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"名のない英雄"  作者: 莉月 暁星
【 黎明 】
26/37

第26話.

 

「 あの舟があれば、先に進める!! 」


 そう意気込んで、一歩足を踏み出したタイミングだった。


 充満していた霧が裂け、僕とその小舟を繋ぐ一本道を作り出す。


 それが本当に導かれているみたいで、なんだか心躍る気分になった。


 水族館にある水中トンネル。


 それによく似た霧のトンネルの下をくぐりぬける。


 ふわふわとした綿飴のような、雲に近い霧の中を歩く。


 それはまるで夢の中に入り込んだみたいだった。




 霧のトンネルを抜ける。


 そこにあった舟は少し年季が入っていた。


 けれど、それがこの洞窟と調和して情緒ある光景になっていて、その風格に魅力を感じた。


 舟の美しさを一望したあと、僕は舟に乗ろうと足をかける。


 その瞬間、



 バサァっ



 と、大きな音が上から聞こえた。


「 わぁ、星がいっぱいあるねっ 」


「 …本物みたい 」


 その大きな音がした方を見て、ちびたこが楽しそうに言う。


 たこすんも珍しく驚いていたように見えた。


 そんな様子を見てなんだろうと思い、僕も音のした方を見た。


「 !! ぁれ、帆が張ってる? 」


 つい先程までは帆が閉じていたはずなのに。


 そのことを考えた時、舟に乗った時の音の正体がわかった気がした。


 けれど、そのことを完全に理解する前に、僕の心は奪われた。


 洞窟の青光りのような後光が差す。


 それに加え、まるでスクリーンに映し出したかのような星空が描かれている。


 それが星の洞窟と一体化して闇に溶け、本物の星空のよう。


 ──────そんな静かな美しさを纏う帆に、気づけば魅了されていた。
















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