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"名のない英雄"  作者: 莉月 暁星
【 黎明 】
25/37

第25話.

 

「 道がない…? 」


 僕の目がとらえたなかに、進めそうな道はなかった。


 サラサラと流れる水音だけが、僕の耳に届く。


 “行き止まり”―――そんな言葉が浮かんだ。


 けれど、それを現実にしたくなくて、僕は神経を研ぎ澄まして辺りを見渡した。



 ────イヤだ、こんなところで終わりにしたくない。


 まだ、碧を助けられていないのに。


 どれだけ怖くても、前へ進みたい。


 碧を助けたい。



 そんな思いが込み上げてきて、僕の心をゆさぶった。


 そして僕の心情を具現化したように現れた霧が、僕の視界を奪う。


 霧は洞窟の光を反射して、淡く青白い光を纏っていた。


 余計に周りが見えなくなって、僕は絶望の底にいたと、そう思った。


 けれど、それは間違いだったのかもしれない。




「 !! あれ、舟じゃない? 」


「 ッ、ぇ? 」


 その声が聞こえて、たこしの視線の先を追う。


 霧の中にぼんやりと浮かぶシルエット。


 それは確かに“舟”の形をしていた。


「 ほんとだッ!! 」


 そのシルエットを見た瞬間、心に渦巻く不安が消えていく感覚がした。


 まだ、冒険を続けられること。


 “碧を助ける希望”が、まだあったこと。


 それが嬉しくて、同時に安心もして。


 零れ落ちそうになった涙を、そっと拭った。






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