない自分に嫌気がさした。


「 …なぁ、光輝は星とかって興味あるのか?」


「 ぇ、急にどうしたの? 」


 突然の質問の意図が分からなくて、思わず聞き返してしまう。


「 光輝が熱心に星を見てたもんだから、気になってさ 」


「 …興味があるわけではないかな 」


 僕がそう返すと、碧はなにか思いついたように口を開いた。


「 白鳥座を作ってる星って、ベガ、アルタイル、デネブの3つってのは授業でやったよな 」


「 ? うん、そうだね 」


「 その3つの星、同じくらいの明るさに見えるだろ? けど、実際はデネブって星が1番明るく光ってるんだ。」


 そう言いながら碧は空を見上げる。


「 まあ、だからといってデネブだけで白鳥座が成り立つわけじゃない。星は、そこにあるっていうだけで、誰かの道標になるんだ 」


 例えをあげるなら昔の航海術とかな、なんて話し続ける碧。


 碧がその話をして僕に何を伝えようとしていたのかは分からない。


 けれど、その言葉に僕は救われた気がしたんだ。













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